[#表紙(表紙3.jpg)] 愛人の掟 3 梅田みか [#改ページ]  はじめに  この『愛人の掟《おきて》・3』は、不倫の恋をする女性たちからのお手紙をもとにつくられました。  読者の方々から寄せられた百通を超えるお手紙を読み進むうちに、わたしの中に強い驚きと動揺が広がっていきました。それは、前作『愛人の掟・2』からたった一年しか経っていないとは思えないほど、その内容がすっかり様変わりしていたからです。  前作までは、妻子ある男性との恋に悩む独身女性からのお手紙がほとんどでした。ところが今回は、既婚女性や離婚歴のある女性からのお手紙がおよそ四割を占めていたのです。そこには、夫以外の男性への抑えきれない愛情と家族への罪悪感との狭間《はざま》で苦しむ現状や、ひとりでお子さんを育てながらこの恋に涙する女性のせつなさが綴《つづ》られていました。  もちろん、このような不倫の恋の形は、わたしがこのテーマを書きはじめるずっとずっと前から存在していたものです。けれど、その恋を誰かに打ち明けたり、文章にして告白したりすることは決して許されない行為であるという認識が女性たちの中にあったのだと思います。主婦の方から届くお手紙といえば、反論やお叱りのものばかりだったのですから! それだけ、不倫の恋を頑《かたく》なに隠すことなく、真っ直ぐ受け止めている女性たちが増えてきたということなのでしょう。  そして、この恋の状況もずいぶん変わってきました。数年前までは、彼の会社や自宅に電話できないことのせつなさや、家でじっと彼からの連絡を待つ寂しさが、確実にこの恋の涙を増していました。それが、携帯電話を持つことが当たり前になり、電子メールなどの新しいツールの急激な普及(本文にくわしく書いてありますが、電子メールは不倫の恋にとって最も危険なツールなのです!)で、女性たちの涙の源も少しずつ変化しているのではないでしょうか。その結果、本来この恋に足を踏み入れてはならない人たちまでもが一気に入り込んでしまったような気がします。  あらゆる面で不倫の恋が多様化し、いろいろな意味で一般化してきたことは、確かにあなたにいくらかの自信と勇気をくれたかもしれません。けれど、あなたの涙は一粒でも減ったでしょうか? そんなことはありません。今こそあなたはこの恋をしっかりと見つめ、自分の足で新たな一歩を踏み出さなくてはならないのですから。 『愛人の掟・3』は、あなた自身と愛する彼のためにあります。 [#改ページ]  Contents はじめに 第1章 「愛人の掟」36か条 第2章 不倫難易度別アドバイス     難易度A 共働きで子供がいない場合     難易度B 共働きで子供がいる場合     難易度C 妻が専業主婦である場合     難易度D 彼の両親と同居している場合     難易度E あなたに家庭がある場合     難易度F あなたに離婚歴がある場合     —番外編— 不倫難易度に当てはまらないケース 第3章 不倫してはいけない男を見分けるチェックポイント50 文庫化にあたって [#改ページ]  第1章 「愛人の掟」36か条 [#改ページ] [#ここから改行天付き、折り返して5字下げ]  第1条 「いつもきれいにしていること」お洒落《しやれ》とメイクには手を抜かない。奥さんとは立場が違うのだから。  第2条 「最初の誘いは彼から」どんなに恋焦がれていても、初デートは彼が誘ってくるまで待って。  第3条 「彼への電話は控えること」彼が自分からかけるのは想いが強い証拠だから、何倍も優しいはず。  第4条 「毎日会わないこと」彼と会う回数に比例して不倫の恋のつらさは倍増する。週二、三回までに。  第5条 「デート費用は彼にまかせる」彼が家庭にまわすお金をあなたに使っている、という図式が大切。  第6条 「自分の生活をすべて彼に明かさない」そもそも秘密と嘘で成立する恋。謎めいてこそうまくいく。  第7条 「合鍵《あいかぎ》を渡さないこと」合鍵を渡すと彼に安心感を与え、なれあいになる。緊張感は不倫の恋の要素。  第8条 「写真はたくさん撮ろう」先の見えない恋だからこそ、宝物のような一瞬一瞬を形に残そう。  第9条 「手紙で気持ちを整理する」彼に渡さなくても、思いのたけを書くだけで気持ちが整理できる。  第10条 「卑屈にならないこと」卑屈になると魅力が半減します。胸を張って「ちゃんと愛人」しよう。  第11条 「彼の安らぎになること」愛人の役目は、多忙な彼が唯一ほっとできる時間をつくってあげること。  第12条 「彼の前で泣かないこと」男性に嫌われる女の条件は泣いて面倒をかけること。涙は何も変えない。  第13条 「彼を引き止めないこと」彼もあなたと離れる瞬間はつらい。強がりでもいいから笑顔で送り出そう。  第14条 「一泊するのは年に数回のイベントにすること」彼との一泊は特別な機会と思ってこそ、充実できる。  第15条 「自分の不倫難度を知ること」不倫のスタイルはひとつではない。自分の不倫難度を知っておくこと。  第16条 「奥さんや家庭を恨まないこと」奥さんや家庭があってこそ愛する今の彼がいることを忘れずに。  第17条 「彼の家庭にばれても何も期待せずに待つこと」あわてず騒がず波風がおさまるのを待つこと。  第18条 「�愛してる�は彼が言うまで待って」あなたから言うと彼には重荷になり、自分の首を絞めることに。  第19条 「セックスは会う度に、が理想」子供が夫婦のかすがいなら、セックスは不倫のかすがいなのである。  第20条 「避妊はきちんとすること」あなたと彼との子供の存在は、一生彼に重い十字架を背負わせることに。  第21条 「日曜日は彼を求めないこと」恋焦がれて休日を過ごすのはあなただけということを受け止めて。  第22条 「年末年始や連休は彼のことを考えない」彼に会えない期間は自分のために有意義に時間を使うこと。  第23条 「プレゼントは彼の行きつけの店で選ぶ」奥さんに疑われないものを選ぶ努力と工夫が必要。  第24条 「指輪をねだらないこと」指輪は結婚と密接につながるイメージだから、つらさを増すことにもなる。  第25条 「彼の生活に近づかないこと」彼にはあなたの知らない世界が必ずある。勝手に侵入しないこと。  第26条 「ほかの男性ともデートすること」妻子持ちの彼に貞節を守る必要はない。あなたがつらくなるだけ。  第27条 「第三の女を許してはいけない」不倫の恋をする男性に浮気は許されない。浮気をしたら決別して。  第28条 「公式の場にふたりで出席しないこと」彼のステディになったつもりでも、それは錯覚にすぎない。  第29条 「親には打ち明けない」どんな親でも娘の幸せな結婚を夢見ている。話すなら離婚が成立してから。  第30条 「相談する友人を選ぶこと」相手を間違えると友情を壊すことも。相手選びは慎重に。  第31条 「まわりの中傷に言い訳しない」反論してもみじめになるだけ。熱くならずにさらりとかわして。  第32条 「夫婦の真似ごとをしない」家庭的なことをいくらしても、彼は奥さんの役目を愛人に求めていない。  第33条 「結婚の二文字は絶対に口にしないこと」結婚するしないをはっきりさせたら、不倫の恋は終わる。  第34条 「約束を信じて待たないこと」離婚する前から結婚の約束をする優柔不断な男は信じるに値しない。  第35条 「何も望まないこと」賢い愛人の生き方は、はじめから結婚を望まず、何も期待せずただ愛するだけ。  第36条 「不倫を終わらせるのは必ず女性であること」不倫の恋の最も大切なルール。別れは女性に全権がある。 [#ここで字下げ終わり] [#改ページ]  第2章 不倫難易度別アドバイス [#改ページ]  恋の難易度を知ることが、あなたに客観性を与えます  ここに分類したAからFまでの「不倫難易度」は、彼の家族構成やあなたの生活環境などをもとに、あなたの恋の状況を考察したものです。『愛人の掟《おきて》』の中に記したAからEまでの難度と異なる部分があるのは、読者の方々から数多く寄せられたお手紙に、主婦の方からや、ひとりで子供を育てている方など、前作では取り上げていなかった形の不倫の恋が多く含まれていたからです。  それでも、ここに並べた六通りの段階ですべてを網羅することはできないでしょう。十組のカップルがいれば十の異なる恋愛があるように、同じ不倫の恋でもその状況は千差万別。傍から見れば同じ状況のふたりでも、そこに存在する微妙な関係は、本当に当人同士にしかわからないことですから。でも、ここで大切なのは、自分の恋の難易度を考察することで、あなたの中に客観性が生まれることです。  客観性というのは、不倫の恋をするときに何より大切なものなのです。あなたの恋がつらければつらいほど、あなたは客観的に自分の恋を見つめる力を失っていきます。つらさや寂しさや彼への思いが募ったとき、あなたはその恋の中にひとりぼっちで佇《たたず》んでしまうでしょう。世界中でこんなにつらい涙を流しているのは自分だけなのだという孤立感が、さらにあなたを追い込んでいきます。そんな状態で冷静に自分を客観視できる人がどれだけいるでしょうか? それだけ、不倫の恋を客観性を持って見つめることは難しいことなのです。  けれど、客観性のないままにこの恋を進めていけば、あなたはますます自己中心的になり、まわりが見えなくなるだけでなく、自分のことも、彼のことも見えなくなってしまいます。それは、あなた自身はもちろん、愛する彼をも追い詰め、決定的に傷つき、傷つける結果になるのです。  この難易度の分類に自分の恋を当てはめて考えてみることで、あなたの中に客観性が生まれ、ほんの少しでも彼の立場を理解することができれば、それだけであなたのつらさはずいぶん軽減されるはずです。それぞれの難易度ごとに分類して紹介させていただいたいくつかのお手紙とその対処法も、あなたの恋をもう一度見つめ直すきっかけになるでしょう。  ページを読み進むうちに、状況は違っても理解できる部分があったり、もし自分や彼がここに当てはまるとしたらどうだろう、と仮定する場面があったり、自分と正反対の状況を知って驚かされたりするでしょう。そのとき、あなたの中には確実に、自分の恋に対する客観性が養われているのです。 [#改ページ] 難易度A[#「難易度A」はゴシック体] 共働きで子供がいない場合  一般的に最も「ライトな不倫」とされているのが、相手の男性の奥さんも仕事を持っていて、子供がいないケースである。まだ結婚歴の浅い共働きの夫婦、あるいは、子供は何らかの理由でつくらなかったけれど、いつまでも仲のよい夫婦、といったイメージだろうか。  そんな彼と恋をしているあなたは、彼との将来に、いくらかの希望を持っているかもしれない。少なくとも絶望はしていないはず。なぜなら、夫婦にとって「かすがい」であるはずの「子」がそこには存在していないのだから。奥さんは彼の妻であって彼の子供の母親ではない。ならば、彼を愛する女性という意味では自分と何ら変わりがないではないか。そんな思いがあなたの心をよぎる。  たとえばあなたの友人が、妻子ある男性と恋をしていると聞いて、あなたは軽い優越感さえ覚えるはずだ。逆に、彼女は口に出さなくても、内心あなたのことを羨《うらや》ましく思うに違いない。「あなたって何て恵まれた人なのかしら。だって彼に子供がいないなんて!」。  確かに、それはひとつの見方であるし、真実の部分もあるだろう。けれど、子供の有無にかかわらず、彼がすでにほかの女性と結婚しているという事実には変わりないのだ。独身者とつきあっている女性にとってみたら、どちらも同じ、不倫の恋なのだ。あなたの涙の量が彼女より少ないなんて、決めつけられるはずがない。今あなたに見えている小さな希望の光さえ、幻かもしれないのに。  ここで、あなたが気をつけなくてはならないことは、希望を持ちすぎないことである。あなたが彼とのつきあいの中に将来の可能性を見出すことがいけないというのではない。ただ、同じ共働きで子供がいない場合でも、その可能性は彼の家庭の様々な事情や夫婦の性質によって大きく異なってくることを常に頭に置いておいてほしい。その上で、今あなたの置かれている状況を冷静に判断する必要があるのだ。  まず、彼の奥さんの「仕事」についてである。彼の奥さんは、結婚してもまだ仕事を続けている。そこにはふたつのケースが考えられる。  ひとつは、彼女の仕事が家計を助けるための、あるいは妊娠・出産までの間の「一時的な」働きである場合。そしてもうひとつは彼の奥さんがその仕事に生きがいを感じ、できれば一生続けたいと思っている場合。この彼女の仕事に対する姿勢の違いはあなたにとって大きな意味を持ってくる。彼女が自分の仕事に生きがいや喜びを見出しているかどうかで、夫への依存度は天と地ほど変わってくるからだ。  まず、彼の奥さんの仕事が一時的なものである場合は、彼もまだ若く、結婚してからそう長い年月は経っていないケースが多い。一年か、二、三年か、あるいは数か月かもしれない。彼にはまだ既婚者としての風格も家庭の匂いもなく、彼が既婚者と知って驚かされる人も多いだろう。最近は、男性の結婚願望が高まっていることもあって、どう見てもまだ遊び盛りの独身者にしか見えない男性が若くしてすでに結婚していたりするから、以前よりこのパターンは増えているはずだ。  夫婦の関係性も、恋人同士の延長のような感じで、まだ家族愛にまでは発展していない。そう考えれば、彼が離婚の決断をするのもそんなに難しくないように思えてくる。しかし、ここで問題となるのは、結婚が家族の絆《きずな》としてしっかり定着してもいないうちに、妻以外の女性と深い関係を持ったという彼の人間性である。  それは、彼があなたとの不倫をはじめた真の動機にかかっている。もし彼が真剣にあなたとの恋に落ち、心から今の結婚は間違っていたと後悔し、早いうちに妻との婚姻関係を清算しようと思っているのなら、今後あなたが、彼と結ばれる可能性は高くなる。彼の決断が早ければ早いほど物事はスムーズに解決し、あなたも彼の奥さんも傷つくことが少なくてすむ。  けれど、現実的にはそんな希望的なケースは少ない。なぜなら、彼がほんの軽い気持ちであなたとの不倫をはじめ、今の状況もまるで深刻なものとはとらえていない可能性のほうが遥《はる》かに高いからである。  あなたの彼が残念ながら後者だとしたら、あなたが選んだ男性はまだ、社会人としての自覚が身についていないということだ。彼は見た目のとおり、遊びたい盛りの独身気取り。簡単にいえば、まだ不倫の恋をする資格のない男性なのである。  彼のような男性との不倫の恋は、あなたにとってあまり意味のあるものにはならないだろう。もしも彼の結婚が何らかの理由で破綻《はたん》し、奥さんとあなたの立場が入れ替わり、彼があなたとの将来を真剣に考える機会があったとしても、また今のあなたのような立場の女性が出現することは容易に想像できる。  彼がどちらのタイプに当てはまるかは別として、あなたが過大な希望に酔いしれることなく、彼の人間性を判断する冷静な目を失わないことが大切である。  逆に、彼の奥さんが何かのスペシャリストで、自分の仕事を一生続けたいと思っている場合。先ほどの「一時的な仕事」の場合と比較して、彼女の仕事にかける情熱や、生活や意識の中で仕事の占める割合はくらべものにならないほど大きいはずだ。  家庭以外に自分だけの世界を持っていることは、彼女を精神的に自立させている。当然、夫への依存度はかなり低くなると考えられる。妻の夫への依存度が低ければ低いほど、彼はあなたの存在や離婚の可能性を切り出しやすくなる。  そして、彼女に経済力があればあるほど、彼が離婚に踏み切る可能性は高くなる。離婚によって発生する慰謝料や、別れたあとの妻の生活費などが頭をよぎった瞬間、踏み出しかけた離婚への一歩を思いとどまる男性がいかに多いことか。その点、彼の奥さんが経済的に自立していることは、あなたにとってこの上ない好材料となる。  さらに、あなたと彼の関係を大きく左右するのは、お互いの仕事を認め合っているこの夫婦が子供を持たない理由である。  お互い子供が欲しかったのに、何らかの物理的な要因で実現しなかったという夫婦は世の中にたくさんいる。こればかりは当人同士にはどうしようもないことだし、それが夫婦の間にどんな影響を及ぼしているかはわかりようもない。  ただ、女性の社会進出がさかんな今、夫婦が子供を持たない要因として妻の仕事が大きな割合を占めていることは確かである。特に妻の仕事が充実している時期、夫は子供が欲しいのに、彼女が仕事を優先するあまり、妊娠・出産のタイミングを失ったというケースは実に多い。  彼の中には、このまま奥さんが仕事を続けていくかぎり、自分の子供の顔を一生見られないかもしれない、という諦《あきら》めのような気持ちがどこかにあるはずだ。妻の仕事には多大な理解と敬意を示していたとしても、一抹の寂しさを拭《ぬぐ》いきれない男性は多いだろう。それがあなたとのつきあいをはじめたことに影響を及ぼしているかは別として。  だからといって、あなたが彼を可哀想に思ったり、必要以上になぐさめたり、「奥さんのかわりにわたしがあなたの子供を産んであげるわ」などと言ったりしてはいけない。彼の子供を産んであげないなんて、妻の役割を果たしていないじゃないの、もしわたしが奥さんならすぐにでも産んであげるのに、などと無駄な対抗意識を燃やしても仕方がない。これはあくまで夫婦の問題であり、どんな結論を出すのも、彼自身が決めることで、あなたの意見など必要ないのだ。  そして、彼の子供を妊娠することが、この恋を成就させる唯一の方法だなんて間違っても思わないこと。子供を不倫の恋の切り札にしようなどという考えは、物事を一面的にしかとらえていない軽率な発想。けれど実際、賢く理性的な女性たちが、この浅はかな思いつきにとらわれているのも事実なのである。そんな考えが頭に浮かんだら、もう一度、彼との恋愛を冷静に見つめ直す必要がある。もちろん、行動に移す前に。  彼に子供がいないことをつらい恋の心のよりどころにしている女性はとても多い。確かに、彼との将来を考える中で有利な一面はあるが、これは何しろデリケートな問題。あなたが口を出していいことなど何もない。  あなたはただ、彼に子供がいないという事実だけを客観的に受け止めること。何よりもそこに過大な希望を見出さずにいられたとき、希望の光ははじめて現実となるのだから。 [#改ページ] Story 1  二度目の別れを決意。でもできるかどうか……  私は現在26歳の看護師です。彼とつきあいはじめたのは3年前。そのとき、彼はまだ結婚していませんでした。彼女がいることは知っていたけど、もしかして別れるかも……という期待があったのです。その1年後、彼は結婚しました。私は式の4か月前にそれを知りました。彼は「好きで結婚するわけじゃない。結婚しても関係を続けたい」と言っていましたが……。  結婚して3か月後に、彼は仕事でアメリカに行き、2年は帰れないこともわかっていたので、つらかったけど彼と別れました。  その1年後に、彼から電話がかかってきたのです。そのあと何度か電話で話すようになり、とうとう、アメリカまで会いに行ってしまいました。しかも、奥さんがいない間に、彼の家に泊まりました。彼の話では、奥さんとはあまりうまくいってない、ということでした。でも彼の言葉とは裏腹に、家の中には奥さんの趣味のものが置かれ、2人の写真(隠してありましたが)もありました。私は会ったこともない奥さんに、信じられないくらい嫉妬《しつと》しました。  帰国してから、彼への想いはますます募り、毎日不安で、寂しくてたまらない日が続きました。夜も眠れなくなり、体調も崩してしまいました。自分でもどうしたらいいのかわからなくなったとき、梅田さんの本に出会いました。私のしていたことは、やってはいけないことだらけ。不倫を甘く見ていた気がして、恥ずかしくなりました。  今の私は、何に対しても否定的な気持ちになっていて、この恋愛が私にとってプラスになっているとは思えません。彼のことも人間としてみると、奥さんにも、私にも誠意があるとは思えないこともわかってきました。  私の恋はここでおしまいかなって思いはじめていますが、もうすぐ彼が日本に帰ってきます。また会ってしまったら、私の決心も揺らいでしまいそうで、とても不安です。  今は電話だけだから、もうもとに戻らないように、心を強くしてがんばりたいと思っています。これ以上、奥さんや彼に対してのドロドロした思いが広がらないうちに、彼との別れを成し遂げたいと思います。  混乱していた私に、考えるチャンスを与えてくださった梅田さんに感謝します。 [#地付き](千葉県・26歳) [#改ページ]  強い意志と行動力で別れを成し遂げて  あなたの手紙を読み終えて、今わたしは強く願っていることがあります。それは、「私の恋はここでおしまい」というあなたの決心が揺らがないでほしい、ということです。  二十六歳で、しっかり自分の仕事を持って自立しているあなたが、夜も眠れなくなるほど恋した人なのですから、彼はきっととても魅力的な男性なのでしょう。けれど、わたしには彼が不倫の恋をする資格のある人とはどうしても思えません。なぜなら、彼はあなたと出会ってから今までずっと、あなたに対してルール違反ばかりしているからです。  まず、あなたと出会ったとき、「彼はまだ結婚していなかった」ということ。この状況は、すでに結婚している男性とつきあいはじめた通常の不倫の恋とは大きく意味が違ってきます。  彼が結婚するまでに一年もの時間があったわけですから、彼が本当に「好きで結婚するわけじゃない」のなら、どんなことをしてでもこの結婚をとりやめることができたはずです。そして、あなたと結婚することもできたのです。  もちろん、すでに結婚が決まっていた相手との関係を白紙に戻すことは大変なことに違いありませんが、それでも結婚している状態から離婚することを思えば、くらべものにならないほどのもの。けれど彼はそれをしなかった。そして、結婚したあとも「あなたと関係を続けたい」などと虫のいいことを言っている。それだけで、あなたに対して決して許されない非常に残酷なずるい態度を見せているのです。  そんな苦しい目に遭いながらも、あなたは彼がアメリカに行って距離が生まれるのを機に別れを決意しました。これは、あなたがとても意志の強い、賢明な女性だからこそできたことです。ところが、その一年後に、また彼のルール違反によって、あなたはこの恋に引き戻されてしまいました。ひとりで必死に別れをやり遂げたあなたのつらさなど考えもせずに気まぐれに電話してきて「奥さんとうまくいっていない」なんて、一体どういうつもりなのでしょう!  こうなると、あなたのせっかくの決意も吹き飛んでしまって、アメリカまで会いに行ってしまった気持ちはよくわかります。けれど、そこでも彼はまた、家中に奥さんの匂いがしみついた自宅にあなたを泊める、という信じられない行為であなたを傷つけています。  そのときあなたは「会ったこともない奥さんに信じられないくらい嫉妬をした」とありますが、もしかすると、あなたの嫉妬心に火をつけて自分への愛情を再燃させるのが彼の目的だったのかもしれません。  彼の思いどおりに、あなたの彼への想いはどうしようもないところまで来てしまいました。今まですべてひとりで決断し、がんばってきたあなたが体調を崩してぼろぼろになってしまうのも当たり前です。わたしはあなたのような女性が、彼のような男性に恋してしまったことがくやしくてたまりませんが。けれど、それが恋というものなのですから仕方ありませんよね。  ただ、残念ながら、あなたにとってこの恋は何のメリットもありません。唯一の救いは、それをあなたもちゃんとわかっていることです。 「この恋愛が私にとってプラスになっているとは思えない」「彼は人間として奥さんにも私にも誠実とは思えない」というあなたの判断はとても客観的で正確です。彼との距離が、あなたに何とか冷静な目を持たせてくれたのかもしれません。だからこそ、その距離がなくなることが「また会ってしまったら決心が揺らぎそう」とあなたを不安にさせているのです。  あなたがすべきことはただひとつ。彼が帰国して電話をかけてきても決して出ないこと、彼が会いに来ても絶対に会わないこと、です。  今、あなたはどうしているのでしょうか? もう帰国した彼に会ってしまったでしょうか? それとも、まだ心が揺れているのでしょうか? もう迷うことはありません。今度こそ自分の決断を信じて、二度と彼のもとに戻らずにこの恋を終結させてください。それがあなたのベストな選択です。大丈夫、あなたの強い意志と行動力をもってすれば、必ず立派にやり遂げることができるでしょう。 [#改ページ] Story 2  彼は離婚間近。希望を持ってもいいですか?  梅田先生、はじめてお便りします。  私は25歳の商社に勤めるOLです。彼は同じ会社の先輩で28歳、2人の出会いは私が入社して、彼のアシスタントとして配属されたときでした。最初は仕事のできる頼もしい人、という印象で、たまに仕事の相談にのってもらうといった間柄でした。出会ったとき、彼はすでに結婚していたので、ステキな人だなと思ってはいたものの、男性として特別意識はしていませんでした。  たまたま仕事帰りに2人で飲みに行く機会があり、お互いのプライベートなことを話したのです。彼の奥さんは大学時代の同級生で、いわゆる友達結婚。共働きなので、平日は仕事が忙しく、ほとんどすれちがいで、一緒に過ごすのは土日のみといった関係だったようです。彼から「お互いに仕事でたまったストレスをぶつけ合い、ケンカになることが多い」と聞きました。  彼は結婚当初は、奥さんが働くことに理解はあったものの、料理や洗濯、掃除など、分担しようといっていた家事もほとんどしない、彼女のわがままに疲れていたみたいでした。また、彼自身、実は子供が欲しいと思っていたので、頑《かたく》なに子供はいらないという奥さんの態度も含め、自分が結婚前に理想としていた家庭生活とのギャップに悩んでいました。  あるとき、日曜日に会社の人達とドライブに行った帰りに、彼に車で送ってもらったのです。そのとき、彼の結婚生活がもう修復できないほどになっていることを告白されました。彼は「君にはなんでも話せるよ。君みたいな人を選んでいればよかった」って。そして、もう奥さんに愛情を感じられなくなった、とも。私は寂しそうな彼をなんとか励ましたい、力になってあげたいって感じたんです。たぶん、そのとき、すでに彼のことを好きになっていたんだと思います。一緒にいて安心できるし、趣味や価値観も似ているし、私も前につきあっていた彼と別れたばかりという状況だったので、自然な形で男女の関係になりました。  今、この関係がはじまって約半年、つきあうようになって、彼の優しさ、人柄のよさをさらに深く知り、ますます彼が好きになってます。同じ職場なのでちょっと帰りの時間をずらして、周囲にばれないように週に1、2回デートしています。彼が私の部屋に来ることもありますが、合鍵《あいかぎ》は渡してないし、彼の家にも電話はしないし、女友達とも(彼のことは言わずに)今までと変わらず遊んでいます。けっこう�掟《おきて》�は守れていると思うんだけど。  私から奥さんとのことを、聞かないようにはしていますが、彼の話によると、今離婚を前提に話し合いをしているそうです。ただ、冷えきった関係とはいえ、彼は毎日奥さんのいる家に帰るんだ、と思うとやりきれない気持ちになります。  梅田先生、私、彼を信じていいのでしょうか? 不倫から結婚を望んではいけない、って書いてあったけど、希望を持ってもいいのかな? でも、もし彼と結婚できたとしても、まわりの人に、�彼が私と浮気して、奥さんを捨てた�と思われないか心配です。どう思いますか? [#地付き](大阪府・25歳) [#改ページ]  不倫の恋のゴールは、彼の離婚ではありません  手紙を読んだ印象では、あなたの不倫の恋は結婚に希望を持ってもいい数少ないケースのように思えます。  彼が、家庭がうまくいっていないことを不倫の恋をはじめるきっかけにしたのはあまり好ましいこととは言えません。けれど、彼の場合、あなたに話した結婚生活の現状はおそらく真実だと思います。男性は、特に若い頃、結婚に対して過剰な夢を抱いているものです。そして結婚する女性を選ぶとき、自分の夢に沿うような相手を探そうとするのではなく、好きになった女性とその夢が実現すると信じてしまうのです。  おそらく、彼の奥さんが仕事を第一に思い、子供を産むことを望まないタイプの女性だということは、彼にもわかっていたはずです。結婚の前にそれらの事柄について多少なりとも話はしたでしょうし、大学時代からつきあっていれば当然わかることです。それでも、結婚して家庭に入れば変わってくるだろう、というような甘い希望が彼の中にあったのでしょう。本当に、男性というのはいくつになっても夢を見続けるロマンチストが多いのですね。  けれど、女性側の結婚後のビジョンはそう簡単に変わるものではありません。そこではじめて、自分の夢見た生活と現実の結婚生活とのギャップに気づくのです。本当は、最初から結婚する相手を間違えただけの話なのですが。  彼の奥さんが今、離婚に対してどんな姿勢をとっているかわかりませんが、彼があなたの存在を正直に話して、きちんとその責任を負う覚悟があるのなら、彼女は同意する可能性が大いにあると思います。自分の仕事に生きがいを持ち、彼が欲しいと思っている子供を産んであげられないという確固たる理由があるのですから、彼女がこの結婚に執着する理由はあまりないでしょう。もちろん、離婚というのはどんなに条件が整っているケースでも、実際に離婚届を提出するまでは何が起こるかわからないものですが。  問題は、離婚したあとあなたが彼と結婚した場合、あなたが本当に彼の夢を実現してあげられるかどうか、です。あなたは結婚しても仕事を続けたいと思ったことはありませんか? 結婚して家事をきちんとこなし、彼の望む子供を産んで育てることに幸せを感じ、そこで満足することができるでしょうか?  もしあなたが結婚したあとも、まだまだ自分のやりたいことがある、というような考えを持っているなら、そのあたりを彼とよく話し合う必要があると思います。もちろん彼も、一度目の結婚ほど多大な夢は持っていないと思いますが、理想の家庭像というものは彼の中に根強く残っているはずです。あなたがそれに応《こた》えられない場合、彼がまた、今のあなたのような存在をつくる可能性はじゅうぶんあるのです。  また、「彼が浮気して奥さんを捨てたと思われないか不安」などという気持ちがあるなら、彼との結婚は考えたほうがいいと思います。彼の離婚の直接的な原因があなたの存在であろうとなかろうと、周囲はその結果だけを見て判断するのです。不倫の恋を経て結婚するには、一生悪者呼ばわりされても仕方がないくらいの覚悟がなくてはなりません。今不倫の恋をしているあなたが、妻になった途端その過去を消そうと思ってもそれは都合のいい話です。  あなたの恋のゴールは彼の離婚ではありません。あなたと彼の新しい関係がそこからスタートするのですから。 [#改ページ] Story 3  結婚願望も嫉妬《しつと》もない、強引な彼が好き 『愛人の掟』1、2とも読ませていただきました。私自身の恋愛を振り返り、共感した部分もあり、疑問を持ったこともありました。  私は現在25歳、専門職に就いて働いています。彼とつきあいはじめて3年になります。きっかけは彼の強引なアプローチでした。私を口説くつもりで飲み会をセッティングし、その席で強引に電話番号を聞き、あげくに店のトイレでキスされてその日は終わりました。彼から連絡があったのは、そのあとすぐ。「俺のこと好きか?」って何度も電話してくるので、結局会う約束をさせられました。ところが、いざ会ってみると、とても話が合うことに驚かされました。お金の使い方、ものの価値観、家族のこと……。  彼は同じ職場の営業マンで、私より11歳年上です。小学校の同級生の奥さんと2人暮らし。共働きで子供はいません。すごく女好きで、「若い頃くさるほど女遊びをした」って言ってます。彼の性格は強引で常に自分がリードしていたい人。デートが終わる頃には、必ず次の約束を決めたがります。  つきあって2年ほど経った頃、なんかおかしいなって感じるようになりました。電話の回数が少なくなったり、彼のアパートに連れてってくれる回数も減りました。  そして、その頃彼がマンションを買ったという話を第3者から聞き、大ショック。  将来は田舎に住みたいね、なんて話もしてたのに……。でも、いちばんショックだったのは、彼がマンションを買ったことを隠していたこと。  もともと、彼と結婚しようとは思わないし、奥さんに対する嫉妬もありません。ただ、この関係を続けていければいい、とだけ思っていました。でもさすがにこの頃は夜になるとひとりで泣いてました。結局、あとで彼から「奥さんに遺産が入ってたので、マンションを買ったが自分はノータッチだった」と聞きました。私はいつも、彼から家庭についての発言があると、「ふーん、そうなんだ」と全部流すことにしているのです。  3年たった今でも、週に1、2回はプライベートでデートしています(もちろんHつき)。旅行も年2回のペースで行ってます。クリスマス、誕生日などのイベントも一緒に過ごしてます。彼はけっこうおしゃれで、いつもいいものを身につけてます。服から靴、ベルトまで、お気に入りのブランドで統一。私にもそのブランドものをプレゼントしてくれます。  プライベートの彼も大好き。仕事とプライベートの両方を知っているのは、私だけって自負しています。彼も、「俺のこといちばんわかってくれるのはおまえだ」っていうけど、それだけでいい、って思います。彼から強引にはじまった関係でしたが、気がつくと私のほうが夢中。SEXは相変わらず情熱的。会えば当然のように私を抱きますが、それを不安に思うこともありました。ところが、今は抱かれる安心感がすごく大きくて、私のほうがSEX目当てなのかな。と反省することも。  私の恋愛、みかさんはどう感じたでしょうか。甘いですか? でも私から連絡することはまずないし、彼の自宅の電話番号も知りません。これから先、不安もありますが、私は結婚願望がなく、子供もいらない主義なので、今のところベストの関係を保っています。ただ、家庭の行事は話してほしいですね。奥さんと旅行しようがまったくOK。黙っていられるよりは言ってもらいたい。これって変ですか? [#地付き](東京都・25歳) [#改ページ]  あなたの恋の本質は、奥さんへの屈折した優越感です  強引で、お洒落《しやれ》で、話題が豊富で、常にあなたに情熱的な十一歳年上の男性。彼の力強い手に引っ張られるように、恋に落ちてしまったあなたの気持ちはよくわかります。彼はこれまで、あなたを手に入れたのと同じような強引さで、欲しいものは何でも手に入れてきたタイプなのではないでしょうか。  彼のほうからアプローチされたのに、今はあなたのほうが夢中、という経緯も、まるで手にとるようによくわかります。あなたは好奇心|旺盛《おうせい》な二十代前半の女性。遊び上手でちょっと手が早いけど憎めない、そんな彼との恋愛はあなたにとって、まるでわくわくするアトラクションに乗り込むようなものだったのでしょう。  あなたの恋の特徴は、「彼のことをいちばんわかっているのは私」「仕事とプライベートの両方を知っているのは私だけ」という自負が非常に強いことです。あなたがなぜここまで自信を持っているのか、ちょっと不思議なくらい。これはおそらく、あなたにそう思わせている、彼のテクニックによるものでしょう。  あなたの彼は、少なからずカリスマ性のある男性なのではないでしょうか? あなたは彼によって自分の持っていた様々な価値観を大きく揺るがされているのかもしれません。彼はデートや会話だけでなく、あなたの考え方や生き方までリードしようとしているのでしょう。それが彼の女性に対する愛し方なのです。  あなたの不倫の恋に対するとらえ方にも、彼の意向が大きく影響しているように感じられます。その証拠に、あなたの手紙にある発言の裏には、本来あなたが持っているはずの、二十五歳の女性らしい普通の感覚が見え隠れしています。 「もともと彼と結婚しようとは思わないし、奥さんに対する嫉妬もない」というあなたの言葉の根底にあるのは、本当の彼は名ばかりの妻ではなくわたしだけが知っているのだ、という彼の奥さんへの屈折した優越感です。だから彼が家庭について口にするのを、「ふーん、そうなんだ」と聞き流すことで自分のプライドを保っている。本当は奥さんが羨《うらや》ましかったり、くやしかったりすることがあるはずなのに、それを優越感でカバーしている。これはあなたが彼との恋から学んだ自己防衛の手段なのです。  そんなあなたが最も傷つくのは、奥さんは知っていたのにあなたは知らなかった、という事実に直面すること。彼のことを誰よりもわかっているはずのあなただから、彼がマンションを買ったことを自分に話さなかったことに過大なショックを受けたのです。  これが本来、不倫の恋に悩む女性なら、彼が奥さんとふたりで暮らすマンションを買ったり、ふたりで仲良く旅行に出かけたり、という事実そのものに傷つくのが普通です。でも、あなたは彼がそれを言わなかったことのほうに傷つく。これがあなたの恋の本質をよく表していると思います。それはもちろん、あなたが「結婚願望もなく、子供もいらない主義」であり、今のところ彼との結婚を望んだりしていない、ということに尽きます。  これが、あなたが自分でたどり着いたものなのか、彼によって導かれたものかはわかりませんが、どちらにしろ今のあなたの考え方は、彼にとってこの上なく都合のいいものです。あなたがこの姿勢を崩さない限り、彼との関係はずっと続いていくかもしれません。  けれど、あなたの今の「主義」がずっと続くとは思えません。この考えはあなたがまだ二十五歳という若さがもたらしているものです。これからあなたも齢を重ねていくうちに、必ず結婚したいときが来るし、子供が欲しいと願うときが来るのです。  そうなって、あなたが本当の不倫の恋のつらさに直面する前に、やはり彼とは別れたほうがいいような気がします。これ以上彼に近づくことなく、「私から連絡することはまずない」「彼の自宅の番号も知らない」状態を決して壊さずに、あなたの中でこの恋を卒業する時期を選んでください。  今のあなたは、深刻になることもなく、とても上手に不倫の恋とつきあっています。それには、彼に抱かれることであなたが確かな安心感を得ていることが大きな要因になっていると思います。それだけセックスは不倫の恋にとって重要な役目を果たしているのです。不倫の恋は、あなたが言っているように「私のほうがセックス目当てなのかな?」というぐらいでちょうどいいのです!  本来、あなたは自由で明るい姿勢を失わない人。あなたがこの恋を卒業するときには、そこにもうひとつ大人の考え方や自覚が加わって、素晴らしい女性に成長していると思いますよ。 [#改ページ] 難易度B[#「難易度B」はゴシック体] 共働きで子供がいる場合  彼の奥さんが働いていることには変わりなくても、彼の家庭に子供がいるとなればその恋の難易度は増す。あなたのつらさも、ここでかなりの加速度を持ってくるはずだ。  愛する彼に、すでに子供がいる。この事実の前であなたは無力にうなだれるしかない。彼にとって妻はもともとあなたと同じ恋人だった。所詮《しよせん》は他人。けれど、子供は違う。子供は紛れもなく彼の血を分けた肉親なのだから。それを引き離すことがいいことであるはずがないと誰もが知っている。だからこそ、妻子ある男性を愛した女性たちにとって、彼の子供の存在は、ともすれば妻の存在よりも大きくのしかかってくる。  彼が奥さんのことを愛しているのかいないのか。ふたりの仲がうまくいっているのか冷えきっているのか。はじめは気になって仕方がなかった疑問も、もはやあなたの中で重要な事柄ではないかもしれない。妻よりも、子供と離れなくてはならないというつらさが彼に離婚を踏みとどまらせるとあなたはもう知っているからだ。  あなたが彼に、離婚の可能性を問い詰めたり、なかなか決断しない優柔不断さを責めたりしたとき、彼はこんなことを口にしたことはないだろうか? 「妻のことなど愛していない。でも自分の子供は可愛いんだ」。その言葉にあなたは決定的なまでに打ちのめされるだろう。せめて彼が「離婚はしないよ。僕は妻のことを愛しているから」と言ってくれたら、どんなに楽だったかと思うだろう。  それだけ彼の子供の有無は、不倫の恋の行方を大きく左右する。特に日本では、子供は両親揃って育てるのがベストであり、片親にするのは子供が可哀想だという意識が非常に強い。たとえ夫婦が数々の問題を抱えていても、とりあえずは子供のために結婚生活を続ける努力をしよう、というのがごく一般的な見解である。それが夫にとっても妻にとっても、体面的に最も無難な選択なのである。  最初に、あなたがしっかりと受け止めなくてはならないのは、すでに妻との間に子供がいる男性は滅多に離婚するものではないという事実だ。  男性は女性と違って、自分で子供を産むことができない。ということは、自分の手元で子供と一緒に暮らしたいと願えば、大抵の場合、一生妻とうまく結婚生活を続けていくしかない。実際離婚をするとなれば、子供の親権は母親が得る確率が圧倒的に高いのだから。もし彼があなたに真摯《しんし》な愛情を感じていて、あなたとの再婚を心から望んでいるとしたら、彼の苦悩の源はやはり子供との関係にあるだろう。  ただ、彼の奥さんが仕事をしながら子供を育てている場合、大抵子供は母方の実家で預かったり面倒をみたりすることになるのが普通である。自分の母親には気軽に子供を預けられても、夫の母親に預けるのは抵抗がある、という女性が多いのだ。彼の住んでいる場所と彼の妻の実家が近ければ近いほど、彼の子供は妻の実家寄りで育てられることになる。  そのとき、彼と義母の関係性にもよるが、彼と子供の間に微妙な壁が生まれることがある。  彼の思いどおりに子育ての方針が決められなかったり、彼が子供と接する機会が減ったりすることで、子供に関する事柄に対して彼のほうが引いてしまう形になる。ただでさえ幼少期の子育ての主導権は母親にあるから、彼自身が根っからの子煩悩というタイプでない場合はじゅうぶん起こりうる現象だ。これは意外に、あなたにとってプラスの要因といえるだろう。  ここで、彼の子供の年齢も考慮に入れなくてはならない。もちろん、彼の子供がすでに成人しているというような状況であれば、離婚する可能性は高くなる。けれど、不倫の恋をする女性が彼の子供の存在に苦悩するのは、まだ彼の子供が小さいというケースがほとんどだろう。  軽々しく不確実な約束をする男性がよく、「下の子が小学校に入るまで待ってほしい」「子供が中学を卒業したら」「子供が大学を出るまでは離婚しない」などと口にしたがるのは、それだけ子供の年齢という問題が離婚を切り出すポイントと考えられているからだ。  そうなると子供が小さいうちはまず難しいということになるが、唯一きっかけになりうるとすれば、小学校入学の時点だろう。特に母親が子供を私立の小学校入学を切望している場合、たとえ仮面夫婦であろうととりあえず六歳までは我慢して、入学手続きを終えてから正式に離婚する、というパターンがある。逆に、ここを逃したらもう子供の年齢は彼の離婚に何の影響も及ぼさないと考えたほうがいいだろう。  また、彼の子供の数も不倫の恋の難易度には大きく影響してくる。子供がひとりのケースにくらべ、子供がふたりになれば当然離婚の可能性は大幅に低くなる。ましてや三人以上となったら、もうこれは不可能といってもいいほどの状況と考えたほうがいい。これは単純な人数や別れたときにかかる彼の経済的負担の問題ではなく、子供を三人つくるという行為が、家族の絆《きずな》の深さを物語っているからだ。  彼の子供の性別に関しては、個人差があるので一概には言えないが、やはり女の子しかいない家庭より男の子がいる家庭のほうが離婚しにくいようだ。これは彼の問題というより彼の家の事情によるところが大きい。特に彼が長男で、妻との間に男の子が誕生していると執拗《しつよう》に離婚を避けたがるのは、やはり「跡取り」という意識があるためである。  彼に子供がいることの不倫難易度の高さをじゅうぶん理解した上で、もうひとつ心にとどめておいてほしいのは、彼が離婚しない理由がすべて子供にあると信じ込むのは少々危険かもしれない、ということだ。本当は奥さんとうまくいっていても、不倫の相手にはうまくいっていないと言う男性がいるように、彼がたとえ本心でなくても離婚できない理由に子供を切り札のように使っていることもあるのだ。  彼の離婚をしないという姿勢を崩さない裏には、様々な要因や状況、メリット、デメリットなどが複雑に絡み合っている。でも、それをあなたに説明するのは困難と判断したとき、いちばんてっとり早い返答が「子供」なのだ。あなたに最もわかりやすく、簡潔で、それ以上有無を言わさぬ力を持つたったひとつの答えが「子供」なのである。  その上、その返答によって彼が人間的に非難されることもない。子供がいるから離婚できないと言われて、彼を冷たい人間だとなじることなど誰にもできないのだから。その返答によってあなたが立ち直れないほど傷ついたとしても、それは「仕方のないこと」なのだから。  彼とつきあっていくかぎり、あなたがこの苦悩から抜け出せることはないだろう。あなたはこの苦悩から自分で自分を守っていかなくてはならない。  それにはなるべく彼の子供について言及しないこと、しかない。彼が家庭や子供のことを一切話さないタイプか、平気で日常会話として口にするタイプかは分かれるところだが、とにかくあなたの方からその話題を持ち出すことはしないほうがいい。  しつこく写真を見たがったり、「幼稚園の運動会には行くの?」と折に触れて尋ねたり、「あなたに似ているの? それとも母親似なの?」と問い詰めたりすることは、あなたを傷つけることはあっても決して満足させることはない。こんな自殺行為だけは絶対に避けるべき。今はまず、あなたと彼との、ふたりの関係だけに目を向ける努力をしてほしい。  ただ、ひとつだけ言えることは、子供がいても離婚する人はする、離婚しない人はしない、ということだ。  誰もが自分の子供と離れるのに身を切られるような思いをするとはかぎらない。子供は手放しても自由やお金を手に入れたいと思う男性だっている。子供にまったく興味を持たない父親もいる。実際、何人子供がいても離婚している夫婦はたくさんいる。彼の子供の存在を絶望的な材料と言いきることはできない。  ただ、あとは果たして、自分の子供との別離に身を切られるような思いもしない彼の性質をあなたが本当に愛せるかどうかだ。自分の子供に大した愛情も持たずにあなたのもとにやってきた彼を、あなたはどう受け止められるだろうか?  彼に離婚してほしい。けれど自分の子供に離れがたいほどの愛情を持たない男性と結婚などしたくない。彼の子供の存在に苦悩したことのある女性なら、誰もが一度は陥るパラドックスだ。やはり、最後は彼の人間性にかかってくる。大切なのは、あなたがそれをどこまで見抜けるかどうか、である。 [#改ページ] Story 4  彼との子供を堕《お》ろして……。でも別れられない  はじめまして。私は不倫2年目の22歳OLです。彼とはじめて会ったのは、求人広告を見て面接に行ったときでした。彼はその会社の社長でした。見た目は全然格好よくないし、38歳のオヤジだったのですが、なぜかすごく惹かれてしまいました。  事務員で採用されて1か月経った頃に、奥さんとはじめて会いました。そのときは、彼とは不倫の関係ではなかったんですけど、「負けたなぁ」と感じました。彼にはもったいないくらいのいい女でした。男の子3人の子供も彼によく似ていて、彼はとってもかわいがっていました。  奥さんに会う前までは、けっこう彼にアピールしていましたが、会ってからは彼のことを諦《あきら》めようと思うようになりました。ですが、ある日彼からホテルに誘われて、ついて行ってしまいました。彼は私のことを一生面倒みるから安心しろ。黙ってついて来いっていつも言ってくれます。  事務所では奥さんと一緒に働いています。奥さんが彼のことを愛しているのは、見てるだけでよくわかります。それに、私のことをとても信頼してくれて、仕事もけっこうまかせてもらっています。これで、もし私と彼の関係がばれたらと思うと、騙《だま》してしまっていて本当に申し訳ないです。  もう何百回「別れる」って言ったかわかりません。だけど、その度に彼からダメって言われて。私も意志が弱く、彼のこと好きだからまた戻ってしまいました。このままの状態で一生生きていこうという気持ちもありますが、結婚して幸せな家庭を築きたいとも思います。  3か月ほど前、彼との子供を堕ろしました。相手が独身の人だったら産めてたと思うとつらくなり、やっぱり別れようと決めたんですが、どうしても好きだから戻ってしまいました。奥さんや子供たちのこと、ほかのいろんなことを考えると、このままではいけないとわかってるんですが、こんなに好きな人と離れるなんて悲しすぎるし、もう自分ではどうしていいかわかりません。  私はどうしたらいいんでしょうか。どうか梅田さん、教えてください。 [#地付き](東京都・22歳) [#改ページ]  不誠実な彼とは今すぐ別れて、新しいスタートを  あなたが彼と出会ったのは、あなたがまさに新しい世界に足を踏み入れようと、期待と不安で胸いっぱいだったときでしょう。そして彼はあなたが入ろうとしている会社のトップに立つ人。全然好みのタイプでもなかった彼に、あなたが惹かれてしまったのは、あなたの向上心が最も高まっていた時期だからだと思います。  あなたのもっと大人になりたいという心が、同年代の男の子たちではなく、完成された大人の彼に目を向けさせたのです。そして彼も、あなたからの「光線」を感じ取っていたはずです。けれどあなたは、「彼にはもったいないくらいのいい女」の奥さんを見て、彼への気持ちを諦めた。このことは、あなたの持って生まれた素直さと、バランスのとれた倫理観をよく表しています。  ここで終わっていれば、あなたの恋は大人への憧《あこが》れのまま胸の奥にしまうことができたはずです。ところが、あなたからの「光線」が急に途絶えたことで、今度は彼のほうに恋の火種がついてしまった。彼があなたを突然ホテルに誘ったのは、自分が若いあなたからひとりの男として好意を持たれていることを確認したかったからでしょう。あなたもそれまでブレーキを踏んでいたぶん加速度がついて彼との恋に走ってしまった。  ここまでは本当に、仕方のないことです。女性たちがみな、倫理観だけで恋心が抑えられるなら、わたしは今この本を書いていないのですから! けれど、その後も「(奥さんを)騙してしまっていて本当に申し訳ない」と思い続けているあなたが、彼の奥さんと毎日肩を並べて仕事をしているなんて、何という可哀想な光景でしょうか。そんなあなたと奥さんを見ていて、彼は何とも思わないのでしょうか?  彼がまともな神経の持ち主なら、こんな状態に耐えられるはずがありません。でも彼は耐えられないどころか、「一生面倒をみるから安心しろ。黙ってついてこい」などという何の裏づけもない言葉であなたを翻弄《ほんろう》している。その結果、あなたを妊娠させ、中絶させるなどという最悪の事態になっても、彼はまだあなたを自分のものでいさせようとしている。一体、何を考えているのでしょう! おそらく何も考えていないのです。彼は今のあなたと奥さんとのスリリングな関係をけっこう気に入っていて、まだ楽しんでいたいだけなのではないでしょうか。  そんな彼の不誠実な本質をあなたもわかっているからこそ、「もう何百回も別れるって言ったかわからない」のではないですか? でも、あなたの必死な決意も、いつも彼のわがままに阻止されてしまいます。あなたはそれを「意志が弱いから」と言っていますが、決してそんなことはありません。どんなに意志の強い女性でも、彼のような存在から離れるのは容易なことではないからです。  なぜなら彼は、あなたの生活のすべてを握っているのですから。彼と別れることで、あなたはせっかく充実してきた仕事を失い、収入も断たれることになります。いくら若いあなたでも、今の生活をすべて失ってしまう勇気はなかなか持てるものではありません。そういう意味でも、彼はあなたを自分のもとにがんじがらめに閉じ込めているのです。  でも、少し冷静になって考えてみてください。あなたが恐れているように、奥さんに彼とあなたの関係がばれてしまう可能性は大いにあるのです。そのときあなたは、すべてを失う以上の屈辱を与えられることになります。もちろん会社は辞めさせられ、ありとあらゆる中傷と罵声《ばせい》を受け、あなたは心に決して消えない傷を負うことになります。そんな考えたくもないようなひどい事態が、もう明日にも現実になるかもしれないのです。  そうなる前に、何とかあなた自身の力で、一刻も早く彼のいるその場所から抜け出さなくてはなりません。あなたひとりでは無理なら、ご両親か信頼できる大人に事情を話して、あなたの環境を変えるための力になってもらったらどうでしょうか。どんなことをしてでも、あなたは今すぐ彼と離れなくてはいけないのです!  あなたが彼を好きだという気持ちは痛いほどわかります。でも、「このままの状態で一生生きていこう」などと絶対に思ってはいけません。彼が「見た目は全然格好よくないオヤジ」だったことを思い出してください! あなたの未来には、たくさんの魅力的な男性が待っているのです。今のような小さな世界でなく、あなたの前に果てしなく広がっている広い世界に歩み出たとき、はじめて本物の素晴らしい恋に出会えるのですから。 [#改ページ] Story 5  美人の奥さんとかわいい子供、私は必要なの?  私は21歳のフリーターです。短大2年(20歳)のとき、新しくオープンする居酒屋でアルバイトをはじめました。そこで、ほかの店から手伝いに来ていた36歳の彼と出会いました。そのとき私には�きっとこの人と結婚するんだろうなぁ�と思っていた彼氏がいました。  彼氏には内緒で2人で飲みに行きました。居酒屋に行ったあと、ワインバーに行き、そしてそのあと、どこかの駐車場に車を止めて話をし、キスもしちゃいました。つき合っていた彼氏はふっちゃいました。そして、車で行くはじめてのラブホテル。Hも今まで感じたことのない気持ちよさ。すべてが新鮮でした。  嬉《うれ》しいことに、彼が店の支配人になることが決まり、私は内定していた就職先を蹴《け》って、その店でフリーターとしてやってくことを決意しました。彼がつくる仕事のシフト表は、1か月に3、4回は私と一緒の休み。映画、ホテルにドライブ。週に3、4回は家に遊びに来てくれました。  不倫の関係になって半年くらい経った頃、彼は昇格し、しかも店をひとりでみることに。忙しくなり、その頃からデートは月に1回が定番になって、家に遊びに来る回数も減ってきました。1週間遊びに来なかったときは、ボロボロになってしまいました。ゴハンも食べられず、目は腫《は》れる始末。私はそのとき、「家庭が1番、仕事が2番で私は3番?」と彼に言ってしまいました。「昔みたいにいっぱい会うのはもうできないよ。そんな風に思ってるのなら、俺はもう離れていくしかないよ」と言われました。  私のわがままなのかな。月1回のデートと週1回短い時間会うだけで、どうやって彼からの愛を感じられるの? 不安にならないほうが不思議だよ。でも、だんだん彼が離れていってるのがわかるから、演技することに決めた。会えなくても平気っていうのを見てもらわないと。元気に笑ってるの、毎日。今別れたら生きていけない。前向きにいかなきゃ。  梅田先生、でも私わかんないんです。彼の奥さんはナースで、とーっても美人なんです。結婚してまだ2年くらい。子供もとってもかわいいの。会社から毎日家にラブコール。絶対普通以上でしょ? 愛あふれてる家庭でしょ? なんで私がいるのかな。 [#地付き](北海道・21歳) [#改ページ]  彼との幸せな日々はもう決して戻ってきません  あなたの手紙の最後を締めくくっている「なんで私がいるのかな?」という疑問は、不倫の恋をする女性たちが一度は立ち止まる場所ではないでしょうか。  彼には美しく優しい愛する奥さんがいる。可愛い子供もいる。彼だってとても大切にしている愛にあふれる家庭。それなのに、その外側にあなたがいる。どうして彼にとって自分が必要なのかわからない。不倫の恋はいつもその疑問に包まれているような気がします。  その疑問が、あなたの「家庭が一番、仕事が二番、私は三番?」という悲しい質問となって彼にぶつけられました。それに対する彼の答えは、きれい事でしかありません。ここまできて「そんな風に思っているのならもう離れていくしかない」などと言うのなら、彼にはもっと早くあなたに言ってあげることがあったのです。  なぜならあなたはすでに彼のためにたくさんの犠牲を払っています。あなたが結婚を考えていた恋人と別れ、内定していた就職先を蹴ろうとしている時点で、彼はあなたを止めなくてはならなかったのです。三十六歳は、もう二十歳の女の子の人生を既婚者の自分が左右したりしてはならないことを知っているはずですから!  彼の心の中にある本当の答えは、家庭のほかにあなたのような存在があることが男性にとっては理想ともいうべき快適な状態だからです。彼は自分のことしか考えていません。あなた自身のことやあなたの将来のことを少しでも考えていたら、あなたをここまで引きつけるようなことはできなかったはずです。  この恋にひたすらのめり込んでいくあなたを、周囲はなかなか理解してくれないかもしれません。ただのマイナスとしか見ない人も多いでしょう。けれど、二十歳のあなたにとって、三十六歳の彼は、はじめての大人の世界を見せてくれた男性。あなたが何もかも捨てて彼のもとに走ってしまったのもうなずけます。あなたにとっては何よりも彼と過ごせる時間のほうが大切だったのですよね。  あなたが過ごした彼との時間がすべて無駄だったわけではありません。年上の男性に、大人の世界を垣間《かいま》見せてもらえることは、あなたのような若い女性の特権なのですから。あなたにとって彼との恋は、とても貴重な体験だったと思います。けれど、あなたとの時間を過ごすことができなくなったとき、彼の役割も終わるのです。  大抵、仕事で出世をしたり昇格をしたりした男たちは、限られた時間でより家族を大切にするようになります。これは彼らの中にいろいろな意味で自覚や責任感が生まれるからでしょう。彼が今、あなたから「だんだん離れていっている」のはそのためなのです。 「月一回のデートと週一回の短い時間」であなたに彼の愛を確認しろというほうが無理というもの。あなたのわがままなんかではありません。不倫の恋は、何の保証も安心感もないぶん、密な愛情確認がなければ成り立たない恋なのです。だからこそ、彼にはあなたを安心させるだけの努力が必要なのです。でも、今の彼にはあなたのために使う時間も気力も体力もないのです。 「会えなくても平気、という演技をして毎日元気に笑ってる」あなたの涙ぐましい努力に、彼は気づいているのでしょうか? おそらく、自分のことと家庭のことに精一杯で、気づいてすらいないのでしょう。あるいは気づいていても気づかないふりをしているのかもしれません。彼にはあなたに何もしてあげることはできないのですから。 「今別れたら生きていけない」とあなたは言うけれど、もう一度、彼との関係を考えてみてはどうでしょうか。だって、今のあなたは幸せではないのですから! そうでしょう? そして彼とつきあい続けているかぎり、あなたは今より幸せになれることはないのです。  彼と楽しいデートが続いた幸せな日々は、もう決して戻らないのだという現実を、つらくても見つめてください。今こそ、あなたの「前向きにいかなきゃ」という気持ちを、彼から自立する方向に向けるべきなのです。  ここであなたが彼との恋にきちんと別れを告げ、しっかりと自分の足で人生を歩きはじめたとき、彼との恋が、素晴らしい思い出になるでしょう。彼に教えてもらった大人のデートやセックス、確かに実感した彼の愛情、彼に会えなくて目が腫れるほど泣いたこと、つらい涙を隠して笑ったこと、そのすべてがあなたの栄養になって、これからのあなたを支えてくれます。彼との時間が、かけがえのない宝物になる日を信じて、がんばってくださいね。 [#改ページ] 難易度C[#「難易度C」はゴシック体] 妻が専業主婦である場合  専業主婦という存在ほど、今のあなたにとって光り輝いて見えるものはない。彼の手によって完全に守られ、全人生を預け、彼と共に歩む未来を約束されている「妻の座」である。  彼と恋に落ちてから、あなたはその座にとってかわりたいという欲望を片時も忘れたことはないだろう。なぜなら彼女は、あなたの持っていないものをすべて持っている女性なのだから。毎朝その手で優しく彼を起こし、コーヒーをいれ、朝食をつくり、彼のネクタイを直してあげて送り出す。そして彼と暮らす日のあたる部屋をきれいに掃除し、彼の下着を洗濯し、夕食をつくって彼の帰りを待つ。日曜日には一緒に趣味を楽しんだり、車で買い物に出かける。彼女にとっては何気ない日常でも、あなたにはどれひとつとっても叶《かな》わない夢なのだから。  あなたは彼の奥さんが羨《うらや》ましくてたまらない。とてもかなわないという恐怖に近いような先入観があなたを支配している。しかしその反面、彼女の知らないところで、自分は彼にこんなにも愛されている、という事実に意地悪な優越感を覚えることもあるだろう。  あなたの中につくり上げられている妻の肖像は、いつも愛に満ちた笑顔を絶やさない、幸せに満ちた女性だろうか? あるいはいつも髪を振り乱し、女性としての色気も可愛らしさもなく、彼からキスを受けるほどの愛情も持たれていない、哀れな女性だろうか? あるいはそのどちらもがあなたの心でせめぎ合っているかもしれない。  けれど、まだ顔も見たことのない彼の奥さんに対して、あまりに想像をふくらませても仕方がない。一方的にかなわない相手と思うことも、奥さんを憎しみと蔑《さげす》みの対象につくり上げていくのも、どちらもあなたにとっていいことではない。今、あなたに必要なことは、彼の奥さんの立場と自分の立場をできるだけ冷静に判断することしかない。  妻があなたと同じように仕事を持ち、家庭以外の世界を持っている状態にくらべて、彼の家庭をしっかりと守り、精神的にも経済的にも全面的に夫に委《ゆだ》ねている専業主婦という状態は、妻の座を揺るぎないものにする。確かに、彼女の立場はよっぽどのことがなければ崩れないほどの強度を持っている。しかし、これが最も典型的な、不倫の恋の難易度なのである。  妻が専業主婦である場合、彼にとって最も大きな問題は、離婚後の妻の生活に不安があることである。そして、結婚生活の何年かを、夫のためだけに費やしてきたという歴史の跡は、なかなか埋められるものではない。もちろん妻の性格や行動力、年齢にもよるが、夫以外に新たな生きがいを見つけ、第二の人生を歩いていけるかどうか、という問題も、夫に離婚を踏みとどまらせる大きな要因になる。  彼の中には、「妻は俺がいなければ駄目だ」「離婚をすれば妻は不幸になる」という意識が強い。特に子供がいる場合は、妻と子供をセットのように考え、さらにその責任感が強まる。妻の将来、そして子供の将来を考えると、自分自身の夢や情熱など些細《ささい》なことなのだと思い込もうとする。自分の恋愛を成就させることを「不幸の上に立つ幸せ」と考える男性は多いのだ。  その点あなたは若く、自分の仕事もあり、将来にもたくさんの可能性がある。彼がまともな男性なら、自分がいないことが幸せになれるのではないかとさえ思うだろう。そうなれば、家庭でなくあなたのそばにいるほうを選ぶのはなかなか難しいだろう。あなたへの愛情がどんなに強くても、それが当然の論理である。「家族を捨てて、自分だけ幸せになるなんてできないよ」。彼があなたに重い口を開いてこんな台詞《せりふ》を吐くのはそのためなのだ。  結婚年数にかかわらず、この基本的家庭像にはまってしまっている場合、かなり不倫難易度は高い。この難易度をスタンダードとして、その中で、彼の仕事や収入などの条件によっていくつかの段階に分けられる。  まず、彼の仕事の種類についてである。あなたの彼が、会社に属するサラリーマンなのか、自分ひとりで仕事をしている自由業や経営者なのかで、難易度は微妙に変わってくる。  サラリーマンである彼の選んだ専業主婦の妻、というと、やはり結婚前はOLであったか、それと似た価値観を持っている可能性が高い。自分と夫との結婚生活をきちんと全うすることこそ最良の生き方とする女性が多く、そのためにはどんな努力をも惜しまない強固な姿勢がある。夫の仕事や自分の人生に対しても、野心よりもまず安定を求める。おそらく大半の妻たちは、自分の人生に離婚という選択があることすら考えたことはないだろう。  その上、サラリーマンの家庭というのは、離婚が出世に響いたり、体面的に不利になったり、夫の仕事に直接影響するケースが多い。男性側にも、だいたい三十歳前後までに結婚していないと社会的に一人前として認められないという意識もある。彼がごく普通のサラリーマン家庭なら、あなたの恋はこの二重構造に阻まれているのである。  彼の仕事がデスクワークか、営業のような外出や出張の多い部署かにもよるけれど、ある程度規則的な生活を彼はしているはずだ。ふだんのあなたとの交際もいろいろな面で影響が出てくる。彼があなたと会える時間は、会社が終わってから帰宅するまでの数時間だけ。土曜日、日曜日は必ず家族と共に過ごす。彼が自由にあなたのために使えるお金も限られている。あなたにとってはこの上なくつらい日常が、当たり前のように決められているのだ。  しかし、必要以上に悲観的になったり、妻と自分を勝手に比較して絶望的になったりしないでほしい。なぜなら夫婦の内情はそれぞれだ。例外なく妻がきっちり家事をこなしているわけではないし、夫の世話を完璧《かんぺき》にしているともかぎらない。最近はそのような型にはまらない妻も多いのだから。  逆に、彼が自由業であるなら、彼の奥さんもそれに準ずるような仕事をしていたか、そうでなくても夫の仕事に対して多大な敬意を持っているはずだ。夫の仕事の持つ不規則さや不安定さ、交際範囲の広さなどをある程度理解している。彼の労働形態の自由さに乗じて、あなたも彼とかなり自由なつきあいができているかもしれない。彼があなたの家に泊まっていくのも可能だし、いろいろなところに遊びに行けるし、旅行もできる。「まるで不倫のような気がしない」恋愛かもしれない。けれど、その錯覚が、のちのちあなたを深く傷つけることを忘れてはいけない。あなたの恋が結ばれる可能性が少ない恋であることには変わりないのだから。  彼の奥さんは、結婚生活に対しても、絵に描いたような家庭を求めるというよりも、夫のライフスタイルに合わせた快適さを追求するといった方向性が強い。当然、彼女は妄信的にこの幸福が永遠に続くとは考えていない。ある程度の危機感は常に持っているだろう。けれど、彼女がどれだけ柔軟な思考の持ち主でも、いざ現実の生活となれば、やはり安定を求めるのが妻というものである。反面、あなたは彼と一緒に人生を歩んでいけるのなら、どんな苦労も厭《いと》わないと心から思っている。彼が、彼女でなくあなたを選ぶとしたら、その部分によってしかないといってもいい。あなたが二人の間に入り込めるのは、彼と彼女の間に生まれた意識の隙間だけなのだ。あなたにできることはただ、彼の仕事や夢のいちばんの理解者となり、どんなときも彼の最大の味方であることを強調すること、である。  そして、職種にかかわらず、重要になるのは彼の収入である。この状態で離婚が成立するとすれば、彼にかなりの経済力がある場合だけだからだ。専業主婦の妻の今後の人生と、子供が成人するまでの期間のすべてを保証するだけの、破格の慰謝料と養育費を支払う能力がある男性なら、もしもということはあるだろう。  彼が離婚してあなたと結婚する可能性は、彼の経済力に比例する。彼が、あなたとのデート費用にも苦労しているようなら、残念ながら、不倫難易度は一気に跳ね上がるのだということ。もちろん、多大な経済力があれば誰もが離婚を望むとはかぎらない。でも、気持ちはあっても経済力がないために身動きがとれないというケースはとても多いのだ。  どちらにしろ、離婚をすれば彼はすべてを失う。そのとき、彼が財産も、時と場合によっては仕事さえ失っても、それでも彼を愛し続けられるか、それを、自分の中できちんと消化することがあなたの課題である。長い不倫の恋を経て結ばれたら急に色あせた生活が待っていた、ということのないように。  ただひとつ言えることは、どんな家庭も実際は、あなたが考えているほど、夢のような生活ではないということ。今のあなたにとって光り輝く専業主婦の座にも、あなたとはまた別のつらさや苦しみがあるということ。盲目的に専業主婦に憧《あこが》れるのではなく、彼と過ごす大切な時間や、今のあなたの幸福を実感することが、彼との未来に近づく唯一の方法なのだ。 [#改ページ] Story 6  苦しいけど、今はただ彼を愛し続けたい  私は23歳のフリーターです。彼との出会いは今も続けているアルバイト先で。彼は、私の働いているお店に出入りする業者の人です。はじめて会ったときから、責任感の強いステキな人だと思っていました。私たちが不倫の関係になるまで、半年ほどかかりました。彼はなによりもモラルを大切にする人なので、私とのことは、彼の中ではかなりの葛藤《かつとう》があったと思います。  彼は31歳で2人の子供と奥さんがいます。私はこの現実を知ったうえで、彼の誘いにのりました。はじめは2度目の不倫だし、と気楽に考えていました。そのときは悩んだことも、涙したこともありませんでした。でも、今は大恋愛という感じです。彼のことが愛《いと》しくて仕方ありません。  1泊だけの旅行もディズニーランドも行きました。まるで恋人同士がするようなことを自然にしています。ただひとつ違うのは、奥さんと子供が2人いるということだけです。家族の留守中に彼の家に泊まるという、してはいけないこともしました。  1度、彼と大ゲンカをしてもうダメかもしれない、というときに、彼は私にいちばん言いたくなかった言葉を口にしました。「最終的に君を幸せにはしてあげられない。妻と別れることはできない」と。今でもその言葉を思い出すと涙があふれてきます。私自身、何やってるんだろうって思うこともあります。  そんなときに、『愛人の掟《おきて》』と『愛人の掟・2』を読みました。今まで自分で考えていたことが、自分自身を追い詰めていたんだな、と感じました。読んでみて楽になり、苦しくもなり、そして、賢くもなりました。この本に出会っていなければ、やっと見つけた大切なものを失うところでした。梅田さん、ありがとうございます。  私には、3年間つきあっている同い年の彼氏もいます。でも、その人のことを愛しているとはいえません。今、私のすべては、不倫している彼を中心に回っています。  彼なしでは、きっとダメになってしまいます。でも、こうしている間も、彼は奥さんと子供たちのいる家にいるのです。それが現実なんですよね。彼はとてもムリしてくれています。私に電話をかけるという行動がどれだけ困難か、日曜日に外出することが、どれだけ家族に非難されるか、全部わかってるつもりです。でも、やっぱり寂しくて……の繰り返しです。別れたほうがいいとは思いますが、本気で別れようと考えたことは1度もありません。きっと、幸せだからですね。  今は後悔することも、彼とのつきあいをやめることもしたくありません。私はこれからも、彼を愛し続け、現実を見つめて苦しむというくり返しを続けていくのだと思います。  あなたの本に出会えたことを感謝しています。また、お便りします。 [#地付き](神奈川県・23歳) [#改ページ]  かけがえのない素晴らしい恋にもつらい決断は必要です  あなたの彼は、手紙に書かれているように「なによりもモラルを大切にする」「責任感が強いステキな人」なのだと思います。あなたと出会ってから、あなたをはじめて誘うまで、彼の中には苦しい葛藤があったと思います。半年の時間をかけた上で、彼のほうから行動を起こしたのですから、彼は相当な覚悟をもってこの恋に臨んだのだと思います。  逆にあなたのほうは二度目の不倫の恋ということもあって、彼よりも余裕があったようですね。最初はこの恋のつらさよりも楽しい部分や幸せな部分が大きかったでしょう。それから、あなたを愛してくれる彼の真摯《しんし》な姿勢が、この恋を「大恋愛」に引き上げた。それは素晴らしいことなのですが、不倫の恋の場合、大恋愛になればなるほどつらさや悲しみも増してくるのが皮肉なところ。でも、あなたの恋は、つらいのがあなただけでなく、彼も同じ気持ちであることが大きな救いでしょう。 「まるで普通の恋人同士がするようなことを自然に」できているということにも、彼のあなたへの深い愛情がうかがえます。きっと彼はあなたのためならどんなことでもしてあげたいと思っているのでしょう。結婚してあげること、以外には。彼はできるかぎりあなたに電話をし、眠る間も惜しんで時間の許すかぎりあなたに会い、日曜日に外出することも、自分の責任においてできる範囲でしている。彼の仕事と家庭以外の時間はすべてあなたに費やされているでしょう。これが不倫の恋をする男性の正しいあり方なのです。  また、彼は無計画にあなたの部屋に泊まり続けたり、べったりとあなたを束縛したりするようなことで愛情を表現していません。きちんとあなたとの一泊旅行やディズニーランドを特別なイベントとしてセッティングしてくれているのも好感が持てるところです。家族の留守中にあなたを家に泊めるというルール違反も、それほどあなたを傷つけるものにはならなかったのではないでしょうか。  こんなとても恵まれた不倫の恋をしているあなたにも、つらい涙はもちろん訪れます。彼の愛情が真剣なものだからこそ、彼が妻子持ちでさえなければもっと幸せなのにという思いはかえって強くなるのですから。そんなあなたの気持ちを察して、彼は「君を幸せにできない」「妻と別れることはできない」と告げました。彼も、それを口にするのはどんなにかつらかったことでしょう! それはあなたが感じているとおり、彼の「いちばん言いたくなかった言葉」なのです。  けれど、不確実な約束をくり返すいい加減な男性が多い中で、彼があなたに不要の期待を持たせることなくはっきりと真実を告げてくれたことは、彼がとても誠実な男性であるということをよく表しています。あなたにとっては、「思い出すと涙があふれてくる」ほどつらい言葉ですが、これは彼のあなたへの精一杯の愛情なのですから。  もうひとつ、「三年間つきあっている同い年の彼氏」の存在も、あなたの恋を助けてくれていることを忘れてはいけません。その人のことをあなたは「愛しているとはいえない」と言っていますが、どんな形であれ、三年間つきあっているのですから、惹《ひ》かれる部分も気が合うところもあるのでしょう? あなたは彼のことで頭がいっぱいでその人のことがよく見えていないかもしれませんが、その人はあなたのことをちゃんと見てくれています。あなたももう少しだけ、彼のほうに目を向けてあげてもいいのではないでしょうか。  今、あなたのそばにいてくれる男性は、とても大切な存在です。間違っても、その人と別れて彼だけに絞ろうなんて考えないでください! そんなことをしても、この恋はますます苦しくなるばかりです。もちろん、自分の立場をとても客観的に見ることのできるあなたは、そんなことをしようとは思っていないと思いますが。  彼との恋が、あなたにとってかけがえのない素晴らしい恋であることは間違いありません。けれど、ここから先は、やはりあなたがつらい決断をしなければなりません。この恋を終わらせるのは、彼ではなくあなたなのです。あなたも、そのことをそろそろ考えはじめているのではないですか?  手紙に書かれているように、「別れたほうがいいとは思うけれど本気で別れようと思ったことはない」というのがあなたの正直な気持ちでしょう。あなたはどん底のような苦しみと、これまで一度も味わったことのないような幸福の絶頂を交互にくり返しているはずです。その一瞬の幸福感があなたにこの恋を決して手放せないものにしているのです。  けれど、このままいつまでも「彼を愛し続け、現実を見つめて苦しむ」ことを続けていれば、いずれあなたはその幸福感すら感じられなくなってしまうでしょう。彼との幸福な時間だけをよりどころにしていくには、この恋はつらすぎるのです。それは彼にとっても同じことなのです。  ひとつだけ確かなことがあります。それは、彼との恋が終わることがあっても、あなたが後悔するような結果には決してならないということ。ふたりはずっとお互いのことを愛し続けていくでしょう。こんなにもあなたを愛してくれた彼のためにも、今度はあなたが彼への愛情を形にしなくてはならないのです。最後まで自分を見失わずに、この愛を貫き通してくださいね。がんばってください。 [#改ページ] Story 7  一年後に別れを決意。楽しい思い出をつくりたい  私にはつきあって1年ちょっとになる、43歳の彼がいます。彼はスポーツ選手で奥さまと子供が2人います。彼とはじめて話したとき�この人と不倫の関係になる�と直感しました。その後、共通の知人と食事に行ったとき、彼と再会しました。そのあと電話番号を教え、私たちのつきあいがはじまりました。  最初は愛する喜びであふれ、彼に自分より大切な存在(家族)がいることが切なく、胸の中がつらい気持ちでいっぱいでした。でも、年も離れているので一緒になることは考えていません。  ただ、奥さまには羨《うらや》ましいのひと言。彼の寝顔を1日中見ていられるなんて。彼の子供も立派に育ててるし……。でも、私には、若さと美しさがあるのだから、彼にとっては、自慢の女でありたいと思ってます。  彼は自分の知人に、私を紹介してくれるし、私の友人たちとも飲みに行きます。みんなで、彼の車でゴルフに行ったこともあるんですよ。私は本当にまわりの友人たちに恵まれていると思います。2人のことを認めてくれるだけじゃなく、心配もしてくれますけど……。  実は、いろいろ考えて1年後に別れることを決めました。彼は驚いていましたが、了解してくれました。「俺はずっとつきあっていたいけど、おまえの将来に責任が持てるか、と言われたら答えられない」って言ってました。こんなにも、愛《いと》しい彼と別れるなんてものすごく悲しいけど、このつらさや切なさから解放されるんだ、と思うと複雑な心境です。  彼は別に、とってもステキでみんなに自慢したいというかんじでもないし、甘えん坊だし、オヤジギャグ連発だけど、愛しくて愛しくてたまらないです。そして、仕事をしているときはすっごくカッコイイ! 私とつきあってから仕事の調子がいいんです。ちょっと自惚《うぬぼ》れちゃってますけど、コレって女|冥利《みようり》につきます。  あと1年思いっきり彼を愛し、彼とはとにかく楽しい思い出をたくさんつくりたい。別れるときはボロボロになるかもしれないけど、時が経てば別の意味でいい関係になれると思うんです。別れたって大好きな人であることに変わりないから……。 P.S.彼はやたらとうちの親に会いたがるんです。これってフツーじゃ考えられないですよね。何か考えているのか、何も考えていないのか、どっちなんでしょう。 [#地付き](東京都・25歳) [#改ページ]  別れは想像以上にきついもの、猶予期間は禁物です  あなたの手紙からまず伝わってきたのは明るさです。 「奥さまが羨ましい」「彼に家族がいることが切ない」と書かれていても、あなたの文面からは不倫の恋特有の苦しさや暗さが伝わってきません。でも無理に強がっている様子もないので、これはあなたの天性の明るさによるものなのでしょう。  彼とつきあい出したのも「直感」。あなたはいつもこうして前向きな直感でたくさんの恋を見つけているのかもしれませんね。それが不倫の恋であっても自分の直感を信じ、明るさを失わないあなたはとても魅力的な女性。あなたの言うとおり、彼にとってきっとあなたは「自慢の女」なのでしょう。  そしてもうひとつ、あなたはとても自分に自信がある女性です。不倫の恋の中でもまったく卑屈になることなく、「私とつきあってから彼の仕事の調子がいい」と言いきれるところなど、とても素敵だと思います。「ちょっと自惚れ」とありますが、自惚れでもかまわないのです。不倫の恋は、女性が自惚れているくらいでちょうどいいのですから。  ただ、気になるのはあなたの彼もまた、あなたに負けず劣らずの自信家だということです。四十歳を過ぎてもスポーツ選手として活躍し、精神的にも肉体的にも充実し、おそらく経済力もある。彼が自信家になるのも当然のことでしょう。もしかしたら、ふたりは似た者カップルなのかもしれません。  そんな彼をさらに輪をかけて自信家にしているのがあなたなのです。妻と子供のいる温かい家庭をきっちり維持した上で、あなたのような若く美しい恋人もいる。あなたの存在が、もともと自信家の彼にさらなる自信を与えているのです。あなたを自ら進んで公の場に出しているのも、知人に紹介するのも、あなたの友達と気軽に会うのも、彼の自己顕示欲の表れといえるでしょう。  不倫の恋をする女性のあなたが自信を持つことはとてもいいことなのですが、相手の男性があまりに自信を持ちすぎるというのは少々危険です。悪い言い方をすれば、彼の自信をさらに強めるために、彼にはあなたが必要なのかもしれません。もちろん想像にすぎませんが、彼には常にあなたのような立場の女性が存在するのではないでしょうか? 家庭以外に若い恋人を持つことをひとつのステイタスと考える男性は多いのです。  彼があなたのご両親に会いたいなどと言い出すのも、彼が自信家だからです。彼は今、不倫の恋の相手であるあなたのご両親に会ってもひるまないほどの自信を身につけているわけです。おそらくあなたのご両親に会ってどうしよう、ということを熟考した発言ではありません。彼特有の好奇心で、あなたの友達に会うのと同じような感覚で言っているのでしょう。あなたも疑問に思っている「何か考えているのか、何も考えていないのか」はわたしにも定かではありませんが、どちらかと言えば「何も考えていない」のほうに近いと思います。  ですから、彼がどんなにあなたのご両親に会いたがっても、会わせないほうがいいでしょう。どんな事情であれ、自分の娘が不倫の恋をしている相手に快く会おうとする親はいませんから。あなたのご両親を傷つけたり心配させたりすることはあっても、喜ばせたり安心させたりする結果にはなりません。不倫の恋はよほどのことがないかぎり、親には話さないほうが賢明です。  もうひとつ、不思議なのは、あなたが「いろいろ考えて一年後に別れることを決めた」ことです。あなたがどうして彼との別れを「一年後」と設定したのかはわかりませんが、この恋があなたの計画どおり終結するとは思えません。「あと一年で楽しい思い出をいっぱいつくりたい」というあなたの考えは理想論でしかありません。  不倫の恋は、一年目と二年目ではつらさも涙の量もまるで違ってくるのです。楽しい思い出をつくるはずのこれからの一年が、悲しい思い出でいっぱいになる可能性は大いにあるのです。だからといって、今すぐ彼と別れなさいと言っているのではありませんよ。あなたは彼からたくさんの幸せをもらっているし、彼のことだって幸せにしているのですから。ただ、わたしが言いたいのは、せっかく別れを決意したのなら、実行に移すのは一日でも早いほうがいい、ということです。  あなたも「別れるときはボロボロになるかもしれない」と言っていますが、不倫の恋の別れは想像以上にきついものです。今すぐに別れようと強い決意をしていても、結局完全に別れるまでに半年から一年ほどかかってしまったりするのが普通です。あなたが「一年後」などという猶予つきで彼に別れを切り出したのも、今すぐ彼と会えなくなってしまうことに耐えられないからでしょう?  彼が驚きながらも了解してくれたのは、一年も先のことだから現実味がないというのが半分。そして、あなたがいなくなっても、また新たな女性と同じような関係をつくる自信があるからというのが半分です。彼のいいところは、別れようとするあなたを何とかして引き止めようとはしないところかもしれません。けれど、一年後の彼が今と同じようにものわかりがいいとはかぎらないのです。あなたの想いが変化するように、彼の想いも日々変化していくのですから。  ただでさえ離れがたい恋なのに、最初から一年後、などという甘い決心では、いつまでたっても彼と別れることはできません。あなたの発想は、明日からダイエットしようと誓っては挫折《ざせつ》することをくり返しているティーンエイジャーと同じ。どんな決心も、今日からはじめなくては意味がないのです。 「別れたって大好きな人であることに変わりはない」。あなたの言うとおりです。けれど、心から笑顔でそう思えるようになるには長い時間とたくさんの涙が必要なのです。だからこそ、「時が経てばいい関係になれる」のです。  彼との楽しい時間が、いつまでも続くとは考えないでください。「別れるときはボロボロになるかもしれない」なんて、自信家のあなたらしくもない! 彼よりもずっといい男をつかまえにいくつもりで、潔く別れの決意を実行してくださいね。 [#改ページ] Story 8  結婚は望まないけど、ずっと愛し続けたい  私は27歳のOLです。彼は33歳。彼とは、つきあいはじめてから3年目を迎えるところです。以前とはお互い環境も変わり、ますます惹《ひ》かれ合っています。  彼がリゾートホテルのフロントマン、私がそこに出入りするフラワーショップで、フローリストをしていたときに出会いました。挨拶《あいさつ》のつもりで渡した名刺に入っていたポケベルの番号に、彼が電話をくれたのがきっかけでした。前からイイ男だな、と気になっていたのですが。さすがに妻帯者だったので、「何をこの人勘違いしてるの?」というのが本音でした。  よく、不倫している女は、無口で美人で、色気があって、どことなく影がある……なんてイメージでしたが、まさか自分がそんなことになるなんて! 性格はめちゃくちゃ明るい、スタイルには自信があるけれど、色気はゼロに近いんです。仕事命でバリバリのタイプでした。少しだけ遊ぶぐらいならOKかなって思ってたのに、予想外に彼が真剣で、その想いに応《こた》えて今まできちゃいました。  あんまりつらいと思ったことないけど、いろいろありました。そもそも、つきあいはじめた頃、彼の奥さん(彼より2つ年下)は妊娠8か月、結婚4年目の初産だったんです。その頃、私もフローリストの勉強のために、ドイツに1年間留学して超遠距離恋愛! 燃え上がる想いを毎日1分だけの国際電話で確かめ合いました。  それから奥さんが出産し、月日は流れ……1年目の記念日の後、私自身の妊娠が発覚! 体調も悪くなり、仕事するのもつらくて頑張っているうちに……流産しました。悲しくて泣いて別れようと思ったのですが、彼を恨む気もないし、いい経験をしたって思えたんです。でも、職場にばれて居づらくなり、結局退職しました。  6年間続けた仕事もやめ、夢も遠くなり途方に暮れていたとき、彼の勤めていたホテルが倒産。2人でお互いに支え合いました。その後2人とも同じ会社で、夢だった業種で働けることに。  こうして今に至るわけですが、今年、彼の家庭には2人目の子供も生まれ、とても円満にやっているようです。彼は1度も「妻と別れる」と言ったことがありません。それどころか、「妻が幸せに思えるように努めるのが俺の役目だ」とはっきり言うのです。父親の役目も果たし、仕事もバリバリ、私に対してもすごくマメなんです。毎晩電話をくれ、365日かかさず「愛してる」と言ってくれます。私たちは特別なとき以外は外泊しません。私も実家から出ようとは思いませんし。彼の家庭が円満だから、彼が幸せだから、私も幸せです。  こんな私を友達は「騙《だま》されてる」って言うけど、私は「彼と仕事と恋愛を楽しんでるの。将来結婚するためにいるんじゃない」ときっぱり言えます。ずっと一緒にいたいということにこだわり続けているのは事実です。彼と同じものを見て、感じることが同じだということ、嬉《うれ》しいことも痛みもわかり合える。今でも出会った頃と同じように愛し合っています。たぶん何年経っても変わらないと思います。普通の恋人同士より何百倍もステキな恋愛だと思っていますから。  ただ、変わったのは2人の関係が、以前よりずっと成長したことかな。これからもお互いに必要な人であり続けます。そして、愛し続けます。  ありがとうございました。 [#地付き](鳥取県・27歳) [#改ページ]  本当に幸せなのか、自分を見つめ直してみて  不倫の恋のつらさには波があります。この恋のもたらす幸福感に酔いしれ、彼の愛情が手にとるように感じられる時期と、真っ暗闇にひとりぼっちで放り出されたような、出口のないつらさに苛《さいな》まれる時期とが、大きな波となって交互にやってくるのです。  不倫の恋をする女性たちの多くが、状態のいい時期には希望でいっぱいの手紙を書き、状態の悪いときは絶望的な手紙を書くのです。それが一日おきに入れ替わったり、ひどいときには一時間ごとや数分ごとにくるくるとめまぐるしく変化したりします。さっきまで彼と出会えたことを心から感謝し、彼とはずっとこのまま一緒にいるのだと言っていた人が、その一分後には、彼と一緒になれないくらいならもう死んでしまいたい、と言ったりするのです。  彼女たちが何か特別な病にかかっているわけではありません。至福のときと、苦しみのどん底を長い間くり返しているうちに、心のどこかがショートしてしまうのです。不倫の恋は、女性たちの精神を蝕《むしば》んでしまうほど、つらく悲しいのです。  この手紙は、あなたが非常にいい状態のときに書かれたものだと思います。いくら「めちゃくちゃ明るい性格」のあなたでも、これだけのことがあって「あんまりつらいと思ったことはない」とはどうしても信じられないからです。あなたの恋は、最初から現在までずっと波乱含みの非常に危険なものです。その中であなたが本当に「あんまりつらいことなく」過ごしてきたというのなら、この先は読まなくてもかまいません。もしそうなのだとしたら、あなたはわたしの想像もつかないほどの太い神経の持ち主に違いありません。  まず、つきあいはじめたときが、彼の奥さんは妊娠八か月だったのですよね。この事実をあなたがどうとらえていたのかはわかりませんが、妻の妊娠中にほかの女性と肉体関係を持つというのは、男性として許されない卑劣な行為です。これだけで、彼の人間性を疑うに足ります。奥さんが女性として最も弱く不安定で、夫の支えを必要としているときに、彼は彼女がいちばん傷つくやり方で裏切ったのですから。  第二に、そのわずか一年後にあなたを妊娠させている。そしてあなたは流産という肉体的・精神的苦痛を味わった上に職場まで追いやられたのです。これはあなたの言うような「いい経験」などでは決してありません! もちろん、人生で経験して無駄なことはひとつもありません。でも、しなくてもいい経験だってたくさんあるのです。あなたのおっしゃるとおり「彼を恨むことはない」けれど、軽蔑《けいべつ》はすべきです。そして同時に、あなたの軽率さも反省すべきです。あなたがこの「いい経験」で学ぶべきだったのはこのことではないでしょうか?  そして、天罰が下ったとでも言うのでしょうか、彼の勤めていたホテルが倒産。この時期のことをあなたは「ふたりでお互いを支え合った」と実に美しくとらえていますが、彼は自分が弱くなったときにあなたに泣きついたというだけのこと。「夢も遠くなり途方に暮れている」あなたを前にしても、彼は自分のことしか考えていないのです。  その上、あなたと交際中に、妻が第二子を妊娠している。このときのことについては何も触れられていませんが、あなたはショックを受けなかったのでしょうか? これはあなたに対する最大の裏切りにほかなりません。あなたのことがほんのお遊びで、あなたのほうもそのつもりだというのならまだしも、「三百六十五日かかさず愛してると言う」ような相手がいながら、さらに妻との間に子供をつくるというのはやはり彼の神経を疑います。  妻の妊娠中に不倫の恋をはじめた人、不倫の恋の相手に確実な避妊をせず妊娠させた人、そして不倫の恋を続けながら妻を妊娠させた人。このどれかひとつでも当てはまったら、すぐにでも別れたほうがいい相手の条件です。それを何と彼は三つともやってのけたというわけです! あなたは「ふたりの関係が以前よりもずっと成長した」と言うけれど、どこがどのように成長したというのでしょう?  これが本当に、「普通の恋人同士より何百倍もステキな恋愛」でしょうか? あなたは今、本当に幸せなのでしょうか? 一体彼のどこがあなたをそう思わせているのでしょうか。あなたのことを「騙されてる」というお友達の気持ちがよくわかります。「彼の家庭が円満だから、彼が幸せだから、私も幸せ」。こんな風に思えること自体、おかしいのです! たとえあなたが「彼と結婚するつもりでいるんじゃない」としても、ふたりが本当に愛し合っているのなら、そこにはどうしようもない苦しみが存在するはずです。  わたしの書いたことは、あなたにとって見当違いで頭に来ることばかりかもしれません。わたしも、あなたに目を覚ませと言うつもりはありません。けれど、もう一度あなたに問わずにはいられません。あなたは今、本当に幸せなのでしょうか? [#改ページ] 難易度D[#「難易度D」はゴシック体] 彼の両親と同居している場合  彼が結婚していて、その上奥さんが彼の両親と同居している。これはあなたにとってみれば最悪の条件であり、間違いなく最も難易度の高い不倫の恋である。  それなのに、このケースでの不倫の恋に悩む女性は意外に多い。その理由には、男性側の心理状態も大きく関係している。彼はおそらく長男で、自分の家というものに対する責任感を背負っている。そして多かれ少なかれ、家庭内では常に自分の両親と妻との間で板ばさみのような状態にある。彼は家でも仕事場でも、心からほっとできる場所がない。だからこそ、現実逃避の意味もあって、不倫の恋に走る男性が多いのだ。  彼にとってあなたはまさに夢のような存在。家庭にまつわる様々なわずらわしさをすべて忘れて、ただ純粋にひとりの女性を愛し、愛されるという感覚を、彼は久しぶりにかみしめているはずだ。だからこそ、あなたへの思い入れは強く、できることならずっと手放したくないと願う。この彼の情熱の深さが、あなたをさらにこの恋に執着させるのだ。  しかし、そこであなたにのしかかるのは、奥さんが彼の両親の面倒をみている、という紛れもない事実である。彼の奥さんは、夫や子供の世話のほかに、ほぼ二世帯の家事をこなし嫁姑《よめしゆうと》問題などにも耐えている。彼はそんな妻の努力を無条件に評価し、感謝している。それだけに、妻への負い目も、ほかのパターンより何倍も強い。どんなにあなたを愛していても、離婚など口が裂けても言い出せるはずがない、というのが彼の本音だろう。  妻も、家で様々なストレスを抱え込んでいるぶん、夫の帰宅時間や、彼の行動に対するチェックがどうしても厳しくなる。大人の男に門限も何もないけれど、それに似たものが設定されているケースも多い。彼ががんじがらめの生活の中で最大限あなたと過ごし、精一杯尽くそうとしていても、あなたからすればふたりでゆっくり会える時間さえごくたまにしか訪れない、そんな状態かもしれない。  それでも最初のうちは、ふたりの愛情の高まりも手伝って、何とかやっていける。けれど、時が経つうちに、彼の精神力と体力がもたなくなってくる。何しろ、彼は仕事と家庭とあなたで眠る暇もないような日常を送っているのだ。家では帰りが遅いことを妻に責められながら家庭内の愚痴を聞く。そしてあなたの前では、一緒になれない悲しみやもっと会いたくても会えない寂しさに泣いている肩を抱く。そして双方が安心できるだけの愛情を注ぐのだ。これだけのことができるキャパシティを持つ男性はなかなかいない。彼の能力の限界が、この恋に破綻《はたん》をもたらすのである。  彼の妻の立場からしても、この不倫の恋は激しい嵐となってふりかかってくる。あなたの存在がばれてしまったときの妻の逆上は、想像を絶するものがあるだろう。家のことも子供のことも両親のこともすべて押しつけられて、夫は外であなたと楽しく恋愛しているという事実を知って、パニックに陥らない女性がいるだろうか?  彼女は怒りにまかせて家を出て行くと言うかもしれない。これは一見、あなたにとって好都合なことのように思える。彼女さえいなくなればもう障害は何もない。晴れて彼と一緒になれる、そう信じてわざと妻にばれるような行為をする女性さえいる。けれど、その事態に直面した彼がどのような行動に出るか、考えたことがあるだろうか? そのときあなたの愛する彼は、妻を引き止め、何とか夫婦関係を修復しようと必死になるのである。  なぜなら、彼にとって妻は自分の生活になくてはならない存在なのだ。彼女が子供の世話をし、両親の面倒を見、機嫌をとり、家庭が円満におさまっているからこそ、彼は仕事に打ち込むことができるのだ。ましてやあなたのような女性と夢のような恋ができるのだ。  ただでさえ、ふだんから彼の負い目が大きいぶん、家庭内で妻が強い立場に立っている。そこに彼の不倫が発覚すれば、さらにその傾向が強くなることは目に見えている。彼はあなたとの恋愛に終止符を打つことを本気で考えるだろう。  彼がそこできっぱり別れられる強い意志の持ち主なら、あなたのつらさはいくらか癒《いや》されるかもしれない。でも大抵の男性は、もう二度と決して妻にあなたのことが露見することのないように、細心の注意を払ってあなたとつきあい続けるのだ。今度こそすべて終わりだというぎりぎりの危機感を抱えながら。  女性にとって、妻と決して別れたくないと思っている男性との恋ほどつらいものはない。たとえ現実に結婚できなくても、彼も自分と同じように、ずっと一緒にいたいと強く望んでいると思いたい。そう信じているからこそ、つらい涙もこらえることができるのだ。けれど、彼の本心が垣間《かいま》見えやすいこの状況は、あなたを絶望の淵《ふち》に追い込む。  この最悪の状態の中でも彼を愛し続けようとするあなたは、間違いなく今まで出会った誰よりも彼を愛しているのだろう。けれど、彼が離婚してあなたと結婚することは、まず100パーセント不可能であることを潔く認めなくてはならない。その上で、もうこれ以上追い詰められないように、この恋の炎に焼き尽くされてしまわないように、あなたは自分で自分の身を守らなくてはならないのだ。  それにはまず、妻にばれるような可能性があることは一切しないこと。そして、彼にもさせないこと。彼を外泊させたり、旅行に出かけたり、手紙や写真を渡したりすることも避ける。とても悲しい選択だが、あなたの恋をこれ以上最悪の事態に導かないためには仕方のないことなのだ。そして、疲れきった彼の最高の安らぎになることがあなたの役割である。  そして、もう一度、何とか冷静な目をもってもう一度あなたと彼の現実を見つめてみてほしい。今あなたは彼を運命の相手だと思っている。自分の人生を共に歩む相手は彼以外に絶対に考えられない、と断言する気持ちもとてもよく理解できる。女性なら誰でも、いちばん愛する男性と結婚したいと願うのだから。  けれど、仮にもし彼と結婚できることになったときのことを、具体的に想定してみたことはあるだろうか? あなたの望みが晴れて叶《かな》ったとき、ふたりを待ち受けているのは夢のような愛の生活だけでは決してないはずだ。恋愛と結婚の違いの大半はお互いの家族との関係性にある。この場合、彼と結婚して生活をはじめれば、当然、今度はあなたが彼の両親の面倒をみることになるのである。  彼の両親との同居というのは、独身同士の恋愛の中でも大きな壁となって立ちはだかる問題である。彼の奥さんがどんな経緯で同居を承諾したのかは知る由もないが、もしかするとそれは結婚当初からの条件だったのかもしれない。どんなに優しく親切な女性であっても、自ら進んで姑《しゆうとめ》と一緒に暮らしたいと願う人はいないのだから。現在の妻を両親と同居させている彼が、あなたとは別居して結婚生活をはじめるとはとても思えない。  あなたには、今からそんな生活ができるだろうか? 彼の両親との同居生活は、現在の彼の奥さんが味わっている苦労の何倍にもなるだろう。なぜならあなたは大切な息子の幸せな家庭を壊した張本人なのだから。どんなに彼が味方になってくれたとしても、彼の両親にある程度理解する気持ちがあったとしても、おそらくあなたは家の中でひとり孤立することになる。万が一、彼が別居してふたりきりの生活をはじめることができたとしても、身内に祝福されない結婚生活には必ず困難がつきまとう。  そして、今あなたが手に入れている快適で自由な生活や、魅力的でやりがいのある仕事もきっぱり捨てなくてはならないだろう。あなたがこれまでの人生で築き上げてきたすべてのものと引き換えに手に入るのは彼、だけなのである。もちろんそれでもかまわないとあなたは思うだろう。しかし、やはり人は愛だけでは生きられない。そうできたらいいと願ってはみても、現実はそう甘くないのだ。さらに彼について言えば、今あなたが見ている彼が最高の彼なのだ。結婚後、彼の今まで見えなかった様々な面を見せられたとき、あなたが決定的な幻滅をしないなんて言いきれるだろうか?  あなたは今、彼との結婚をゴールだと思うのをやめて、この素晴らしい恋で自分がどれだけ成長できるのか、これからどうやって彼との恋に決着をつけ、自分の人生をより充実させることができるのかを考えるべきである。あなたにその前向きな姿勢さえあれば、氷河さえ崩れ去る奇跡の瞬間が訪れるかもしれないのだから。  あなたにできることは、そこまで愛するひとりの男性に出会えたことに感謝し、ただありのままの彼を愛すること。それだけなのである。 [#改ページ] Story 9  奥さんにばれても離婚しない彼。どうすればいい?  梅田先生、はじめまして。私は28歳の独身でインテリアコーディネーターの仕事をしています。そして今、つきあって4年になる不倫中の彼がいます。『愛人の掟《おきて》2』の、SteP別対処法の「四年以上」の所を読んでいて涙が止まりませんでした。この時期に陥りやすい症状として書かれていたことが、まるで今の自分の状況にぴったり当てはまっていたからです。  彼は、『愛人の掟』のなかで不倫難度が高いとされていた「妻子持ち、彼の両親と同居」という人です。私が通っていた専門学校で彼と出会いました。当時、大学を卒業してインテリアの勉強をしていたとき、彼が講師としてやってきたんです。私よりも10歳年上の彼は、とても大人に見えて初対面のときからけっこうタイプの人でした。彼にはもうそのとき奥さんがいましたが、私は学校行事の打ち上げのときに、思いきって自分の気持ちを告白しました。すると彼は「結婚はできないけど、たまに遊びにいくくらいなら」と言ってOKしてくれました。そのときから私たちの不倫の恋ははじまったのです。  その後私たちは順調に、といったらなんか変ですが、普通に愛人をしていました。最初の頃は、週2日会って半年に1回旅行に行ってなんてきちんとやっていたのですが、2年くらい経つ頃には私も「毎日会いたい、もっと一緒にいたい」とか言ったり、彼も頻繁に私の家に来るようになって、真面目に帰ってたのが遅くなったりしてきました。そんなことをしているから奥さんに怪しまれてしまい、最近では奥さんに全部ばれてしまいました。彼はものすごく慌てていて、奥さんが家を出ていくと言っている、と私に話しました。内心、彼と一緒になれるかもなんて期待してしまった。そんな訳がないのに。それどころか、彼は奥さんを強く引き止めました。私との時間を削ってまで……。  そんな彼と会えない時間を使って、私はこれからの自分を考えました。私の状況、彼の状況、いろいろ考えて彼に聞きました。「私たちはどうなるの」と。すると彼は「自分の両親の面倒をみている、妻の努力を裏切れない」と言いました。でも私は彼と離れられません。今ではなかなか会えませんが、時々会っています。会えなくてつらいときは自分の仕事に没頭するようにしています。仕事をしているときだけ、ほんの数分でも彼のことを考えないでいられるからです。  つらくて悲しい恋ですが、私がこれから生きていく上で、彼以上の人は現れないと思います。彼とこのままずっと一緒にいれば、一生家庭を持つことも、子供を持つこともできない。けれど、彼のいない人生など考えられないのです。どうすればいいかわからない。そんな毎日です。 [#地付き](秋田県・28歳) [#改ページ]  結婚は100パーセント無理。仕事を第一に考えて  二十八歳という年齢は、いろいろな意味で女性として大きな節目に差し掛かっている年齢です。もう、若いというだけで周囲にちやほやされたり、男性にもてたりすることもなくなり、かといって確固たるキャリアがあるわけでもない、中途半端な時期。結婚や出産までの現実的なタイムリミットも近づいてきて、自分に対する焦りが最高潮に達するときです。わたしは、女性にとって二十代後半は精神的にも肉体的にもいちばんきつい時期だと思います。  そんな中で、あなたは今不倫の恋をして四年目。女性として最も苦しい時期と、不倫の恋の最もつらい時期が一気に来てしまいましたね。あなたの手紙を読んでいて、「つらく悲しい恋」に、胸が詰まる思いがしました。けれど、今あなたはしっかり自分の人生を見つめなくてはなりません。これからの将来、あなたがどんな人生を歩んでいくのかは、ここでもう一度がんばれるかどうかにかかっているのです。  あなたのほうからはっきりと彼に告白してはじまった不倫の恋。そのときの彼の返事は素っ気ないものでしたが、その後のふたりのつきあいで、彼のほうもこの恋に真剣に悩んでいることがわかります。彼はきっと、これまで不倫などにまったく縁がなかった真面目で誠実な男性なのではないでしょうか。  あなたの恋の最大の特徴は、つきあいはじめの頃は比較的冷静でいられたふたりが、二年目あたりからお互いに離れがたくなっている点です。特に男性側は最初に燃え上がって毎日会いたがっても、しばらく経つと電話もまめにしなくなったりして女性のほうが傷つけられるというパターンが多いのです。それに対して、時間をかけてお互いの存在がかけがえのないものになっていったあなたの恋は、とても上質の、本物の恋であるような気がします。  だんだんと密になっていったふたりの関係が、彼の奥さんにばれてしまったのは当然の結果でしょう。彼はあなたとつきあうまで、奥さんに疑われるような行動など一切しない人だったのでしょうから。一緒に暮らしていてその変化に気づかない妻はいません。そして彼は奥さんに嘘をつき通すこともできずに、あなたとの関係を認めたのでしょう。  彼の奥さんが家を出て行くと言ったとき、あなたがもしかしたら彼が奥さんと離婚するのではないかと期待した気持ちはよくわかります。でも、結果はその逆。彼は奥さんを必死で引き止め、あなたと会う時間を減らしてでも妻の信用を取り戻そうとしました。彼にとって、奥さんの存在は、それだけなくてはならないものなのです。その彼の想いをより強くしているのはやはり、「妻子持ち、彼の両親と同居」という事情です。  わたしがこのような環境にある相手との不倫の恋を難易度が高いとしているのはこのためなのです。彼にとって「妻」は、妻であるだけでなく、子供の母親であり、自分の両親の面倒をみてくれる唯一の存在です。彼は奥さんがしっかりと家庭を守ってくれているからこそ、安心して自分の仕事ができる。それがじゅうぶんわかっているだけに、彼は妻に対して愛情とはまるで別の部分で、多大な感謝の気持ちを抱いているのです。だからこそ、彼はあなたと一緒になれない罪悪感と、妻へのうしろめたさとの間でいつも苛《さいな》まれていたでしょう。「妻の努力を裏切ることはできない」とあなたに告げた彼はあなた以上につらかったと思います。  本当に、つらく悲しいことですが、あなたの状況では、彼との結婚は100パーセントないことを認めなくてはなりません。彼があなたをどんなに愛していても、そしてたとえ奥さんのことをまったく愛していなくても、彼は一生離婚しないでしょう。あなたに対して軽々しく不確実な約束をしないのも、彼は自分の立場を痛いほどよくわかっているからです。  今あなたが考えなくてはならないことは、彼がこれからどうするかではなく、あなたがこれからどうするかということです。彼とこのままずっと一緒にいたい。でもずっと彼のそばにいることを望めば、家庭を持つことも子供を産むことも諦《あきら》めなくてはならない。このつらすぎる現実を、あなたは受け止めなくてはならないのです。 「これから生きていく上で、彼以上の人は現れない」というあなたの言葉を否定することはできません。「彼のいない人生など考えられない」あなたの気持ちがとてもよくわかるからです。今のあなたにほかの男性に目を向けなさいと言っても無理でしょう。そんなことをしても、余計彼への想いが募り、整理のつかないあなたの心は壊れてしまうかもしれません。  でも、あなたは自分がこの恋で崩壊してしまわないように、ちゃんと防衛手段を見出しています。「仕事をしているときだけ彼のことを考えないでいられる」と書いているように、あなたにとって自分で自分の身を守る方法は「仕事に没頭する」ことなのです。あなたの救いは、生きがいを持てる一生の仕事があることです。仕事を通して考えても、今のあなたの年齢は勝負のときと言えるのです。今確実にキャリアや人脈を構築することで、三十代の仕事が充実するかどうかが決まる、大切なときなのですから。  彼を忘れることに無駄な力を使うのではなく、とにかく仕事のことを第一に考える努力をしてください。それが今のあなたにとって最良の道です。彼という素晴らしい男性と出会えたことに感謝し、あなたにしかできない仕事を大切にすること。それがあなたの素晴らしい恋を貴重な経験に変える唯一の方法なのです。 [#改ページ] Story 10  不倫の彼と同級生の彼との間で揺れて……  今の彼と会ったのは18歳の夏、前につきあっていた彼のバイト先で出会いました。ひと目惚《めぼ》れでした。自然につきあいはじめて、彼の誕生日に私の処女をあげました。つきあいはじめは、妻子持ちだということを知らなくて、友達から聞かされてショックでした。さらに彼の両親と同居している難度の高いパターン。彼には「俺にはつきあおうと言う権利はない、君が決めてくれ」と言われました。戸惑いながらも、惹《ひ》かれるものがあって、つきあうことにしたんです。  でも、親がけっこう厳しくて、夜無断で出かけるようになった私に、「彼を連れて来い」って言ったんです。彼に言ったら、家に来て謝ってくれたんです。それからは親も安心したんですが、その後、やはり夜しか会えなくて、夜出かけてばかりいたら、今度は「別れろ」って言われちゃって。親に反抗もしたんですが聞いてもらえなくて……。結局、耐えきれずに、親には別れたって嘘をつきました。これ以上、親に心配かけたくなかったから。  それから、私は専門学校に通うために、ひとり暮らしをはじめました。彼の家から私のアパートまで50分くらいあるのですが、月2回は会いに来てくれていました。  でも、あるとき同じクラスのA君が気になりはじめ、友達の勧めもあって、彼に別れ話をしたんです。でも、完全に自分の意思で別れたんじゃないことに気づいてアパートに帰って、ひとりで泣いていたんです。そしたら、彼が家に来て。2か月ぶりくらいに会ったんでついつい泣きを入れてしまったんです。彼は「ごめんね」って謝っていました。そのとき、彼を本当に離したくないって思いました。彼のそばにいたいって……。彼も別れたくなかったって。  それから彼とは、前よりも会ったりTELしたりするようになりました。でも、やっぱりA君のことが気になって、1か月もたたないうちにA君とつきあうようになりました。彼には2回目の別れ話をしました。ただ、A君の気持ちがわからなくて揺れているときに、また彼からTELがあって会ったりしていたんです。そこで、やっぱり彼を愛しているんだって、気づいたんです。だから、A君と別れて彼のところに戻ったんです。  しばらくは、何事もなかったんですけど、友達から彼の奥さんが2人目の子供を妊娠しているって聞いて……。本人に聞いてみると、「傷つけたくなかったから黙っていた」って言うんです。ヒドイですよね。そのときは、しばらく連絡しませんでした。  でも今は、少し割りきってつきあっています。つきあって1年くらいは彼と結婚したい、彼の子供が欲しいって何度も思いました。でも、今は考えないようにしています。奥さんを妬《ねた》んだって何の意味もないですし……。  けっこう私、�掟《おきて》�守ってるんですよ。でもやっぱり、泣いちゃうんですよね。がんばって強くなろうと思います。しばらくはこのままだと思いますけど……。  最後に、この本に出会えて本当によかったと思います。よろしければ、アドバイスもらえれば、と思います。  よろしくお願いします。 [#地付き](新潟県・20歳) [#改ページ]  彼はあなたがつらい恋をするに値しない人物です  あなたが不倫の恋に落ちたのは十八歳。あなたにとっては、大人の恋愛をしたはじめての男性が彼だったということですね。若いあなたには、少々荷が重すぎるような気がして、読んでいて可哀想になってしまいました。  あなたはつきあいはじめたとき、彼が妻子持ちであることを知らなかった。第三者から聞かされるという最悪の方法でそれを知ったあなたのショックは想像できないくらい大きかったことでしょう。そんなあなたに対する彼の態度がまたひどい。あなたがすでに自分にひと目惚れしていることを承知の上で「俺にはつきあおうと言う権利はない、君が決めてくれ」なんて、若いあなたに何という仕打ちでしょう。彼がここで決断をあなたに委《ゆだ》ねているのは、自分から行動を起こさないことでこの恋の責任から逃れようとしていたからです。  ここであなたに、もうこれ以上彼とつきあわないという決断ができたなら! でも、彼に惹かれていたあなたを責めることなどできません。十八歳のあなたに、男性を的確に判断する目などまだ備わっていなくて当たり前なのですから。  ここから先も、彼の行動には疑問符ばかり。親元にいるあなたを自分の都合に合わせて夜外出させるなど、とんでもないことです。彼がまともな男性なら、どんなにあなたが会いたがったとしても何とか制止することであなたへの愛を示したでしょう。その後、「家に来て謝ってくれた」とありますが、このとき彼は自分が妻帯者であることをあなたのご両親にきちんと告げたのでしょうか? おそらく告げていないと思います。だって、十八歳の娘が不倫の恋をしていると知って「安心する」親など世界中探したっているはずがありませんから。  彼があなたの家に謝りに来てご両親にまで会ったのは、誠意があるからではなく、それからもあなたと都合よく会いたいからです。それは、その後も性懲りもなくあなたを夜誘い出すことをやめない彼の行動からも明らかです。ご両親を心配させまいとあなたが言った「別れた」という言葉が、嘘ではなく真実であったなら、あなたのつらい涙はどれだけ減ったことでしょう。  それから、あなたがひとり暮らしをはじめたことで、彼との恋愛はある意味安定してしまいました。そこであなたに好きな男性ができたところまではよかったのですが……。彼との別れを決意したり、また戻ったりをくり返しているうちに、あなたの彼への恋心はより確かなものになってしまいました。これは不倫の恋ではよく見られる現象なのです。一度離れてみてますますお互いの存在が大きくなってしまうのです。あなたの場合、同年代の男の子と比較することで、彼の大人の部分が際立ち、逆に「A君」の幼稚さが目立ち、結局彼の欠点までもが美化されていったのだと思います。それがあなたに「やっぱり彼を愛しているんだ」という結論を出させた。ふたりの関係が、それ以前より密なものになったのはそのためです。  問題は、そのあとです。彼の奥さんが妊娠していることを、あなたはまた第三者の口から知らされたのです。これについてはあなたも「ヒドイですよね」と書いていますが、あなたが思っている以上に彼のしたことはひどいことなのです! 自分のためにつらい涙を流しているあなたがいながら妻を妊娠にいたらせ、その上あなたに隠していた。妻帯者であることを隠していたときも第三者を通じてあなたにばれていたわけですから、今回も隠し通せないことは容易に予想できたはずです。にもかかわらず、彼はまたあなたに同じやり方で傷をつけた。「傷つけたくないから黙っていた」どころの話ではありません!  残念ながら、彼はあなたがつらい恋をするに値しない人物だと言わざるを得ません。彼はあなたが一生懸命「掟」を守り、涙をこらえてつきあっていくような相手ではないのです! あなたは一分でも一秒でも早く、彼と別れるべきです。 「今は少し割りきっている」というあなたの中には、彼をほんの少し冷静に見る目が備わってきたように思えます。がんばって、恋する目ではなく、心の目を開いてもう一度彼を見てください。ひとりの人間として、彼が本当に必要な存在なのかを考えてください。 「奥さんを妬んだって何の意味もない」というあなたの考え方はとても正しいものです。ただ、あなたがあともう少しでも彼の本質を見抜けるときがきたら、彼の妻など羨《うらや》ましくも何ともない存在だとわかるでしょう。あなたの目が覚めたときには、彼以外の男性との、楽しくて幸せな恋があなたを待ち受けているのですから。 [#改ページ] 難易度E[#「難易度E」はゴシック体] あなたに家庭がある場合  愛人の掟ではずっと、独身女性と家庭のある男性との恋愛について述べてきたが、もちろん世の中で言われている「不倫」はそれだけではない。女性側にすでに家庭がある場合である。  結婚しても、どんどん社会に出て活動している女性が増え、自分に家庭がありながらほかの男性と恋に落ちるというケースは増えてきた。これもひとつの「不倫」には違いない。  しかし、やはり独身女性の不倫の恋とはかなり性質が異なる。独身女性がこの恋に落ちたとき最も苦しむ最大の要因は、愛する彼との結婚を心の底から切望していることにある。いちばん愛する男性と結婚できない、というシンプルな構造だ。このまま彼を愛し続けていたら、一生家庭を持つこともできないし、子供を産むこともできないかもしれない、という不安と恐怖である。  既婚者女性の恋愛にはこのつらさの源がない。なぜなら、あなたが彼との結婚を強く望んでいるとはかぎらないからだ。不倫の恋をする大半の妻たちは、自分の家庭と現在の生活が根本から崩れ去ることを望んではいない。あなたはすでに家庭を持ち、自分の子供を持っている、あるいは産むことが可能な状況にある。それだけで、不倫の恋のもつ苦しみはまったく別の種類のものになるのだ。  だからといって、家庭を持つあなたと夫以外の男性との恋愛に何のつらさも悲しみもないはずがない。独身女性の苦しみとどちらがつらいかなど一面的に比較することもできない。誰もが結婚したからといって、女であることを忘れてしまうわけでは決してないのだから。独身女性の不倫の恋と同じく、永遠に尽きない恋の悩みである。  優しい夫と可愛い子供のいる温かい家庭を壊すことは絶対にできない、という強い思いがあなたの中にあるだろう。あなたの家庭は様々な問題を抱えているかもしれない。けれどその場所を捨てて恋人のもとに走ることはしてはいけないこととわかっている。それだけ守りたいものがありながら、今の恋のときめきを失いたくない。それは妻として、母としてのあなたではなく、女としてのあなたの切なる願いである。  もしあなたのつきあっている相手が独身男性だったとしたら、あなたのつらさは独身女性とつきあう既婚者の男性の葛藤《かつとう》に近いかもしれない。  あなたは夫や子供がいても、自分が独身男性から恋愛対象として見られるということで、ひとりの女性としての満足感を味わうことができる。自分がじゅうぶん魅力的な女性であるというプライドを維持できる。その快感は女性にとって実に手放しがたい甘い蜜《みつ》に違いない。  しかし、相手の男性が未婚であるとなれば、いつまでもその幸福に浸っているわけにもいかない。あなたには、一生彼のそばにいて幸福にしてあげることはできないのだから。独身女性との恋愛の中で、男性は、自分の手で幸せにできないことがわかっているのなら、自分は早く彼女のもとからいなくならなければならない、という焦燥を覚えるのが普通だ。その感覚に似た者は、あなたの心にもあるだろう。  特に、彼があなたより年下だった場合には、その思いがさらに強くなる。彼には未来があり、同年代の若く美しい女性たちとつきあうことも、いつでも結婚することもできるのに、自分にはその資格がない。この事実はあなたを容赦なく苦しめるだろう。彼との逢瀬《おうせ》のあと、家に帰ればもう男性としての魅力は色あせているが尊敬できる夫やかけがえのない子供たちが待っている。あなたは常に現実と彼との恋のギャップに苛《さいな》まれ、深い自己嫌悪に押しつぶされそうになる。  このケースは、どこまでいっても、あなた自身の問題でしかない。彼の気持ちがどのくらい真剣なのか、本気で一緒になりたいと考えているか、ほんの遊び心なのか、そんなことも関係ない。もちろん家庭にばれてしまうことなどあってはならないが、もしそうなったときに夫がどんな反応を示すかなども、今のあなたには考えても仕方がないことだ。  もし彼との間で、将来一緒になることがひとつの可能性として語られているような状況なら、早急にきっぱりとした決断を下さなくてはならない。はっきりいって、この恋が結婚という形に決着するケースはあまりない。女性としての家庭を守りたいという本能と、子供に対する深い愛情があなたを常識の枠に連れ戻す。そしてあなたは気づくのだ。安定と恋の高揚、そのどちらをも同時に手に入れることはできないということを。  相手の男性が、あなたと同じように家庭を持っている場合は、またずいぶん様子が変わってくる。世間で言われているところの「ダブル不倫」である。  現状の夫婦生活を続けながら、さらに新しい相手との恋愛関係を楽しみたい、というのは、不倫の根底に流れる発想である。以前は男性たちにより強くこのような願望があったが、最近は女性たちにもその傾向があるようだ。  お互いにそれぞれの家庭を持っているという安定した状態の中で引き起こされたこの恋愛は、ふたりの気持ちや意思のバランスが保てている間は、理想的で最も安全な不倫の恋と言えるかもしれない。どちらにも守るべき大切なものがあり、どちらも守るべきルールを知っている。日曜日にどうしても会いたいと涙することもないし、決断できないことの優柔不断さに絶望することもない。相手の夫や妻に対して一方的な想像をめぐらして苦しむこともない。相手の将来を思って早く別れなければと葛藤することもない。  あなたには、彼も自分と同じ境遇なのだという安心感があり、人生の選択に対する焦燥がない。それでいて女としての喜びを見出せるのならば、ずっとこのまま恋をしていたいと思うかもしれない。お互いがしっかり秘密を守りさえすれば、誰も傷つけない恋なのだからと。  しかし、この微妙な均衡はそう長く続くものではない。恋愛の中で、お互いの相手に対する想いが常に同じ状態であることなど、奇跡に等しい。ふたりのバランスが崩れていくのは時間の問題なのである。誰も傷つけないことが条件であったはずのこの恋に、あなた自身が深く傷ついていくのである。  同じ家庭を持っているとはいえ、その家庭の実情はそれぞれだ。あなたは夢にも思わなくても、彼には家庭を捨ててあなたとやり直す覚悟があるかもしれない。また、あなたのことが原因で、彼は家庭からはじき出されてしまうかもしれない。特に子供が成人したあとの夫婦にはわりあい多く見られる現象だ。そこで彼に残されるのは重大な家族への責任と、あなたの存在だけである。そうなったときあなたは自分の家族を捨てて彼と共に生きることを選べるだろうか? 彼の人生をめちゃくちゃにしてしまったという自責の念に苛まれながら、やはりもとの場所に逃げ込むのではないだろうか?  また、あなたの想いが彼以上に募ってしまうということも考えられる。あなたはその抑えきれない情熱を夫や家族に隠し続ける心の負担に、間違いなく追い詰められていくだろう。その精神的なダメージは、この恋のもたらす喜びを遥《はる》かに上回る厳しいものだ。あなたに離婚する覚悟ができ、すべてを失う決心をしたとき、彼はあなたを、あるいはあなたと子供を受け入れる意思を持っているだろうか? もしそこで拒絶されたとき、あなたに立ち直る術が残されているだろうか?  今、あなたは彼とふたりで落ちていく快楽に酔いしれているかもしれない。けれど大人の恋愛に、「今楽しければいい」などという論理は通用しない。ふたりの根本にある現実逃避の一歩先には、消耗しきった彼とあなたの姿がある。相手の年齢や未婚、既婚にかかわらず、決して軽い気持ちで足を踏み入れてはならない恋だということを忘れないでほしい。そして大恋愛の末に幸せな結末を迎えるというようなシナリオは、どこにもないということ。  この恋をしているあなたに必要なのは、彼と話し合うことでも、夫と話し合うことでもなく、あなたの中だけでこの恋のすべてを決断することである。様々なストレスを引き受けて、あなたのまわりの全員を不幸にする覚悟をもってこの恋を続けていくのは、終わらない旅を続けるようなものだ。あなたはいずれヘトヘトに疲れ果て、この恋が素晴らしいものであったことさえ忘れてしまうだろう。そうなる前に、あなたは何らかの形でこの恋に決着をつけなくてはならないのだ。  あなたが決断を先に延ばせば延ばすほど、あなたの愛する人たちも、もちろんあなたも、決定的な傷を負うことになる。その場の感情に流されず、自分自身の人生を冷静に見つめて、地に足のついた思考をもつことが何より大切である。 [#改ページ] Story 11  W不倫の彼に離婚の可能性はないと言われて  私は26歳、結婚して1年半になります。主人は28歳、子供はなく共働きです。私が拒否するようになり、主人とはもう1年以上SEXはしていません。  彼とは4か月前にパーティで出会いました。彼は29歳、そのとき彼が3週間後に結婚する予定だということも、知っていました。でも、ひと目見た瞬間、彼を好きになってしまいました。今までは彼女がいると知った時点で、感情が醒《さ》めていたのに。彼もその場限りで終わりたくない、と帰りにドライブに誘ってくれたんです。そこで私もすでに結婚していることを話しました。それから、彼が結婚するまでの3週間は週2、3回のペースで会い、2度泊まりに行きました。私の気持ちはもうどうにもならないほど、彼を愛していました。  今彼とはメールと電話で連絡し合っています。会えるのは月に1、2度です。メールにつらいとか寂しいとか、不満ばかりを入れるようになり、そのことが彼を苦しめることになりました。彼から3日間連絡が途絶え、私は心配で眠れなくなりました。  そして彼から「これからは友達としてつきあう努力をしよう」と言われたのです。  私が「なぜ、友達なの?」と聞くと「今の俺には、君を完全に失ってもいいと思える勇気がないから」と……。私は「友達になるくらいなら、きっぱりと忘れる努力をする」と伝えました。  その2日後、彼に言われたのは、「俺は今の妻と一生やっていこうと決めて、結婚した。その後君と出会って好きになったけど、一度決めたことは変えられないから別れることはできない。君とは結婚できないけどそれでもいいのか? 2人の関係がばれたら終わりにしなくてはいけないけど、それでもいいのか」ということでした。私は彼の口から、はっきりと離婚の可能性を否定され、ショックで何も言えませんでした。  主人がいる身でこういう気持ちになるのは、変かもしれませんが、彼と出会ってから主人に手を握られるのも、話をするのも苦痛になり、1日でも早く主人と別れたい、とまで思っています。でも、彼と結婚するためにではなく、自分の気持ちが他の男性を受けつけなくなっただけなのです。彼と会えなくなることがつらすぎる、と感じ、彼とこれからもつきあっていくことを決めました。  今でも気持ちの整理ができたわけではなく、ひとりになると涙が出てきます。これから先、奥さんに子供ができたときのことを考えると、怖くてやりきれない気持ちでいっぱいです。  私が彼に「さよなら」を告げるときは、つらいという気持ちが、彼と一緒にいたいという気持ちを超えたときだと思ってます。もう主人とはどうにもなりません。愛情がないのです。これから離婚話を進めていこうと思っています。彼とのことは内緒にして……。できれば、みかさんのアドバイスを頂きたいと思います。 [#地付き](山口県・26歳) [#改ページ]  彼の家庭を壊す権利は、あなたにはありません  お互いに家庭を持っている者同士の恋愛、といっても、お互いに子供がいないというあなたの状況は、比較的ライトなケースと言えます。そして、あなたの結婚生活は一年半とまだ浅く、その一年半のうちでご主人とは「もう一年以上もSEXしていない」というのですから、夫婦生活は何らかの大きな問題を抱えているのでしょう。  もともとあなたには、ほかの男性に目を向ける要素がじゅうぶんにあったのです。四か月前に、彼と出会って恋に落ちたというよりも、恋に落ちる相手を探していたといったほうが近いかもしれません。そのターゲットとなったのが、三週間後に結婚を控えた彼。彼のほうとしてみれば、結婚を目前にして、男としてこのまま終わってしまうのではないかというような焦りがあったところへ、絶妙のタイミングであなたが現れた。独身女性ならいろいろと問題がありそうで手は出さないけれど、既婚者のあなたなら後腐れがない。彼は、独身最後の花を咲かせるような軽い気持ちで、あなたとデートを重ねたのではないでしょうか。  そして彼は予定どおり結婚し、あなたは彼に会えないつらさや募る想いをメールに書き連ねたわけです。あなたにはもう遅すぎる忠告ですが、不倫の恋にメールほど危険なツールはありません。電子メールは携帯電話にくらべても、格別パーソナルな連絡手段です。それだけに、彼と会ったり電話で話したりすれば決して口に出すことのできない心の奥底の本音まで、メールには書けてしまうからです。  そのメールにあなたが「つらいとか寂しいとか不満ばかりを入れるように」なったのですから、彼は急に怖くなったのです。彼があなたに対して恐怖感を抱くのも当然です。あなたとつきあいはじめたのはほんのその場の流れのようなものだったのに、今では自分がこれからつくり上げていこうとする大切な家庭をおびやかすかもしれない存在なのですから。  彼はおそらく、はっきり別れを告げてあなたが逆上することを恐れて、「友達としてつきあう努力をしよう」と言ったのです。それに対してあなたが「友達になるくらいなら、きっぱりと別れる努力をする」と答えたのは、彼のために自分は身を引こう、というような殊勝な気持ちからではないでしょう。  あなたは、彼に「女」として扱われなくなることが耐えられなかったのではないですか? あなたは彼が自分をセクシュアリティのある女として扱ってくれたことに対して恋心を募らせたのです。だからあなたにとって、彼とのセックスのない関係は生き地獄のようなもの。だからこそ彼の「友達」という言葉に過剰に反応し、腹が立ったのです。  その後、あなたのメールがさらに彼を追い詰めたのかどうかは定かではありませんが、二日後、彼は「妻と別れることはできない。ばれたら終わりにしなくてはならないけど、それでもいいのか」とあなたにはっきりと告げています。二日前のやり方ではあなたは別れてくれないと悟ったのでしょう。ここであなたは「彼の口からはっきりと離婚の可能性を否定され、ショックで何も言えなかった」と書いていますが、彼に離婚の可能性がないことなど最初からわかっていたことではありませんか?  あなたの結婚はすでに破綻《はたん》していても、彼の家庭はまだスタートしたばかりです。あなたの離婚と、彼とのつきあいはまるで関係ないところで進められるべきこと。あなたは彼への恋心と、夫への嫌悪をごちゃまぜにしてはいけません。  あなたがこれからご主人と離婚の話し合いをしていくことに何の異論もありません。「手を握られるのも話をするのも苦痛」な相手と暮らしていくなんて、想像しただけで身の毛がよだつほどつらいことです! まだ若く、たくさんの可能性を秘めたあなたがそんな生活に耐える義務などどこにもありません。  もちろん、「彼とのことは内緒にして」かまわないと思います。すでにご主人が気づいているのなら別ですが、ご主人を傷つけ、あなたの立場が不利になるようなことをわざわざ告白する必要はないでしょう。あなたにとっていちばん有利な形で離婚を進めてください。けれど、そこに彼を巻き込んではいけないのです。何度も言うようですが、彼と出会う前からあなたの結婚生活は崩壊していたのです。あなたの離婚と彼の存在はまったく無関係なのです。  今のあなたに心の支えが必要なのはわかります。けれど、彼の家庭をあなたの家庭と同じように壊す権利はあなたにはないのです。今は、ご主人との離婚のことだけを考えるようにしてください。離婚が成立すれば、あなたの切羽詰まった気持ちも少し楽になるでしょう。そしてあらためて、あなたにとって彼の存在がどれだけのものなのか、自分の心と向き合って考えてみてください。  それでもなお、本当に彼が必要だと思うのなら、結婚の可能性などかけらもないことをちゃんと理解した上で、新たに彼と不倫の関係を持つしかないでしょう。もちろん、彼がそれを承諾すればの話ですが。けれど、無事離婚が成立して自由になったあなたの前には、今までとまったく別の道が広がっていると思いますよ。 [#改ページ] Story 12  不倫の彼は理想のタイプ。今、夫との子供を妊娠中  私は現在25歳で、妊娠10か月を迎えたばかり。1つ年上の主人とは結婚3年目。3年半つきあって大恋愛の末、一緒になりました。  不倫の彼と出会ったのは、2年前、結婚と同時に臨時職員として配属された仕事先でした。彼はその時40歳。妻と女の子2人を持つ家庭の主でした。自分の意見はたとえ相手が上司であろうと、はっきり言う人で、まわりからも一目置かれていました。  彼は、私の以前から描いていた理想にぴったりの人でした。昔から40〜45歳くらいの人ばかり気になってしまうのです。�父親と同じタイプの人�に惹《ひ》かれるのかもしれません。仕事場に配属された日から彼のことを好きになりました。いつかは抱かれたいとも思っていました。  ある日、彼が冗談で「ホテル行くかあ」と言ったので、軽く「いいですよ」と返事したら「じゃあ……」ということになって、なんなく私の想いは現実となりました。自分の気持ちなど表には出さず、次の約束もねだらないで、後腐れのない女を演じました。  でも、2回目が来たのです。私はもう好きな気持ちが大きくなりすぎて「会いたいと思ったときに会いたい」と言いました。彼は意外にも、私と同じ気持ちだったことを話してくれました。そして、お互い家庭を壊さずに�恋人�という形で真面目につきあっていこうということになりました。  それから2年間、週1回のホテルデートを重ねてきました。そうしているときに私は主人との子供を妊娠したのです。最初の1年間は幸せでした。毎日仕事で会える、帰りには時々待ち合わせてお茶を飲む、週末はホテルと。けれども、つきあう時間が長くなるといろんな変化が出てきます。電話が減る、お茶の約束も減る、彼の欠点が見えてくる……。  妊娠してから彼との距離が大きくなってきました。会えないし、共通の話題がない。彼は「1年くらい待つ」と言いました。  今月赤ちゃんが産まれます。私は今、分岐点にいます。別れの言葉はまだ言えない。けれど、このままフェイドアウトして忘れていくことはできそう……。怖そうに見える彼から、もっと言葉や態度で可愛がってもらいたかった。でも、彼はどちらかというと、安らぎと甘えを私に望んでいたみたい。  今は一方的な彼の甘えに疑問を感じます。まだすごく好きだけど。セックスがたまらなく好き。そのときだけは、彼が私を�女の子�として甘えさせてくれるから。だから、セックスをしなくなった今、子供を産んだあと、またセックスだけにしがみついて悩むのか? と思うと、やっぱり潮時かなって思えてくる。最初の頃のように尊敬の目で見れなくなっていることも、疲れてしまったということも事実です。  彼とつきあうことで「主婦のようにはまったく見えない」と、まわりの人たちに言われて嬉《うれ》しかった。けれども、私には主人がいるし、何といっても大切なのは家庭だとわかっているから……。  私の状況をよくわかっている義姉《あね》は「とりあえず出産して、自分の気持ちがどう変化するか待ってみよう」と言っています。  主人とは、結婚相手として申し分のない人だったので結婚しました。これからもっといい男になっていくと思います。昔から中年の妻子持ちにしか興味が湧かず、若い人は主人だけ。やっぱりファザコンなのでしょうか? [#地付き](徳島県・25歳) [#改ページ]  子供とご主人を精一杯愛することが、最後の分岐点です 「お互い家庭を壊さずに恋人という形で真面目につきあっていこう」。あなたの恋のテーマはまさにこの言葉に集約されています。けれど、あなた方ふたりのしていることは、この言葉とは遠くかけ離れた稚拙なやりとりのように見受けられます。  別にわたしは結婚したら恋はしてはいけないなどと言うつもりはまったくありませんが、あなたの行動はとても「大恋愛の末一緒になった」ご主人のいる女性とは思えないくらい軽々しいものです。理想の男性だとひと目で好きになり、「いつか抱かれたい」と思いながらチャンスを待ち、ホテルに誘われたら即OK。彼と深い関係になることに対して、あなたの中に家族への罪悪感や葛藤《かつとう》は何もなかったのでしょうか。  ここであなた方ふたりが話し合った結果、例の「お互い家庭を壊さずに恋人という形で真面目につき合っていく」ことにしたわけですが、これがまたコテコテの理想論です。お互いに家庭を持ちながら、その家族を裏切って不倫の恋をすることが、そんなきれい事で片付くと本気で思っているのでしょうか? わたしが『愛人の掟《おきて》』の中で書き続けていることは、この恋に足を踏み入れるには、お互いに相当の覚悟をもって臨まなくてはならない、ということです。決してあなた方のような軽い気持ちで入ってくるような甘い恋ではないからです。  そんな中、あなたはご主人の子供を妊娠。ここでも普通なら、生まれてくる子供のことやご主人のことや彼との関係について、深く考えさせられるものではないでしょうか。それなのに「妊娠してからは彼との距離が大きくなった」「会えないし、共通の話題がない」などと言っている。あなたには妻としての自覚も、母親になる自覚も感じられません。  また、そこでわからないのが彼の対応です。「一年くらい待つ」という言葉には、どういう意味が込められていたのでしょうか。妊娠したあなたが出産を終えるのを待つ、ということですか? 子供さえ産んでしまえば、またセックスができるから? あなたのほうも、あとで「子供を産んだあと、またセックスだけにしがみついて悩むのか?」と言っているところを見ると、どうもそのようですね。  あなたは妊娠十か月になってはじめて「私は今、分岐点にいます」と書いていますが、あなたは妊娠を知ったときすでに分岐点に立っていたのです。かけがえのない子供の存在ができた時点で、あなたは彼から離れていくことを決心するのが当然の行動だったと思います。もっと遡《さかのぼ》れば、彼と出会って不倫の恋をはじめるかどうか、という分岐点もあったのですから。  彼のことを「最初の頃のように尊敬の目で見れない」のはごく当たり前のことです。彼は最初からあなたの理想の男性などではなかったのですから。本当は「理想にぴったりの人」なんてどこにもいないのです。「潮時かなと思う」「疲れてしまった」のなら、もういいではありませんか。 「とりあえず出産して、気持ちがどう変化するか待つ」などと気の長い意見に耳を傾けている場合ではありません。あなたの「何といっても大切なのは家族」という言葉が真実ならば、もう二度と彼には会わないことです。そして、生まれてくる子供と、「結婚相手として申し分ない」ご主人を精一杯愛すること。これがあなたの最後の分岐点です。ここで歩む道を間違えれば、あなたの大切な家族、そして彼が守っていかなくてはならないもうひとつの家庭までも傷つけることになります。  あなたは男性に対して、自分の中に確固たる理想形を持っているようですね。「彼は私の昔から描いていた理想にぴったりの人」「昔から父親と同じタイプの人を好きになる」などの表現から、あなたがまだ少女っぽい理想論にとらわれていることがわかります。けれど、本物の恋愛というのは、理想の男性を見つけることではなく、ふたりでつくり上げていくものなのです。  恋愛も、そして子供も、理想論では育てられません。生まれてくる子供との生活の中で、あなたはたくさんのことを学び、成長することができるでしょう。いつも支えてくれるご主人に対しても、また別の愛情が生まれてくるでしょう。そしてあなたが本物の妻、そして本物の母親になれたときには、「やっぱりファザコンなのでしょうか?」というまるで深刻さのない悩みなど、どこかに吹き飛んでしまっていると思いますよ。 [#改ページ] Story 13  家族ぐるみのつきあいの彼とW不倫  私がこの本を読んでいる愛人の方の多くと大きく違っている点は、妻であり、母であり、嫁であるということです。  彼は私より一つ年下の28歳。上の子供の同級生の父親です。一昨年の入園式で出会いました。初めて私を見たときに惹《ひ》かれたらしく、私の子育てや人生に対する考え方を、私の友人でもある彼の妻から聞き、一層好きになったと話していました。何といっても、子供を介して親しくつきあっていた友人の夫だったのですから、恋愛関係になろうなどとは思ってもいませんでした。  昨年、彼の家族と私の家族で一緒にカラオケに行く機会があり、そのときに、急に抱きしめられキスされたのです。告白もされました。私は彼に対して半信半疑だったのですが、その後、何度か夫婦4人でお茶する機会があり、彼が人生観などを熱っぽく話す姿に惹かれていきました。それから、2人で逢瀬《おうせ》を重ねるようになりました。  彼の妻や子供たち、自分の夫を裏切っている罪悪感やうしろめたさは、とても言葉に表せるようなものではありませんでした。暗い表情をしている彼の妻を見ただけで、吐いてしまったこともありました。  そんなとき、彼は彼女に離婚を切り出していたのです。何てバカなことをと思いましたが、そんな彼の行動が嬉《うれ》しかった。気持ちが伝わってきたのです。そして、私の心を堅固なものにしました。——彼とは別れない——と。  ただ、彼が子供たちを深く愛してることを、私自身とてもよくわかっていたから、今彼がすべてを私のために捨てても、私は100%幸せにはなれないだろうとも思いました。彼の妻は離婚を拒んでいるし、たとえ愛情にあふれた毎日ではなくても、何とか家族として生活していけるのなら、子供たちのためにも家を捨ててほしくないと思うのです。  夫の両親の冷たい視線を浴びながら、10日に1回だけ、子供が寝てから数時間会えればいいほうで、あとは週に1、2回電話で話せるだけ。この限られた時間のなかで、私たちは精一杯愛し合ってる。  この関係がばれたらどんなことになるか、それを考えると震えるほど怖かった。でも今は、そのときが来たらすべてきちんと受け止めようと、覚悟を決めています。いつか子供たちが自分の力で歩き出せるときが来たら、そのときは胸を張り、太陽の下で手をつなげる関係になろうと互いに思っています。  私の家庭については触れてきませんでしたが、最近になって、夫につきあっている女性がいることに気づきました。壊れた家庭の事実を受け止めています。寂しくても彼には頼れない。彼の前では決して泣かないと心に決めても、そうはできないときもあります。まだまだだなと思います。 [#地付き](埼玉県・29歳) [#改ページ]  彼を心の支えに、妻、そして母親を立派にやり遂げて  お互いにそれぞれの家庭があり、そして幼い子供たちがいて、その上家族同士のつきあいもある。いわゆる「ダブル不倫」の中でも、あなたの置かれている状況は最も難度の高いケースではないでしょうか。  あなたが「とても言葉に表せるようなものではない」と書いている家族への罪悪感やうしろめたさは壮絶なものだと想像できます。その大きさは、あなたの彼を想う気持ちの大きさに比例しているのではないかと思います。ここまで不利な条件が揃った中で、あなたも、彼も、とても真剣に愛し合ってしまった。でも、この恋をはじめたのは彼のほうです。  もし、彼のほうから積極的な行動や告白がなかったら、あなたにはこの恋をはじめることはできなかったのではないでしょうか。あなたはとても常識ある賢い女性であり、正常な感覚の持ち主です。気軽なゲーム感覚で夫以外の男性と関係を持つことなど、決してできる人ではありません。おそらく、あなた自身も、自分の人生にそんなことが起こるなどということを想像もしていなかったのではないでしょうか? この恋はあなたにとって完全な予想外の出来事だったのです。  そのあなたの心をここまで恋に向かわせたのは、やはり彼のアプローチが非常にあなたの胸を打つものだったからです。それは、彼が「私の子育てや人生に対する考え方を聞いて一層好きになった」という部分です。きっかけは彼のひと目惚《めぼ》れだったとしても、それだけでは彼もここまで積極的になれなかったと思います。男性が家庭や子供を持つ女性を愛する場合、彼女の子供に対する接し方や人生観など、ひとりの女性としてだけでなく、人間として、母親として惹かれていくのが本物です。その真摯《しんし》な姿勢にあなたは心打たれたのです。そのキューピッド役を担っているのが彼の妻だというのが皮肉なところですが。  彼が奥さんに離婚を切り出したとき、あなたが「何てバカなことを」と思う反面「彼の行動が嬉しかった」と感じているのは矛盾しているようでとても素直な気持ちだと思います。あなたの立場にある女性なら、誰もがそれに似た感情を持つでしょう。けれど彼の行動が、あなたをさらに深刻な悩みに追い詰めたことは確かです。  あなたの「震えるほど怖い」その恐怖の源は、ふたりの関係が双方の家族に露見することです。あなたは「そのときが来たらすべてきちんと受け止める」とありますが、あなたの「覚悟」とはどんなものなのでしょう。まだ小さな子供たちを巻き込んでもお互いに離婚をして一緒になるという覚悟でしょうか? それとも、その時点で彼との関係はきっぱり清算するという覚悟でしょうか? あなたの「覚悟」は、やはり後者でなくてはならないと思います。  子供は何があっても両親揃って育てるべき、などというありきたりの倫理観を押しつけるつもりはありません。ただ、今の状態で、まわりの世界をすべてねじ曲げるような形で一緒になることが、あなたと彼にとって幸福とはどうしても思えないからです。それは、あなたのほうがよくわかっていることかもしれませんね。  ご主人にもあなたのほかにつきあっている女性がいたことは、「壊れた家庭の事実」ではありますが、あなたの気持ちを楽にする材料でもあると思います。今こそ、彼が好きになってくれたあなたの子育ての姿勢や人生観をもう一度しっかり立て直し、妻、そして母親として生きるときなのです。その上で、あなたと彼の真剣な愛情がずっと色あせずに続いたのなら、いつか本当に「太陽の下で手をつなげる関係」になれるときが来るかもしれません。  それまでは、彼を心の支えにして、妻、そして母親を、立派にやり遂げてみてください。それがあなたの、彼への最上の愛の形になるのですから。 [#改ページ] 難易度F[#「難易度F」はゴシック体] あなたに離婚歴がある場合  近頃では、交際する女性に離婚歴のあることを気にする男性はほとんどいなくなった。男女共に「バツイチ」が普通のこととしてとらえられるようになった今、あなたが恋愛や結婚をするにあたって、離婚歴が障害になることは少ないだろう。  あなたの結婚生活は何らかの形で終局を迎えた。そして再び独身に戻っている。ここで、あなたの生活を大きく左右するのはやはり子供の有無かもしれない。  まず、離婚歴はあるけれど、子供はいないあなたは、結婚前とほとんど変わらない生活をしているだろう。確かにその経験はあなたの中に様々な形で残っているに違いないが、あなたの本質自体は何も変わらないはずだ。あなたが独身男性と恋愛をすることについては、独身時代とほとんどまったく変わらないといっていいほど問題はない。ただ、バツイチのあなたが不倫の恋をすることになると、やはり独身女性とは違った問題が出てくる。  あなたが離婚歴のあることを隠すことなく、彼もきちんと認識している場合、彼があなたを不倫の恋の相手に選んだ理由に「あなたがバツイチであること」が大きく影響している可能性がある。なぜなら、家庭を持つ男性にとって、独身女性とつきあうよりも離婚歴のある女性とつきあうほうが、ずっとリスクが少ないからである。  あなたには一度結婚をした経験があり、それは離婚という形を迎えている。あなたは結婚生活の実態もわかっているし、離婚の大変さも痛感しているだろう。その事実が、既婚者の男性たちを安心させる。結婚に少女のような夢を見ることもなく、離婚することの困難さを知ったあなたは、家庭の外でちょっと恋愛ごっこをしてみたい男性たちにとってはこの上ない存在なのだ。独身女性とつきあうと結婚を迫られそうで面倒だけれど、バツイチのあなたなら後腐れがないと考える男性はたくさんいるのである。  ここまではあなた自身には何の責任もないことだ。問題は、あなたが不倫の恋をはじめた動機にある。今あなたは結婚そのものに幻滅していたり、もうしばらく結婚のことは考えたくないと思っていたりすることで、あえて結婚の可能性のある独身男性を遠ざけているようなことはないだろうか? 彼だけでなく、あなたのほうも無意識に「楽な」妻子持ちに目を向け、比較的安易に不倫の恋をはじめてしまう傾向はないだろうか?  しかし、どんな事情があっても、不倫の恋は決して軽い気持ちではじめたりしてはならない。その恋が進むにつれ、最初の意識はどこかへ消えてしまって、本当の不倫の恋のつらさにはまり込んでしまう女性は実に多いのだ。そして、自分のことだけでなく、彼の家族の立場に立って考えてみてほしい。あなたにはそんな気持ちはなくても、彼の奥さんにとって自分の家庭をおびやかす存在であることに変わりはないのだから。  相手にとってあなたに離婚歴があることがどんな心理状態をもたらすのか、そして自分自身の状態を客観的に見つめた上で、本当にこの恋があなたにとって必要なものなのかどうか、もう一度よく考えてみるべきである。  あなたがそれでも彼との関係を続けていきたいと強く願うのなら、あなたは独身女性が不倫の恋で味わう以上のつらさに耐える覚悟をしなくてはならない。そして、あなたがそこまでして手に入れたい彼の愛情は、ほんの遊び心かもしれないのだという事実を常に頭に置いておくことだ。彼と晴れて結婚できる日が来るなどと期待してはいけない。あなたの恋の難易度はあなたが考えている以上に高いのだから。  あなたと前夫との間に子供がいる場合は、あなたが引き取ってひとりで育てているというケースが圧倒的に多いだろう。世間でよく言われる「シングルマザー」という響きには、女として恋をすることも忘れてひとりで必死に子供を育てているという悲壮なイメージがあるが、最近の「シングルマザー」事情はもっと華やかである。  夫の束縛に耐え続けることもなく、やりがいのある仕事をしながら、自由に愛する子供を育てている、そんなあなたのような存在を魅力的な女性ととらえる傾向が強くなった。あなたにすでに子供がいることに何の抵抗もなく、恋愛対象として考える男性たちは意外なほど多いのだ。相手が独身男性の場合は、多少の反対はあっても、ふたりの愛情さえ確かなら乗り越えていけるだろう。しかし、相手がすでに家庭を持っている男性の場合は、あなたに待ち受けるのは楽しく幸せなことばかりではない。  彼はかつてのあなたのように家庭を持ち、夫婦関係を維持している。そして今のあなたと同じように子供と共に暮らしているケースが多いだろう。そんな彼はあなたに子供がいることを知っても、抵抗を見せないばかりか、わざわざ子供に近づくふりをしてアプローチしてくるかもしれない。自分の子供と遊んでくれる彼を見て、あなたは思う。「何て優しい人なのだろう、この人とならきっと温かい家庭がつくれるはずだ」と。  ところが、あなたはこの希望的な推測に落とし穴があることに気づいていない。あなたの前で優しい父親ぶりを見せている彼は、自分の家庭でも同じように優しい父親をやっているのだ。彼はあなたが、つきあう男性に対して「子供を大切にしてくれる人」という揺るがない条件を設定していることを知っている。そのポイントさえ押さえれば、案外簡単に落とせるだろうという下心もある。ある意味、あなたの弱い立場を彼はわかって利用しているのだ。もしあなたが独身で、子供もいない状態なら、彼は近づいてくることはなかったかもしれないのだから。  だからあなたがまず気をつけなくてはならないことは、ひとりの男性が子供を持つ自分を愛してくれたという事実を過大評価しないことである。子供を抱えて必死にひとりで生きようとしているあなたに優しい手を差し延べることは、既婚男性にとってそんなに難しいことではないのだ。なぜなら、あなたの子供は彼にとって何の責任もない存在なのだから。  また、彼の家庭に子供がいない場合は、彼自身が子供を持ちたいという願望からあなたに目を向けている可能性が大きい。妻の仕事や何らかの事情で、自分の子供を抱くことができなかった彼は、あなたの子供にまるでお父さんのように接してくるだろう。  この恋でまずあなたが頭に置いておかなければならないのは、彼の子供を産まなかった、あるいは産むことができなかった妻の立場である。もし彼の奥さんに露見した場合、彼女を立ち直れないまでに傷つけることになる。彼女は子供を持つあなたと対等な立場ではいられないのだから。あなたが彼の妻の立場だったらどんな苦しみを持つのか、冷静に考える必要がある。  そして、たとえ彼が望んだとしても、彼のことを子供に「パパ」と呼ばせるような真似をしてはいけない。ただでさえ、あなたの子供は、本当の自分の父親と離れ離れになることを余儀なくされている。これ以上、幼い心に消えない傷をつけることは、親であるあなたが絶対の責任を持って回避しなければならないことだ。一度は本当のパパとの悲しい別れを経験している子供に対し、もう二度と「パパ」との別れなどあってはならないのだから。  子供を持つあなたが家庭を持つ彼と恋に落ちてしまったことは誰も責めることはできない。いくら強い母親でも、誰かに抱きしめてもらいたい夜は必ずあるのだから。けれど、その甘いときめきにいつまでも浸っていられるほど、あなたは無自覚でいられないはずだ。あなたは今、自分のことよりもまず、愛する子供のことをいちばんに考えなくてはならない立場にいる。それは、ただ単純に、子供を可愛がってくれる男性ならいいというような問題ではない。子供がよくなついているということを、自分が彼と別れられないことの理由にする女性は多いが、それは本末転倒というものである。  本当に彼との関係が安定したものになるまでは、なるべく子供の前で恋愛はしないことだ。あなたが恋愛に一喜一憂する姿を、いちいち子供に見せる必要はどこにもないのである。ましてや相手に家庭があり、将来あなたと家族になる見込みがゼロに近い相手を必要以上に家庭に近づけることは、子供にとって災難でしかない。そして、子供がいくら幼くても、今のあなたの事情と彼との関係をなるべく正しく伝えておくことが必要になる。  離婚歴のあるあなたにとって不倫の恋は、一時的にあなたの寂しさを癒《いや》すことはあっても、それが真の幸せにつながることはまずないと考えたほうがいい。その現実を受け止めた上で、通常の恋愛の何倍も厳しい目をもって、彼の目的や人間性を的確に判断する努力をすることだ。  今のあなたにとって大切なことは、自分の熱情に酔いしれることではなく、愛する者の幸せを第一に考える真摯《しんし》な姿勢なのである。 [#改ページ] Story 14  独身の彼より不倫の彼のほうが優しくて  私は24歳でバツイチ、4歳の子供を育てています。そして、同い年の彼氏と、35歳の不倫関係にある彼とつきあっています。彼氏とはつきあって3年、不倫の彼とはつきあって2年になります。不倫の彼には、専業主婦の妻と2人の子供がいて、「結婚は120%できない」と言われています。そして、彼氏のほうは、「自分の親のこともあるし、反対する人が多すぎて疲れる。いつか別れなくてはならないときが来るだろう」と言っています。  不倫の彼は、私の会社の社長です。彼氏よりも一緒にいる時間が長く、何かの記念日のときも一緒にいてくれます。「すべて僕にまかせておきなさい。信じて一生ついておいで。君を幸せにしてあげるから。もちろん君の子供もね」といつも言ってくれます。確かに本当です。彼氏以上に私と子供を大切にしてくれる。しかし、行きすぎた行動もあります。私の持ち物や電話帳を勝手に調べたりするのです。それで彼氏のことを知りました。「彼氏よりも絶対におまえを幸せにしてやるから別れてくれ」と言うのです。私は、彼氏のほうが大切だということを伝えたのですが、「おまえの気持ちが100%僕に向いてくれる日が来るのを信じてがんばるよ」と言って必死につなぎとめようとしています。彼氏も同じように思ってほしいと願っています。  彼のやさしさ、思いやりにすがって、私は彼氏との心のつながりのない寂しさを埋めているのだと思います。2人とも別れるしかないと思ったのですが、愛人はやめられても、彼氏とは別れたくないのです。すべてを失くすことが怖いのです。彼氏には体も時間も捧《ささ》げています。0.1%でも希望があるから。しかし、愛人のぬくもりは、心に安らぎを与えてくれます。  私は、子供と彼氏と幸せになりたいのです。ただそれだけなのに、私と子供のどこがいけないの? どうして愛人のほうが大切にしてくれて、別れようとしている私を止めるの? [#地付き](千葉県・24歳) [#改ページ]  恋人のことよりも、まずは子供のことを考えて  あなたはひとりで四歳のお子さんを育てながら、ふたりの男性と密なつきあいをしています。育児や家事や仕事をこなしながら、一体どこをどうやったらそんな時間と体力がつくれるのだろうと、そのパワーにまず感心してしまいました。  あなたが何人の男性と同時につきあおうと、それは自由です。でも、それをすべて子供の前でやってみせるのはちょっとどうかと思います。今あなたは同時期にふたりの恋人を子供に紹介しているということですよね。四歳といえば、もう大人の話していることはすべてわかりますし、あなたとその男性たちがどういう関係かも幼いなりに感じ取っているはずです。あなたがつくり出しているこの状況が、子供の混乱を引き起こすものであることは明らかです。  そして、あなたのふたつの恋愛についてです。結論から言いますが、そのどちらにも将来の可能性はありません。「結婚は120パーセントできない」と明言する妻帯者の彼だけでなく、あなたが「0.1パーセントでも希望がある」と信じている独身の彼氏にも、あなたとの結婚の可能性はゼロです。周囲が反対するからではなく、彼氏自身にその気がないからです。  あなたに対するふたりの男性の態度は、彼らの置かれている状況が違うだけでまったく同じものなのです。ふたりとも、あなたとの将来は考えられない、ということです。もしあなたが望むように、独身の彼氏が本当にあなたとの将来を考えているなら、いくらでも可能性はあるのです。「自分の親のこともあるし、反対する人が多すぎて疲れる」なんて、あなたと結婚できない理由の切れ端にもならないことです。これは彼があなたと結婚を考えられないことの単なる言い訳にすぎません。  あなたの、「どうして愛人のほうが大切にしてくれるの?」という疑問には、簡単に答えることができます。妻帯者である彼には、あなたと子供に対する責任から逃れる明確な理由があり、独身の彼にはそれがないからです。独身の彼にも、妻帯者の彼と同じように「結婚は120パーセントできない」と言いきれるだけの理由さえあれば、あなたや子供をもっと大切にしてくれるでしょう。責任のない相手には、いくらでも甘やかな言葉や態度で接することができるものですから。  あなたが今考えるべきことは、ふたりのうちどちらが自分を愛してくれているかなどではなく、子供の家庭環境を整えることです。将来、正式な父親になる可能性のないふたりの男性を交互に会わせるなどという混乱極まりない状態を早く解決してあげることです。どんな形でもかまいません。一日も早く、今の状況を改善してください。「私と子供のどこがいけないの?」などと被害者意識に浸る前に、今自分のしていることをよく考えてみてください。それでも、あなたにいけないところなど何もない、と本気で思いますか? 「すべてを失くすのが怖い」とあなたは言いますが、このふたりの男性と別れたらあなたは本当に「すべてを失う」のですか? とんでもありません! あなたには愛する子供という絶対的な存在があるではありませんか。ふたりの男性を失うことより、子供の信頼を失うことのほうが、どんなにか大きなことでしょう。  あなたの若さや美しさやバイタリティあふれる精神は独身の頃とまったく変わらないかもしれませんが、もうあなたはひとりの身ではないのです。あなたの傍らには今もこれからもずっと、常に大切な子供がいるのだということを忘れてはなりません。あなたがいちばん気にしなくてはならないことは、自分の恋の行方より、子供が心身ともに健やかに育っているかどうか、なのです。  母親にも恋をする権利はもちろんあります。けれどそれは、自分のことよりもまず、子供の幸せを最優先に考えるという基本姿勢があってのこと。それには、あなたと子供をすべて受け入れてくれる男性を選び抜く目が必要なのです。 [#改ページ] Story 15  お金持ちの彼に頼りきって�どっぷり愛人�してます  私は現在27歳で技術職に就いてます。彼と知り合ったのは2年ほど前です。その頃はスナックのバイトをしていて、彼はお客で相談にのってくれるおじさんというかんじでした。結婚していることは会話のなかで何気なく伝えられました。  2回目に会ったとき「君の好きなものを食べさせてあげるよ」と食事に誘われました。別にタイプじゃなかったので、行きたいとも思わなかったのですが、「車はマーク㈼]かジャガーのどちらで迎えに行ったらいい?」と言われ、�1度乗ってみたいなぁ�という軽い気持ちで誘いにのりました。20歳も年上というはじめての経験にわくわくして行きました。とてもお金持ちなことに驚きました。優しさや頼れることにも。  年下の彼氏がいたのですが、おやじ教にはまり、思いきり傷つけるような形で別れ、彼とつきあいはじめました。そのときはひとり暮らしだったので、つきあって1か月くらいで合鍵《あいかぎ》を渡し、すぐ半|同棲《どうせい》になっちゃいました。自分のせいで彼氏と別れたということがすごく嬉《うれ》しかったみたいで、バッグ、宝石、服などたくさん買ってもらいました。海外旅行は2年間で3回、国内も合わせると計15回も!  彼はすごく束縛する人なので、ばれないようにがんばって暇をつくっては、男友達と遊んでました。浮気も2回しちゃいました。適当に遊んでいたんですが、車を買うお金を立て替えてもらったり、私の仕事で、どうしても保証人が必要になったときに代理人になってくれたりと尽くされて、まさにおんぶにだっこ。それで最近は遊んでませんが、こんな風にどっぷり愛人に浸っています。  以前はずっと一緒だから愛人でもいいやなんて思っていたのですが、彼に離婚はないし、私は年とってくし、母親の面倒もみなくちゃいけないし……。なぜか今、20代後半の男の子がすごく魅力的に見える。結婚は20歳のときに1度しているので、焦りはないです。でも、先を考えると、バツイチ、ババツキ、借金ツキと3つ揃った私は、ちゃんと愛人していけるのかなぁ。  彼のことは好きです。大事にしてくれるし、いろいろ教えてくれる。離婚してほしいなぁ……と思う今日この頃です。 [#地付き](茨城県・27歳) [#改ページ]  あなたなら立派に「ちゃんと愛人」していけるはず  ゴージャスでバブリーで、まるで十年前の不倫のイメージそのままの世界。それがあなたの手紙を読んだ印象です。テレビや映画の中ではよく目にする光景ですが、その当事者であるあなたの生活に触れることができて、とても興味深かった。わたしのもとには、あなたのように自分のことを「どっぷり愛人」と潔く言いきれるような女性からの手紙はほとんど届きませんから。 「マーク㈼とジャガーのどちらで迎えに行ったらいい?」。あなたの恋はスタートからして何ともドラマティックです。読み進むと、彼という男性は、あなたのような「愛人」を持つことに心底慣れているのだということがわかります。彼の年齢と「すごいお金持ち」であることを考えれば当然のことかもしれませんが。  まず、結婚していることを初対面の会話の中でさりげなく伝え、次にお金のかかった魅力的なデートをし、中年の男性にしか持ち得ない寛容さと包容力を見せている。そしてあなたが恋人と別れた時点できっちりと「自分の愛人」として認めた扱いをする。彼の中で「愛人」をつくるためのスタンスが完璧《かんぺき》にでき上がっているのです。いくらお金持ちで社会的地位のある男性でも、ここまでスマートにできる人はなかなかいないのではないでしょうか。  あなたは彼にとても大事にされ、豪華なプレゼントを浴びるようにもらい、必要があれば経済的な援助も受け、そして精神的にも経験的にも様々なことを教えられている。あなたの言葉どおり「まさにおんぶにだっこ」というところですね。そんな状態を羨《うらや》ましさ半分に非難する人はいるかもしれませんが、わたしはあなたが彼から一方的に「もらっている」関係ではないと思います。  どちらかが一方的にメリットを受ける関係というのは恋愛として成立しない、もしくは長続きしないものです。今もふたりに幸せな時間が続いているということは、彼もあなたから何かを「もらっている」からです。彼はきっと、あなたといられるだけで華やいだ気分になったり、活力が湧いたりしているのです。彼にとってあなたの存在自体がメリットなのですから、今のあなたはじゅうぶん彼に「与えている」のだと思います。  あなたが年下の恋人を捨てて、彼との恋愛をとったのも、単に「おやじ教にはまった」わけではなく、ちゃんと意味のある選択だったのだと思います。二十歳という若さで結婚して離婚を経験した二十七歳のあなたには、現在のような甘やかな生活が必要だったのかもしれません。女性というのは無意識のうちに、いつも今の自分に必要な相手を選んでいるものですから。 「先を考えるとバツイチ、ババツキ、借金ツキと三つ揃った私はちゃんと愛人していけるのかなあ」とあなたは書いていますが、あなたなら立派に「ちゃんと愛人」をしていけると思います。ただ、ひとつあなたが常に頭に置いておいてほしいことは、彼にとってあなたのかわりはいくらでもいる、ということです。だからこそ、彼との関係がいつ終わってもいいように、常に心の準備と危機感を持っておくことが必要になります。  彼に必要なのはあなた自身というより、「あなたのような存在」なのですから。あなたが今の存在と少しでも変わってしまったら、簡単にこの関係は終局を迎えるのです。たとえば(「今は遊んでいません」とあったので大丈夫だとは思いますが)あなたの浮気がばれたり、彼を決定的に怒らせたり、あなたにほかに好きな人ができたり。そして、あなたが彼との結婚を望むことも、当然彼との別れにつながります。  あなたはこの手紙を「離婚してほしいなあ……と思う今日この頃です」と結んでいますが、これは本心でしょうか? もし本心ならば、彼に対してこんな月並みな願望を持つことは今すぐやめるべきです。でも、わたしはあなたが本気でそう願っているとは思えません。あなたに最も似つかわしくない台詞《せりふ》ですから。  だって、あなたは彼の「愛人」という今の立場をとても気に入っているのではないですか? これが彼の「妻」となったら、今のような生活はできなくなります。責任や役割も出てくるし、現在の仕事も続けられないでしょう。そして今のように優しく頼れる彼だけでなく、いろいろな面を見ることになるのです。彼の「愛人」への接し方があるように、妻への接し方もまるで別の形で完璧にでき上がっているに違いないのですから。  彼の妻になることで、今あなたが彼から受けている「メリット」はすべてなくなると思ってください。結婚には焦りのないあなたなのですから、ゆっくりと彼以外の男性の中から結婚相手を探してください。それまでは、彼の「ちゃんと愛人」をやり遂げてください。大丈夫、そのときになってあなたを追いかけるような真似など彼は、決してしませんから。 [#改ページ] Story 16  娘の幸せが最優先。でも恋する気持ちがよみがえって  私は現在29歳のバツイチで2歳半になる女の子が1人います。実は、今とても悩んでいることがあり梅田先生にお手紙した次第です。  前夫とは5年前に結婚しましたが、3年ほどしかもちませんでした。原因は夫の暴力でした。正直、幼い娘を連れて出てくるのには、さまざまな不安がありましたが、耐えられなくなった私が家を飛び出してまいりました。仕事のほうは、結婚前から在宅のパソコン関係の仕事を続けておりましたし、何とか普通に暮らしていくくらいの収入はありました。それに、新しいアパートの近くには私の母も住んでいて、ときどき娘の面倒をみてくれますので、そういった面ではとても恵まれています。  私にとって娘は、自分よりも大切だと思える唯一の存在。このときの私は、娘がいてくれればそれでいい、一生娘のために生きていこう。そう思いました。もちろん、もう2度と恋や結婚などしないと思っていたわけではありませんが、最優先は娘で、自分のことは二の次というようなところがありました。  その後、仕事の関係などで男性から誘われることもありましたが、私と2人で遊びに行こうとか、食事に行こうというものばかりでした。まあそれが普通だろうと私も思いますが、そういう誘いは今の私にはまるで興味がないのです。子供も含めて、私のすべてを受け入れてくれるような人でなければ嫌だったからです。  ところが、ちょうど1年前、今の彼に出会いました。彼はそれまでの男性と違って、はじめて会ったときから娘のことを気にかけてくれ、最初から「(娘と)3人で会おう」と言ってくれたのです。夫と離婚してからずっと、恋する気持ちなど忘れていたのですが、彼に出会って一気にそんな気持ちがよみがえってしまいました。  彼に奥さんがいることは知っていました。そして私と同じように5歳の娘さんがいることも。でもそのときの私は彼に惹《ひ》かれている自分を抑えられませんでした。回を重ねて会うごとに、誠実で優しい彼をどんどん好きになりました。週1回くらいで私の家にも来てくれて、娘ともすごく仲良くしてくれますし、娘もなついています。私も家を出てから忘れていた安らぎや、安心できる場所を思い出したような気がします。  けれど、最近彼のいない夜には寂しくて泣いてしまうこともあります。それも娘の前で。そのときは自己嫌悪になって反省するのですが、やはりどうしようもなく彼を愛してしまっています。  彼、娘、私の3人で過ごす時間はとても幸せです。これが本当の家族だったらどんなにいいだろうと思います。けれど、その願いが叶《かな》えられることはありません。それならば、私が彼を愛することは、娘にとって幸せなことなのだろうか。私は娘を彼に会わせるべきではなかったのかもしれない。それに彼の奥さんや娘さんのことを考えると、これからの彼との関係をどうしようか迷っています。彼の家庭を壊すつもりはありません。それに私の最優先は娘の幸せです。私は彼と別れるべきなのでしょうか。  梅田先生アドバイスをお願いします。 (ちなみに彼は私より6歳年上の35歳) [#地付き](神奈川県・29歳) [#改ページ]  しばらくは彼の愛情の中で、ゆっくりと心を癒《いや》して 「私にとって娘は、自分よりも大切だと思える唯一の存在」。今、あなたの人生の中心にいるのは二歳半になるお嬢さんの存在です。この手紙の全編を通して、あなたの母親としての大きな愛情が伝わってきて、とても嬉《うれ》しかったです。  あなたの結婚生活が崩壊したのは、夫の暴力という最悪の理由でしたが、それでもあなたが愛する娘とふたりで家を出てくることができたのは、とてもラッキーなことだったと思います。あなたも自分で「とても恵まれている」と言っているように、あなたには行動を起こすための条件が揃っています。  まず、あなたに何とか自活していけるだけの経済力があったこと。子育てをしながら在宅でできる仕事を持っていること。そして理解のあるお母様が近くにいらしたこと。夫に暴力を受け、生命の危険さえ感じながら、自由になるお金がなかったり、生活を支えるだけの収入を得られなかったり、ご両親に離婚を反対されたりすることで、現状にとどまることを余儀なくされる妻たちのほうがずっと多いのです。あらゆる面で恵まれていたあなたでさえ、家を出てくることには大きな不安があり、大変な勇気が必要だったと察します。結婚生活というのは、傍からみれば別れて当然と思えるような問題を抱えていても、いざ当事者になってしまうと、もうそこから抜け出せないような閉塞《へいそく》感があるものなのです。  そのときのあなたが、前夫に対する恨みや、結婚生活に対する執着や、被害者意識も持たずに、心から「一生娘のために生きていこう」と素直に思えたのも、あなたにとって離婚という形が正しい選択であったことを証明しています。あなたとお嬢さんの共同生活には、悲壮感などかけらもなく、幸福感に満ちていることでしょう。 「私の最優先は娘の幸せ」と言いきれるあなただからこそ、彼という男性との素晴らしい出会いが訪れたのです。大変な思いをして前夫のもとを離れ、息つく間もなく新しい生活に入ったあなたにとって、彼は、本当に久しぶりにほっとできる安らぎの場所だったのでしょう。彼は、「子供を含めて私のすべてを受け入れてくれるような人でなくては嫌」というあなたの、求めている条件をすべて満たしてくれる存在だったのでしょう。ただ、彼がすでに家庭を持っていることを除けば。  あなたには、とてもつらい現実ですが、「これが本当の家族だったらどんなにいいだろう」というあなたの願いはまず叶えられることはありません。もちろん、それはあなたにも痛いほどわかっていることですね。だからこそ「私が彼を愛することは娘にとって幸せなのだろうか」という深い悩みを抱えているのですから。  あなたはお嬢さんのためなら、愛する彼と身を切られる思いで別れることも厭《いと》わない覚悟があるでしょう。「娘を彼に会わせるべきではなかったのかもしれない」とあなたが感じているのもとてもよくわかります。わたしも、将来結婚の可能性のない男性と子供をあまりに親しい環境に置くのはあまりいいこととは思いません。ただ、じゃあ今すぐ彼との恋愛を終わらせればいいかというと、このケースは必ずしもそうとは言えないような気がします。  今のあなたには、彼という心の支えがどうしても必要なのです。彼と過ごすことで、あなたの気持ちが明るくなり、笑顔が増え、確かな幸せを感じられるのなら、それはお嬢さんにとっても幸せなことなのではないかと思うのです。「最優先は娘で、私のことは二の次」というあなたの考えには心から賛同しますが、子供が幸せでいられるためには、まずあなたが幸せでなければなりません。ときにはお嬢さんの前で泣いてしまうことはあっても、トータルしてみれば、あなたの生活は彼によって豊かなものになっているように感じられます。  わたしは、あなたが今すぐ彼との別れを決意しなければならない状況であるとは思いません。あなたが彼と別れなければならなくなるのは、彼と共にいられる安らぎや幸福よりも、あなたのつらさや涙のほうが上回ってしまったときでしょう。けれど、一緒になることだけが不倫の恋のゴールではありません。あなたは彼から、彼はあなたから、そしてお嬢さんは三人で過ごす幸せな時間から、たくさんのものを得ているはず。お互いの立場をきちんとわきまえているふたりなら、その先にあるのは悲しい別れだけではないはずです。  確かに、彼はあなたの目的地ではないかもしれません。でも、その目的地に向かうあなたを乗せてくれた急行列車のような存在。今すぐに列車を飛び降りようとせずに、しばらくは彼の愛情の中でゆっくりと心を癒してください。その列車を降りるときが来ても、それはあなたとお嬢さんにとって、幸福な選択に違いないのですから。 [#改ページ] —番外編[#「番外編」はゴシック体]— 不倫難易度に当てはまらないケース  この番外編では、これまでのAからFまでの分類に当てはまらないケースのお手紙をいくつか紹介していきたいと思います。  今回いただいたたくさんのお手紙の中には、不倫の恋の難易度という面からは一概に分けられないものがたくさんありました。その中から、貴重な男性からのお手紙や、複数の不倫の恋をしている女性の現状など、興味深いものを選んでみました。  あなたの恋とはまるでかけ離れた状況ばかりかもしれません。それでも、不倫の恋の様々な場面に触れることで、あなたには新しい視野が生まれるはずです。今まで見えなかった広い視野を見渡すことは、あなたが新たな一歩を踏み出す大切な足がかりになるでしょう。これからあなたの前に立ちはだかる数々の苦難をどうやって乗り越えていけばいいのか、そのヒントが必ず隠されているはずです。  この世の恋のすべては「番外編」と言えるかもしれません。あなたの恋は、ほかの誰のものとも違う、たったひとつの特別な恋なのですから。 [#改ページ] Story 17  三人の彼と同時不倫進行中!  私は現在25歳で、職業は水商売です。そして、不倫の彼が3人います。3人ともお店で知り合いました。1人目の彼は41歳で、奥さんと3人の子供がいます。自分の会社を持っていて金銭的にも恵まれています。彼とのつきあいはもうすぐ2年半になります。せいぜい週1、2回会えるくらいで、電話もほとんどしません。それでも会えるだけで嬉しい。2人目の彼は38歳で、奥さんと別居中。彼も自分の会社を経営しています。つきあって1年になります。3人目の彼は36歳で、奥さんと1歳、4歳の子供2人、彼の母親と同居しています。つきあってまだ3か月なんですが、休日だろうがおかまいなしに、しょっちゅう会ってます。  3人ともそれぞれ全然違う個性があって、一緒にいるとそれぞれ違う幸せを感じられるんです。3人ともすごく好きだし、別れたくない。別れる理由もないし。私と結婚してほしいとは思わないし、3人とも自分の家庭を大切にしてほしいと思っています。離婚なんてとんでもないです。困ってしまいます。1人の人と不倫してると、はまればはまるほどつらくなりますよね。私の場合は3人なので、それほどつらくないんです。といってもときには泣いたりしますが。  いつかは必ず別れてしまう関係だから、独身の男の子ともデートしてますよ。女友達とのつきあいもすごく楽しんでいます。今のその一瞬を楽しく大切にして過ごしたいんです。これから先も、3人の愛人をちゃんとしていきたいと思います。 [#地付き](岐阜県・25歳) [#改ページ]  恋を楽しむだけでなく、あなた自身の成長も大切な時期 「不倫の彼が三人」と聞いただけで、あなたのまわりの人は大抵びっくりしてしまうでしょう。でも、あなたのようなケースはそれほど珍しいわけではありません。 『愛人の掟《おきて》』の中でも触れていますが、不倫の恋をする女性はとにかく向上心がとても強いのです。もっと大人になりたい、もっといい女になりたい、もっといい仕事がしたい、もっと素敵な恋がしたい、という気持ちが、完成された大人の男性との恋に向かわせるのです。その傾向が強い女性は、あなたのように同時に何人もの妻帯者の男性とつきあったり、何度も同じような種類の恋を続けたりすることがあるのです。  あなたの二十五歳という年齢は、女性の人生の中でも最も向上心の強い時期です。そして、結婚や出産への焦りもまだあまりない。そして、放っておいても男性たちが寄ってくる、とてももてる年齢です。あなたが今、三人の妻帯者と同時に恋愛をしているのも、女性としてもうひとつ上のステップに上がる途中なのです。  あなたは今、三つの恋の主導権を楽々と握っているのでしょう。あなたがひとつの恋に縛られていない自由な存在なので、男性たちはあなたを自分のものにしたいという欲求を掻《か》き立てられるのです。三人の男性たちは皆、あなたとの恋で生きる活力を見出したり、恋の喜びを思い出したり、自分の男性としての魅力を確認したりしているでしょう。彼らにとってあなたはまさに、天使のような存在なのです! 今のあなたにとって、三人とも大切で、どの恋も手放しがたいものだということもよくわかります。あなたの生活の中で、その三つの恋が実にバランスよく小気味よく進んでいるのでしょう。そんなあなたでさえ「時には泣いたりする」ことがあるのですから、不倫の恋というのは本当に女性にとってせつないものなのですね。  ただ、あなたが頭に入れておいておかなくてはならないのは、今の状態はいつまでも続かないということです。「今のその一瞬を楽しく大切にして過ごしたい」という気持ちは、あなたがとても充実し、幸せだからこそ出てくる言葉ですが、それがずっと続くと思ったら大間違い。今のままでは、何年か経って気がつけばひとりぼっち、なんてことになりかねません。そうならないためには、この三つの恋を楽しむだけではなく、その恋の中であなた自身も成長していかなくてはなりません。今は想像もつかないことかもしれませんが、あなたにも、結婚や出産に対して恐怖のような焦りを感じるときが必ず来るのです。  これから三十歳を迎えるまでの五年間は、あなたの人生にとって最も重要な時期。あなたが今のままずっと自由な魅力を保ち続けられるかどうかは、あなたにかかっているのです。 [#改ページ] Story 18  彼女との別れがすべてを解決すると思うのですが……  私は37歳のサラリーマンです。結婚して7年半、1歳2か月の子供が1人います。不倫の恋は半年前にはじまりました。彼女は私より6歳年下の会社の同僚で、同じ部署で働いてました。あるとき、彼女がほかの部署に配属されることになり、私から飲みに誘ったのがきっかけでした。自分は結婚しているのにほかの女性と2人きりで会うことに負い目は感じましたが、彼女と離れてしまう残念さが強かったのだと思います。  数日後、もう1度会いたいと電話しました。「奥さんも子供もいるのに何言ってるの?」と言われましたが、それでも会うことになり、彼女を抱きました。その頃は、結婚していることをあまり意識しないですみました。しかし、彼女にとっては怒りや失望の対象になりました。「未来のない、別れることを前提にした関係に何の意味があるの?」と。  私は家庭に対し嘘を重ねることの罪悪感と、高揚する気持ちを合わせ持ち、睡眠時間を削って彼女と一緒のときを過ごしました。また、妻のことも考えました。私は妻を愛しているのかと。妻の妊娠以来、2年以上夫婦生活はありません。休日以外は会話もありません。子供にも責任を感じます。私は両親の離婚を経験しているので、離婚に強い嫌悪感があるのです。そして、妻と子供と離れる勇気のない自分を再確認しました。「君とは一緒になれない。妻と別れられない。もう会わないほうがいい」と彼女に告げました。  でも、次の日には私から電話をかけていました。彼女も「やっぱり会いたい」と。それからは楽しい時間と現実を見つめることのくり返しです。彼女の今の時間や将来の時間を無駄にするかもしれない。そう思うとつらい。彼女を尊敬しています。だからよい人生を送ってほしい。二股《ふたまた》をかける自分が許せない。今すぐに彼女と別れることが多くの問題を解決するのはわかっているのですが……。  不倫の恋は本当に好きなのに別れるからつらいのですね。彼女に憎まれたくない。でも好きなまま離れても彼女に新しい恋が訪れるとは思いません。状況を変えても心が変わらなければ同じことでしょう。私は、彼女が必要とする人間になりきれない。なろうとしない以上、この恋は終わらせなければならないと思っています。 [#地付き](新潟県・37歳) [#改ページ]  別れを決意した女性はあなたが思う以上に強いものです 「楽しい時間と現実を見つめることのくり返し」。男性のあなたが、不倫の恋をこのように真正面からとらえていることをとても嬉《うれ》しく思いました。不倫の恋に悩む女性たちの相手が皆あなたのような男性だったらいいのに、などと思ってしまうくらいです。 『愛人の掟』を読んだ男性の方から非常によく言われるのは、「この掟を全部守れたらすごく都合のいい女ではないか」ということです。確かに、結婚はせまらないし妻のことは恨まないしきちんと自分から別れてくれるし、男性にとってはこんな楽なことはないじゃないか、ということになるのでしょう。  けれど、それは不倫の恋を本当に表面的な部分でしかとらえていない、とても浅はかな意見です。彼らはあなたのように、真剣に彼女の立場に立って考え、家族への罪悪感に苛《さいな》まれ、それでもこの恋を断ち切れない、身を切られるほど苦しい思いをしたことがないのです。そんな思いを一度でもしたことがあれば、相手の女性が一生懸命この掟を守ろうと必死になっていることを、都合がいいなんて言えるはずがありませんから。このようにこの恋のつらさを何もわかっていない男性たちが、軽々しく足を踏み入れてくるからこそ、彼女たちの流す甲斐《かい》もない涙はあとを断たないのです。  あなたはこの恋をはじめることに抵抗を覚え、葛藤《かつとう》し、その上で自分から行動を起こし、彼女のつらさや苦悩にも真摯《しんし》な姿勢で対応しています。あなたにとっては当たり前のことかもしれませんが、ここまでの段階さえクリアしていない男性のほうが多いのです。そして、悩み抜いた末に「君とは一緒になれない。妻と別れられない。もう会わないほうがいい」と彼女に告げた。これは、この恋をいつも真剣に受け止め、本当に彼女のことを愛しているあなただからこそ、できたことです。普通は、男性のほうから別れを決意することなど、ありえないことなのですから。あなたのつらさは相当なものだったと想像できます。もしかしたら、別れを告げられた彼女よりもあなたのほうがずっとつらかったのではないでしょうか。  その決心のあとですぐに自分から彼女に電話をかけてしまったあなたを責めることはできません。「今すぐに彼女と別れることが多くの問題を解決する」ことが頭ではわかってはいながら、心が言うことをきかない、それが不倫の恋というものなのですから。あなたの言うとおり、「不倫の恋は本当に好きなのに別れるからつらい」のです。でも、「好きなまま離れても彼女に新しい恋が訪れるとは思わない」というのは、少々思い上がりかもしれません。  女性たちが不倫の恋に決別するときは、ほとんどの場合「好きなのに別れる」のです。彼をほんの少しでも嫌いになれたらどんなに楽だろうと思いながら、愛する人との別れをやり遂げるのです。それでも、彼女たちがもう二度と恋をしないわけでは決してありません。女性たちはきちんと自分の中でこの恋の決着をつけ、時間をかけてその傷を癒《いや》し、また新しい恋をするのです。それはあなたの彼女だって同じ。  彼女は、たとえあなたがどんなことをしても、あなたを嫌いになって別れることはないでしょう。でも、あなたを好きだという気持ちが変わらないまま別れても、必ずいつかまた誰かと恋に落ちるのです。安心してください、というのも変ですが、別れを決意した女性たちはあなたが思っている以上に強いのです! 「彼女に恨まれたくない」というあなたの心配などまるで無用です。これだけ自分を愛してくれた男性を恨む女性などいるでしょうか? 彼女がこれからいくつもの恋をしても、あなたとの恋は素晴らしい恋として彼女の中に残るはずです。そしてあなたはいつまでも最高の男性として彼女の心に存在し続けるでしょう。  そして、この恋が終わったあと、あなたが彼女にしてあげられることがあるとすれば、もう二度と不倫の恋はしないこと、だけです。それが彼女への愛を貫く証《あかし》になるのですから。 [#改ページ] Story 19  彼の子供を産んで、奥さんの気持ちもわかるように  私は現在20歳で、不倫の彼との間に1歳の子供1人がいて、2人目を妊娠中です。彼は、以前私がつきあっていた彼氏の上司です。彼氏が浮気をしていて、私との仲がうまくいってない頃に、よく彼から電話がかかってきました。そして私の悩みを真剣に聞いてくれました。その頃から関係がはじまったのです。  彼氏と別れ、私はひとり暮らしをはじめました。彼に合鍵《あいかぎ》を渡し、会える日は会うという生活。彼は泊まりにも来ました。つきあって1か月もしないうちにこの状態でした。そして、彼は自宅から荷物を持ってきて一緒に暮らすようになったのです。  4か月が過ぎた頃、私は彼の子を妊娠しました。はじめは堕《お》ろそうと思っていたのですが、彼が「産んでほしい」と。私はつわりがひどく、こんなつらい思いをするなら産もう、子供に罪はないと決心し、産むことにしました。その日から、すごく貧乏な生活がはじまりました。彼は昼は仕事、夜は道路工事のバイトをして、奥さんに生活費を送り、残りのわずかな貯金を使って生活していました。  でも、子育てをしていると、奥さんの気持ちがわかってきて、何とも言えない気持ちになってきました。まだ離婚が成立していないので、以前は私の子供が父親のいない戸籍になるのはかわいそうだと思っていたのですが。でも、奥さんの別れたくないという気持ちもわかっているので……。  もうすぐ、つきあって2年目になります。3年目の記念日まで何も変わらなかったら別れようと思っています。先のことを考えると、このまま一緒にいていいのかどうか不安です。離婚できないのなら、子供にとってもよくないような気がします。こういうケースもあるということを伝えたくてお手紙を出しました。 [#地付き](群馬県・20歳) [#改ページ]  彼にはあなたと子供の一生の責任を負う義務があります  あなたは二十歳の若さで、すでに一児の母、もうすぐ二児の母になろうとしています。この恋はあなたにとって、まさに人生を左右する大きな運命だったのですね。  若いあなたをこんな苦しい状態に置いている彼を許せない思いですが、今のあなたの状況を考えるとそんなことも言っていられません。あなたが考えなくてはならないのは、彼との過去ではなく、自分と子供のこれからのことなのですから。  とにかく、一度目の妊娠で、子供を諦《あきら》めようとしたあなたを引き止めて「産んでくれ」と言ったのは彼のほうです。これは、彼の反対を振りきってあなたの意思で産んだ場合とはまるで状況が違います。そして、さらにあなたを妊娠させた彼が一体どういうつもりなのかは別として、彼にはあなたと子供たちの一生の責任を負う義務があるのです。  手紙には触れられていないのでくわしいことはわかりませんが、彼の奥さんは、今のあなたの状態をご存じなのでしょうか? もし子供の存在は知らなかったとしても、彼は「自宅から荷物を持ってきて一緒に暮らすようになった」のですから、少なくともあなたの存在は承知の上で婚姻生活を続けているということですよね。彼が奥さんに対して、どれだけ真剣に離婚の要請をしているのかも疑問です。 「奥さんの気持ちがわかってきて何とも言えない気持ちになる」とありますが、今、あなたは奥さんの気持ちなど考えている場合ではありません! 「三年目の記念日までこのままなら別れよう」なんて、ものわかりがよすぎませんか? もし彼と別れるのなら別れるなりに、彼の責任は子供が成人するまで続くのです。あなたが彼と別れてひとりで子供を育てていくことを望んでいるとしても、生活費や養育費をもらう法律上の取り決めをする必要があります。  彼が心から離婚を望んでいて、奥さんもあなたと子供の存在をわかった上で、何らかの理由で離婚にだけは同意しないという状態だとしても、あなたのほうから身を引く必要などまったくないのです。戸籍上の様々な問題があっても、彼が実質上あなたと家族として生活し、あなたの夫であり子供の父親である役割をきちんと果たしてくれているなら、現状の生活を続けるべきだと思います。  あなたの今の状態は、あなたひとりで悩んだり考えたりして何とかなる域をとうに超えています。身近な信頼できる人や専門家に間に入ってもらって、彼の家族と話し合い、一日も早く今の状態を解決すべきです。あなたはどんなことをしてでも、子供との安定した生活を手に入れなくてはならないのですから。 [#改ページ] Story 20  隠されていた事実発覚。不倫を自覚した私  私は21歳で介護職に就いている者です。不倫の彼は37歳、バツイチで子持ち。子供は実家に預けています。つきあいはじめてから、実は遠距離恋愛中の婚約者がいることを打ち明けられました。しかし、つきあって10日くらい経ったとき、彼は婚約者が妊娠したため、入籍したのです。この事実は、あとになってわかったことで、当時彼はひたすら隠していました。さらに、そのとき私は、彼と住む新居探しのために、彼の家で一緒に暮らしていました。  その後、奥さんは出産のために彼のもとへ来ました。彼が言うには、1年間だけだそうですが、私は信じていません。奥さんが彼と一緒にいるので、不倫してるという自覚がはっきりとしました。前はもっと楽だったんですが。別れ際にすねてしまったり、けんかが増えたり。  彼との約束を信じて待たないことは、本当につらかった。信じたいけど、いつも裏切られるので、あまり期待しないようにしているのですが……。私は人前でも1人でも恥ずかしくて泣けない人でした。けど、不倫してからは泣いてばかりでした。すごいつらい涙です。この本は、私にすっきりすることができる涙をくれました。本当にありがとうございました。  別れを自分から告げられませんが、彼から言われたら、つらくてくやしいけど別れないといけないと思っています。 [#地付き](三重県・21歳) [#改ページ]  今すぐあなたから彼に別れを告げてください  あなたの状況は実に難解で、お手紙を何度も読み返しました。そして今、この難解な事態にあなたを巻き込んでいる彼の不誠実さに信じられない思いでいっぱいです。  彼はあなたに婚約者がいることを隠してつきあいはじめ、あなたと暮らすための新居まで探していながら、そのわずか十日後に彼女が妊娠したために入籍し、それも隠していた、とあります。でも、彼が正常な感覚の持ち主なら、自分に離婚歴があり、子供もいて、その上婚約者までいるときに、つきあいはじめたばかりの女性との新居を探そうなんて馬鹿げたことは到底思いつきません。憶測ですが、彼の探していた新居はもともと妻になる女性と生まれてくる子供のためのものだったのではないでしょうか。酷な言い方ですが、あなたは彼にとって、ただ彼女との遠距離の間を埋めるための存在だったのではないでしょうか。  そして、彼の奥さんが「出産のために彼のもとへ来た」というのも理解に苦しむところです。出産のために実家に帰る、というのはよくある話ですが、妻が出産のときだけ夫のもとへ来るなんて聞いたことがありません。そこでまた彼の言う「一年だけ」というのは一体どういうことでしょう? 一年経ったらまた彼女とは遠距離になるからまた前のようにつきあえる、とでも言いたいのでしょうか? 彼の言葉は最初から最後まで嘘ばかりです。あなたはそのあとで「不倫をしている自覚がはっきりした」などと言っていますが、あなたはもともと不倫などしていなかったではないですか! あなたがつきあいはじめたのは離婚歴と子供をひとり持つ独身の男性だったのですから。  あなたにとって彼がどれだけ魅力のある男性なのかは知る由もありません。でも、はっきりいって、彼を選んだあなたに男性を見る目は備わっていません。けれど、それは仕方のないことです。あなたはまだ若く、彼のように不誠実な人間がこの世に存在することなど夢にも思っていなかったのですから。あなたにできることは、今すぐ彼と別れて一刻も早く忘れてしまうこと、だけです。「彼から言われたら」などと言っていたら、いつまで経っても別れられません。彼は自分からあなたに別れを切り出すほど誠実な人間ではないからです。  もう彼のために流す涙など一粒だっていりません。早く、早く、今すぐあなたから彼に別れを告げてください! いいえ、別れなど告げなくてもいいから、とにかくその場所から立ち去ってください! そしてどんなに引き止められても何を約束されても決して戻ってはいけません。彼の口から出てくる言葉など一切信用してはいけないのです。だって、彼があなたに本当のことを言ったことがありますか? [#改ページ]  第3章 不倫してはいけない男を見分けるチェックポイント50 [#改ページ]  あなたの彼は合格? それとも不合格?  ここにあげた50の項目は、あなたの彼が不倫の恋をする資格のある男性かどうかを見分けるためのチェックリストです。  当てはまるチェックポイントが十個以内だったら、あなたの彼は不倫の恋をするに値する男性。彼との恋はつらくても、あなたに大切な何かを残してくれるでしょう。当てはまるチェックポイントが十一個から二十五個だったら、あなたの彼はまだ不倫の恋をする自覚と責任感に欠ける男性。でもこのあたりが一般的なところかもしれません。当てはまるチェックポイントが二十六個から三十九個だったら、あなたの彼はかなり問題がありそう。あなたが決定的な傷を負う前に彼との別れを考えなくてはなりません。そして、当てはまるチェックポイントが四十個以上だったら、残念ながらあなたの彼は不倫の恋をする資格のない男性。これ以上彼とつきあっていてもあなたにいいことは何もありません。一日も早くこの恋に終止符を打つべき。  ただ、当てはまる項目は少なくても、後半にチェックしたものが多かったあなたは要注意。特に、46から50までにひとつでも当てはまるものがあったら、すぐに彼と別れて! [#改ページ] Point 1[#「Point 1」はゴシック体] □妻子のあることを隠していた ————————————————————————————  彼がアプローチしてきたとき、あなたに奥さんや子供がいることを言わなかったり、隠していたりしたら、彼との恋は運命の恋などではありません! たとえ一週間でも、一日でも、数時間でも、彼はあなたを騙《だま》していたのです。そんな彼があなたを二度と騙さないと思いますか? あなたが聞かなくても自己申告するのが不倫の基本。左手の薬指さえ見れば全部わかったらいいのに! Point 2[#「Point 2」はゴシック体] □自分から行動を起こさない ————————————————————————————  はじめてのデートの誘いは彼から? それともあなたから? はじめてのデートやはじめてのキス、そしてはじめてのH、旅行など、不倫の恋の大切な節目になる出来事を、すべてあなたから誘わなければならないとしたら、要注意。彼はあなたとのつきあいに、いつも逃げ道をつくろうとしているのです。肝心なことはすべてあなたに言わせるような彼には、もう何も言わないで! Point 3[#「Point 3」はゴシック体] □「妻とはうまくいっていない」と言う ————————————————————————————  あなたが彼とつきあいはじめの頃、彼の口からこんな台詞《せりふ》を聞いたことはありませんか? 家庭不和を口説き文句に使うような男性に、不倫の恋をする資格などありません! その言葉を信じて彼のことを可哀想に思ったりしてはいけません。あなたの前でこういうことを平気で言える男性にかぎって、奥さんに頭が上がらないものなのですから。 Point 4[#「Point 4」はゴシック体] □スーツが似合わない ————————————————————————————  不倫の恋をする男性の第一条件はスーツが似合うこと。スーツはきちんと自分の仕事をこなせる大人の男の象徴。スーツ姿が何だかだらしなかったり、どこかしっくりしていなかったりするなら、彼はまだ社会人として発展途上にある男性。彼との恋愛は、見た目のとおりだらしないものになるでしょう。妻子がありながらあなたと恋に落ちるなんて、十年早い! Point 5[#「Point 5」はゴシック体] □まめに電話をくれない ————————————————————————————  彼からは、一日に何回くらい電話がありますか? 何か特別なアクシデントでもないかぎり、まる一日ラブコールをくれないなんて、絶対にあってはならないことです。まめさに欠ける男性との不倫の恋は、つらい涙を流すためにあるようなもの。もともと彼があまりまめでない男性だったとしても、あなたの寂しさをわかっていたら、一日何度も電話するくらいたやすいことなのだから。 Point 6[#「Point 6」はゴシック体] □おこづかい制である ————————————————————————————  彼がいくらお金持ちでも、給料をまるごと奥さんが管理しているのなら、大喜びするのはちょっと待って。彼の経済力にかかわらず「おこづかい制」は不倫の恋には不向き。奥さんにあなたの存在がばれてしまう原因にもなります。たとえ収入は少なくても、自分でお金の管理をしている男性を選ぶべき。家庭に無関係で使えるお金がどれだけあるかで、この恋の豊かさが決まるのです。 Point 7[#「Point 7」はゴシック体] □どちらかというとけちである ————————————————————————————  たとえばちょっと高級なレストランで会計をするとき、彼が高い値段に対して文句を言ったり、いつまでもぶつぶつ言ったりすることはありませんか? 彼が自分のためにも他人のためにも、そしてあなたのためにも気持ちよくお金が使える人であるかどうかは、不倫の恋を大きく左右します。けちな男性は、奥さんと離婚するための慰謝料など一円でも払いたくないのです! Point 8[#「Point 8」はゴシック体] □仕事の愚痴をよく言う ————————————————————————————  彼があなたに会ってまず話すことは何ですか? 嫌な上司に叱られたことや、営業成績が上がらないことばかりでしょうか? そんな男性は、あなたを都合のいい愚痴聞き係と勘違いしているのです。あなたが彼のそばにいるのは、彼の安らぎになるためであって、家庭に持ち込めない悩みを聞いてあげるためではありません。そんな無意味な役は今すぐ卒業して! Point 9[#「Point 9」はゴシック体] □家庭での不満を口にする ————————————————————————————  仕事の不満だけでなく、彼が家庭での不満をあなたにぶつけるような人なら、彼の話を真剣に聞く必要などまったくありません。「うちの奴全然料理とかしなくてさ」などと聞かされる度に、あなたが彼との将来に希望を見出したり、またそれに絶望したり、ひとつひとつ心を痛めていることさえ気がつかないのです。そんな鈍感な男性のために涙を流すなんてもったいない! Point 10[#「Point 10」はゴシック体] □発言が二転三転する ————————————————————————————  どんな小さなことでも、一度口にしたことがあとでころころ変わってしまう男性は決して信用しないように。最初に決めた待ち合わせ場所を何度も指定し直したり、行ったことがあると言っていたお店をはじめてだと言ったり。そんな日常のちょっとした発言の変化は、後に「来年離婚する」が「もう一年待ってくれ」になる前兆なのですから。 Point 11[#「Point 11」はゴシック体] □秘密を守れない ————————————————————————————  秘密を心に抱えていることは、ちょっとわくわくする反面、とても苦しいものです。不倫の恋の悩みも、誰かに本当のことを言ってしまえれば楽になるのに、と思うでしょう。あなたがまだ親友にも内緒にしているふたりの関係を、同僚にべらべらしゃべってしまうような彼は、あなたのことを真剣に考えていないかもしれません。もし真剣に思われても願い下げですが! Point 12[#「Point 12」はゴシック体] □自分の都合でスケジュールを決める ————————————————————————————  ふたりで待ち合わせをするとき、彼は「明日は何時にどこで終わるから、その近くで会おう」というような決め方をしますか? あなたとデートをするときは、まずあなたの仕事の都合や出てきやすい場所などを聞いてから、自分がそれに合わせられるかどうか考えるのが常識。何でも自分の都合ばかり優先する男性に、女性を幸せにすることなどできはしないのです。 Point 13[#「Point 13」はゴシック体] □あなたとの約束を最優先しない ————————————————————————————  楽しみにしていたデート、なのに突然のキャンセル。そんなことが何度も続くような彼には、何が何でもあなたと過ごす時間をつくろうとする姿勢が見られません。ただでさえふたりに残されているのはわずかな時間だけ。それを同僚との飲み会やゴルフの練習に当ててしまったら、一体いつ会うというのでしょう? 仕事と家庭以外の彼の時間は、全部あなたが埋めるべきなのです! Point 14[#「Point 14」はゴシック体] □デートの誘いはいつも当日だ ———————————————————————————— 「今日これから会える?」という彼の誘いには、決して乗ってはいけません。いつも当日になってデートに誘ってくる男性は、常に自分の都合に合わせてくれる女性を求めているだけなのです。彼が本当にあなたに会いたければ、前の日に電話をして確実に会える方法を考えるはず。どんなに彼と会いたくても断って、ちゃんとあなたの来週のスケジュールを聞いてくる男性を見つけて! Point 15[#「Point 15」はゴシック体] □デートコースがマンネリ ————————————————————————————  あなたはもっといろいろなところに出かけたいのに、彼とのデートはいつも同じコース、というのなら彼はこの恋をするには少々力不足。ふたりには何年経っても新鮮なデートが必要。時には遠出をしたり、びっくりするような場所に連れて行ってもらったり、常に新たな喜びが必要なのです。だってあなたは結婚の約束もダイヤモンドも我慢しているのですから! Point 16[#「Point 16」はゴシック体] □些細《ささい》なことでパニックになる ————————————————————————————  たとえば、予約したはずのレストランで席が用意されていなかったり、スポーツ観戦をしている途中で大雨が降ってきたりしたとき、彼はまずあなたのことを考えて冷静に対処することができるでしょうか。咄嗟《とつさ》のアクシデントや、不慮の出来事を前にして、すぐにパニックになってしまう男性に、不倫の恋に訪れる様々な局面を乗り越える能力があると思いますか? Point 17[#「Point 17」はゴシック体] □記念日を忘れる ————————————————————————————  クリスマスやお正月を彼と一緒に過ごせないあなたにとって、誕生日やふたりの一周年記念日はとても大切。そんなせつない気持ちを当然彼もわかっているはず。その大事な日を忘れるなんて、あなたを心から想っていたら決してできないこと。ついうっかり、で許されるものではありません。もし、彼がイヴの夜をあなたと一緒に過ごしたいと言ってきたら許してあげてもいいけれど。 Point 18[#「Point 18」はゴシック体] □セックスが淡白 ————————————————————————————  最近、彼と会っても食事をするだけでHをしていない、なんてことになったら大変! 彼と一緒に暮らすことも、籍を入れることも、彼の子供をつくることもできないあなたにとって、セックスは最大の愛情確認の場であるべき。それを怠る彼は不倫の恋人失格。Hが淡白な彼とこの関係を続けていくのは至難の業です。不倫の恋にセックスレスなんてありえない! Point 19[#「Point 19」はゴシック体] □確実な避妊をしない ————————————————————————————  避妊をきちんとすることは、不倫の恋の大切なルール。もし彼が避妊に協力的でなかったり、コンドームを嫌がったりしたら、すぐにでも別れることを考えはじめなくてはなりません。あなたのことを本当に大切に思っていれば、彼のほうが進んで確実な避妊をしてくるはず。まともな男性なら、今の状態で妊娠することほど、あなたを深く傷つけることはないと知っているからです。 Point 20[#「Point 20」はゴシック体] □「妻とはセックスしていない」と言う ————————————————————————————  あなたは彼の「もう何年も妻を抱いたことなんかないよ」という言葉を信じますか? これは、彼があなたの愛情をつなぎとめるために使う、最も言いやすく、安全な台詞《せりふ》なのです。なぜならそれが真実かどうか、あなたに確かめる術はないのですから! 信じても信じなくても、あなたはますますつらくなるだけ。誠実な彼なら、もっと別の言葉であなたを幸せにしてくれるはず。 Point 21[#「Point 21」はゴシック体] □あなたと写真を撮りたがらない ————————————————————————————  あなたにとって、彼とのツーショットの写真はかけがえのない宝物。でも、特に写真嫌いでもない彼があなたと写真を撮ることに抵抗を見せるのは、あなたへの愛情よりも家族へのうしろめたさのほうが先に立っているからです。彼がこの恋の証拠になるようなものを一切残さない、というドライな考えの持ち主なら、あなたとの恋愛も同じように乾いたものかもしれません。 Point 22[#「Point 22」はゴシック体] □家族の写真を持ち歩く ————————————————————————————  彼は手帳やお財布に、家族の写真を忍ばせているタイプでしょうか? もちろん、家族の写真を持ち歩くこと自体は大したことではありません。問題は、あなたがそれを知っていることです! もし持っているとしても、あなたの目には決して触れさせないのが愛情というもの。子供の写真だけならまだしも、妻とのスリーショットまであなたに見せつけるのは彼の無神経さを疑います。 Point 23[#「Point 23」はゴシック体] □素敵な贈り物やカードをくれない ————————————————————————————  彼からのバースデープレゼントがコーヒーメーカーやデジタルカメラだったら、あなたは嬉《うれ》しいでしょうか? 実用的なものを選ぶのは、あなたとのことをなるべくライトな関係にとどめておきたいという意識があるからです。それがどんなに高価でも、あなたがいくら欲しがっていたとしても、恋する男性はもっとロマンティックな贈り物にカードを添えて渡したいものなのですから! Point 24[#「Point 24」はゴシック体] □あなたのことを褒めない ————————————————————————————  彼はあなたに会う度に「きれいだよ」「可愛いね」と言ってくれますか? あなたが大きな仕事をひとつやり遂げたら、いつも大喜びで一緒にお祝いをしてくれますか? あなたにとって彼は、いつでも無条件に褒めてもらえる安心できる場所でなくてはなりません。何か月も褒め言葉のひとつも言わないなんて、家庭では許されても不倫の恋では通用しません! Point 25[#「Point 25」はゴシック体] □奥さんが買ってきた服や下着を身につけている ————————————————————————————  彼が着ているシャツやネクタイは、彼の奥さんの趣味で選ばれたものでしょうか? だとしたら、あなたの贈ったネクタイは奥さんの手によって無惨に切り刻まれてしまうかもしれません! 不倫の恋ができるのは、スーツから下着まで、きちんと自分で管理できる自立した男性に限ります。自分の服を自分で選ぶセンスも意思もない男性に、あなたを選ぶ権利などないはずです! Point 26[#「Point 26」はゴシック体] □Yシャツは奥さんがアイロンをかけている ————————————————————————————  奥さんが毎日彼のYシャツを洗って糊《のり》付けしてアイロンをかけているのだとしたら、彼の家庭はあなたの思っている以上にうまくいっている証拠。逆に、彼のYシャツにクリーニングの札がついていた、なんてことはありませんか? 彼は毎朝、自分でクリーニングの袋からYシャツを取り出しているのかもしれません。彼のハンカチがいつもくしゃくしゃでないかどうかチェックして! Point 27[#「Point 27」はゴシック体] □あなたのプレゼントしたものを身につけない ————————————————————————————  彼へのプレゼント選びはとても気を遣うものです。でも、あなたが苦心して選んだシャツやキーケースを彼が一度も身につけていなかったら? あなたが彼の迷惑になるようなものを贈ったわけでもないのに身につけてくれないのは、必要以上に奥さんに遠慮のある人。彼は、家庭の中で奥さんにいろいろな実権をしっかり握られているのでしょう。 Point 28[#「Point 28」はゴシック体] □デート費用をあなたに払わせたことがある ————————————————————————————  彼とレストランに食事に出かけて、あなたがお金を払ったことはありますか? 彼との時間を過ごすためにあなたが経済的な負担をするのは、不倫の恋が破綻《はたん》する前兆。たとえあなたのほうが収入が多かったとしても、彼は家庭のほかに、あなたとの交際に使うお金を捻出《ねんしゆつ》しなくてはならないのです。ましてや平気で「ごちそうさま」と言うような男性はあなたを苦しめるだけ。 Point 29[#「Point 29」はゴシック体] □帰る時間を執拗《しつよう》に気にする ————————————————————————————  あなたとのデートの最中、彼は何度も腕時計をちらちら見ているでしょうか? それでなくても何時間後には離れなくてはならないのに、あなたといる時間に家庭を感じさせるのはルール違反です。どんな事情があっても、それをあなたに感じさせてしまうのは彼のキャパシティの狭さ。帰るのが一時間遅れようとも、あなたの涙を拭《ふ》いてあげるほうが大切な夜だってあるのですから。 Point 30[#「Point 30」はゴシック体] □あなたの前で家に電話をする ———————————————————————————— 「まだ仕事が終わらないんだ。今夜は遅くなるから心配しないで」。こんな電話をあなたの前でするような彼は、いつも平気で嘘をついて世の中を渡ってきたのでしょう。その電話一本で、あなたがどんなに傷つくのかまるでわかっていないのです。あなたのことも、そして家族のことも大切に思っていたら、もっと別の方法で双方を安心させることを考えるはずです。 Point 31[#「Point 31」はゴシック体] □あなたの話を真剣に聞かない ————————————————————————————  彼は、あなたの悩みや不安をいつも真剣に聞いてくれますか? 不倫の恋をするあなたに次々と湧き上がるつらい涙を、どんなときもすべて受け止めてくれることが彼の当然の責任。話半分に「今がよければいいじゃない」「楽しくやろうよ」「君は笑顔のほうが素敵だよ」などと終結させようとするのは、苦しい現実から目を背け、この恋の夢の部分だけ手に入れようとしている証拠。 Point 32[#「Point 32」はゴシック体] □しょっちゅう「愛している」と言う ————————————————————————————  不倫の恋の中で、「愛している」という言葉は特別な意味を持ちます。あなたにとっては非常に嬉しい反面、彼との将来を連想してしまうつらい言葉でもあります。あなたと一緒になれないことを真剣に悩んでいる男性には、軽々しく口にできないはず。何かというと連発するような彼は、その場その場であなたが喜ぶことなら何でも言ってくれるでしょう。ただし、信用しないこと! Point 33[#「Point 33」はゴシック体] □あなたと妻を比較する ————————————————————————————  あなたが彼に何かしてあげる度に、「妻はそんなことしてくれたことがないよ」と言ったり、デート中に「妻とは何年もこんな風にふたりでどこかに出かけたことはない」などと言ったりするのは、あなたと奥さんの立場の違いを常に確認していないといけないから。そんなことは彼がひとりで自分の胸の中で解決すべきこと。彼はあなたに甘えているのです! Point 34[#「Point 34」はゴシック体] □家族のことを一切話さない ————————————————————————————  彼は家族や奥さんに関することを、さりげなく口にするほうですか? それともあなたが何を聞いても頑《かたく》なに何も話さないタイプでしょうか? 家族のことになると不自然なほどに秘密主義になる彼は、家庭の匂いをさせない自分に酔っているナルシストである可能性大。あなたを傷つけないためではなく、自分が傷つかないためにはどんなことでもするでしょう。 Point 35[#「Point 35」はゴシック体] □日曜日に電話をかけてくる ————————————————————————————  彼に会えない寂しい日曜日、突然のコールほどあなたを喜ばせるものはないでしょう。けれど、彼は日曜日も一日中あなたのことを考えているわけではないのです。家族が買い物に出かけている隙に、あるいは奥さんの目をちょっと盗んで電話をかけている彼の気まぐれに、あなたはさらにつらい夜を過ごすことに。本当にあなたを愛しているのなら、奥さんと話し合うほうが先です! Point 36[#「Point 36」はゴシック体] □「ただいま」「今日は何時頃帰るよ」などと言う ————————————————————————————  彼があなたの部屋を訪れるとき「ただいま!」などと言って入ってきたりしませんか? それをあなたも大喜びで「お帰りなさい」などと迎えてはいけません。だって彼はこの部屋に「帰ってきた」わけではないのです。こんな不用意な言葉を口にする彼は、あなたとの恋に浮かれている思慮の浅い人。彼が「ただいま」と言って帰る家はほかにあるのですから。 Point 37[#「Point 37」はゴシック体] □合鍵《あいかぎ》を欲しがる ————————————————————————————  彼があなたの部屋の合鍵を欲しがるようなことがあったら、断固、拒絶してください! そこはあなたの部屋であって、彼の部屋ではないのです! 彼にあなただけの自由な空間を束縛することはできません。そんなことを言いだす彼は、自分の立場をまるでわきまえない自分勝手な男性。彼があなたの部屋の鍵を共有するのはきちんと結婚してからでいいのです! Point 38[#「Point 38」はゴシック体] □あなたの手料理を食べたがる ————————————————————————————  あなたは彼と会う度に、美味《おい》しい夕食をつくってあげたりしていませんか? それは彼の奥さんがすることで、あなたがすることではありません。彼が外で食事をするのを嫌がって「君の手料理がいちばん美味しい」などと言うのは、プロポーズでもなんでもなく、ただ自分が楽をしたいだけ。あなたが毎日彼のために腕をふるうのは、彼の妻になってからでじゅうぶん間に合います! Point 39[#「Point 39」はゴシック体] □あなたの部屋に頻繁に外泊する ————————————————————————————  特別な日でもないのに、彼はあなたの部屋にしょっちゅう泊まっていきますか? それで彼の家庭で問題が起こらないということは、彼はあなたとつきあう前から朝帰りや外泊をくり返してきたのでしょう。もし彼と結婚できたとしても、今度はあなたが朝まで帰ってこない彼を待つことになるのです! その場の流れで突発的にあなたの家に泊まろうとしたら勇気を出して断って。 Point 40[#「Point 40」はゴシック体] □あなたの部屋で自分の家のようにふるまう ————————————————————————————  彼はあなたの部屋に来るなり靴下を脱いだり、「あー腹へった」と言ったり、ソファに寝転がってそのまま眠ってしまったりしていませんか? そんなことを平気でする彼には、家に帰ってやってもらうように言いましょう。不倫の関係で緊張感がなくなったら、それはもう恋とは呼べません。あなたの部屋に来たら、彼は真っ先にあなたにキスをするべきなのです! Point 41[#「Point 41」はゴシック体] □あなたの生活に口を出す ————————————————————————————  彼は、あなたにもっと部屋の掃除をきちんとしろとか、もっと早く家に帰ってくるように言ったりしますか? あなたの生活習慣に口を出したり、あなたの価値観を変えようとしたりすることは、彼の領域ではありません。あなたが彼とのつきあいの中で強制されることは何もないのです。彼がありのままのあなたを愛してくれるのでなければ、あなたでなくてもいいではありませんか! Point 42[#「Point 42」はゴシック体] □あなたの交友関係に口を出す ————————————————————————————  あなたが女友達や会社の同僚と遊びに行くことに、彼はいい顔をしないでしょうか? あなたの交友関係にあれこれ口を出すのは、自分の立場もあなたの立場も、客観的に見られない幼稚な男性。特に、あなたが彼以外のボーイフレンドと会うことに、彼はジェラシーを掻《か》き立てられても、止めることはできないはずです。だって、彼は結婚していてあなたは独身なのですから! Point 43[#「Point 43」はゴシック体] □長期の旅行に誘う ————————————————————————————  彼はあなたをこっそり出張に連れて行ったり、家には仕事だといってあなたと長期の旅行に出かけたりすることがありますか? 夢のような旅のあと、あなたの孤独がさらに増すことを予測できない彼には、この恋の深刻さを理解することはできないでしょう。あなたはこの旅で、彼と一緒にいられる幸福だけでなく、彼の仕事や家庭に対するいい加減さにも目を向けるべきなのです。 Point 44[#「Point 44」はゴシック体] □贈った指輪を左手の薬指にはめさせる ————————————————————————————  彼から贈られた指輪は、間違いなくあなたにとっていちばん嬉《うれ》しいプレゼントでしょう。けれど、彼のほうからはあなたの左手の薬指にはめるようなことがあったのなら、それは残酷な行為です。なぜなら、それはエンゲージリングでもマリッジリングでもないのですから。あなたが彼からの指輪を左手の薬指にはめるかどうかは、彼の離婚が成立してからのお話です! Point 45[#「Point 45」はゴシック体] □別れを決意したあなたをいつまでも引き止める ————————————————————————————  どんなに愛する彼でも、別れなくてはならないときはやってきます。つらい涙のなかでその決断をしたあなたに、彼はどんな態度をとるでしょう? 彼が別れないでほしいと泣いてすがったり、肉体関係はやめても食事ぐらいはいいだろう、などとしつこく言ってきても、決意を揺るがせてはいけません。本当にあなたを手放したくないのなら、彼にはほかにすることがあるのですから。 Point 46[#「Point 46」はゴシック体] □妻が妊娠中である ————————————————————————————  あなたが彼とつきあいはじめたとき、彼の奥さんが妊娠中だとわかったら、その恋はすぐにストップ! 妻の妊娠中にほかの女性と肉体関係を持つことは、男性として最も卑劣な行為です。もしあなたが彼の奥さんだったら、どんな気持ちがしますか? あなたとの交際中に奥さんが妊娠した場合も同じ。彼はあなたを、いちばん傷つくやり方で裏切ったのです。決して許さないで! Point 47[#「Point 47」はゴシック体] □あなた以外に親しい女性がいる ————————————————————————————  確かにあなたは彼にとって、二番目の存在かもしれません。けれど、彼が三番目の女性をつくろうなどと考えているのなら、あなたにそれを許す必要などどこにもないのです。一番目になれない苦しさをあなたに強いている彼が、さらにあなたの心を踏みにじることは決して許されないこと。そんなことが平気でできる彼は、一生同じことをくり返しているだけの男性です。 Point 48[#「Point 48」はゴシック体] □あなたとの結婚を口にする ————————————————————————————  もし、彼があなたに「結婚しよう」と言ってきたら、もう離婚届を提出したあとなのかどうか、聞いてみるべきです。離婚の話し合いすらしていないうちからあなたに結婚をほのめかすのは、不倫の恋の中で最も不誠実であなたを傷つける行為です。それをプロポーズと信じて何年待ったとしても、その言葉が現実となることは決してありえません! Point 49[#「Point 49」はゴシック体] □妻との離婚を約束する ———————————————————————————— 「妻とは必ず離婚する」とあなたに約束する彼は、不確実な約束をいくらでもできる男性。彼との約束の期日は永遠に守られることはありません。彼はあなたとつきあったあとも、家では優しい夫や父親を続けていることでしょう。おそらく、離婚の可能性など口に出したこともないはずです。彼が絶対に離婚をしない人だと諦《あきら》めた上で、彼との関係をもう一度見つめてください。 Point 50[#「Point 50」はゴシック体] □「僕の子供を産んでくれ」と言う ————————————————————————————  あなたが愛する男性の子供を産みたいと思うのは当然の本能。けれど、あなたがどんなに願っても、彼のほうがそれを許さないのが当たり前。なのに後先考えずにこんなことを言う男性は、その場の空気に流されてどんなことでも言える人に違いありません。実際あなたが妊娠したなんてことになったら、大慌てで堕《お》ろしてくれと言うに決まっているのですから! [#改ページ]  文庫化にあたって 『愛人の掟・3』が出版されてから、ちょうど四年が過ぎた。  著書が文庫化されるたびに思うことなのだが、わずか四年の間にも時代は確実に動いている。永遠に変わらないものなど、何もないことを証明するかのように、すべてのものが日々、変化していく。  その中でも、いちばん大きく変わったのは、経済でも、政治でも、家庭でも教育でも犯罪でもなく、人々の心ではないだろうか。  人が見ていなければ、悪いことをしてもいい。「誰にも迷惑をかけていない」のなら、何をしてもかまわない。誰かとくらべることでしか、自分の価値を判断できない。他人の不幸を見れば簡単に涙を流し、同時に優越感に顔がほころぶ。他人の幸福を見れば羨《うらや》ましさに歯軋《はぎし》りし、何とか引き擢《ず》り下ろす機会をうかがう。そんな思考が、心に肌寒い風を吹かせているような気がしてならない。  その殺伐《さつばつ》とした心の風景は、恋愛事情にも深く影響を与えた。  今、恋を取り巻く感情は冬の空気のように乾いている。傷つくのを過剰に恐れ、恋に近づかない。愛する人が傍《かたわ》らにいない寂しさよりも、ひとりの気楽さを優先する。一歩踏み出す勇気がなかなか出せない反面、一度入り込んだら、相手との距離感もわからず滅茶苦茶《めちやくちや》な方向に突き進んでしまう。女性たちも男性たちも、恋の前で立ち尽くし、もがき、苦しんでいるように思う。  久しぶりにこの本を読んでいて、ひどく懐かしい気持ちになったのは、ここに登場する人々がみな、必死に恋をしているからだ。  もちろん、手放しには応援できない恋もある。絶対に許せない恋もある。その愚かさにため息をついてしまうような恋もある。思わず涙ぐんでしまうようなつらい恋もある。でも、ひとつだけ確かなことは、彼らがみな、真剣に恋をしているということだ。仕事も生活も友人も、自分のすべてを危険にさらしながらも、彼らは恋に身を焦がしているのだ。  人々はもう、純粋に人を好きになる喜びを忘れてしまったのだろうか。愛する人の隣にいる安らぎを必要としていないのだろうか。いや、そんなことはない。あるはずがないのだ。人は愛し愛されることなしには、決して幸せになれないのだから。  皮肉にも、わたしたちに恋する心を思い出させてくれるのは、不倫という禁断の恋なのかもしれない。  わたしの作品に触れてくださった方々に、最上級の幸せを。 [#ここから2字下げ] 二〇〇三年 秋 [#ここで字下げ終わり] [#地付き]梅 田 み か   角川文庫『愛人の掟 3』平成15年11月25日初版